質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

小児・幼児に対する向精神薬の投与に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年五月三十一日

広中 和歌子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   小児・幼児に対する向精神薬の投与に関する質問主意書

 「発達障害者支援法」(以下「同法」という。)が本年四月より施行された。同法は発達障害者や発達障害児に対し必要な支援を行うためのもので、一定の評価をしている。しかし、一方で父母や「市民の人権擁護の会」など市民団体からは「個性の強い児童、生徒を差別し、薬漬けにする可能性がある」と危惧する声が上がっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一、学習障害(LD)、多動性障害(ADHD)など「発達障害児」に該当する小児・幼児に対し、「塩酸メチルフェニデート錠」(商品名「リタニン」)を始めとする向精神薬投与の実態について、国はどのように掌握しているか、又はしていないのか。さらに、今後調査する考えがあるか。

二、平成十六年十一月二十四日の衆議院内閣委員会での同法案に関する審議で、民主党委員からの「発達障害者の中でも攻撃性の強い児童生徒に対し、親や本人の意思を無視して、薬の投与などの治療の強制を行う可能性があるのではないか」との質問に対し、文部科学省は「権利擁護に十分配慮していくことが必要」である旨答えている。さらに米国では、昨年十二月に成立した障害児教育に関する「Public Law 108-466」で「子供に対する強制的な薬物治療の禁止」を盛り込んでいると聞いている。同法にかかわる「薬の投与などの治療の強制」について、政府の見解を改めて示されたい。

三、同法の施行に当たり、「薬の投与などの治療の強制」を防ぐため具体的にどのような取組をされているか明らかにされたい。

四、前述のとおり、米国では既に「子供に対する強制的な薬物治療の禁止」が定められているが、その背景には発達障害児に対する薬物治療の副作用で、「子供が自殺に追い込まれた」ケースが続いたこともあると理解している。我が国において薬物治療により児童が自殺に追い込まれた実例があるかどうか明らかにされたい。

五、同法施行の本年四月一日、児童精神科専門の東京都立梅ヶ丘病院で、入院中の小学生女児(八歳)が入浴中に死亡する事故が起きている。事故の原因は何か。また、亡くなった児童に、どのような向精神薬が投与されていたか明らかにされたい。

  右質問する。