質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第一九号

長野県南木曽町で起きたヘリコプター墜落事故に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年五月十六日

福島 みずほ   


       参議院議長 扇 千景 殿



   長野県南木曽町で起きたヘリコプター墜落事故に関する質問主意書

 平成十六年三月七日に、長野県南木曽町において中日本航空株式会社(以下「中日本航空」という。)が運航するヘリコプター墜落事故が発生し、乗員二名、乗客であった信越放送株式会社(以下「信越放送」という。)の記者等二名の計四名が死亡する惨事となった。
 この事故の原因は、谷筋の道路で発生した交通事故の取材に赴いたヘリコプターが、送電線に衝突したものであるが、この送電線に航空障害標識が設置されていなかった。
 この事故をきっかけとして、全国の送電線の点検が実施され、その調査結果に基づいて、平成十七年一月に、「送電線等の航空障害標識のあり方検討会報告」が出された。また、平成十七年三月二十五日には、本件事故について、航空事故調査報告書(以下「事故調査報告書」という。)が公表された。
 これらの調査結果を踏まえ、本件事故の原因を究明し、同種事故の再発防止のための万全の方策を考えるため、以下質問する。

一 送電線における航空障害標識の設置について

1 送電線に昼間障害標識の設置されていた三か所について、その設置場所、送電線の地上からの高さ及び設置時期及び国土交通省航空局(以下「航空局」という。)が設置の事実を認識した時期を明らかにされたい。また、送電線に昼間障害標識の設置されていた三か所について、航空法施行規則二百三十八条に基づく届出はなされているのか。なされているとすれば、その届出の時期も併せて示されたい。
2 送電線が一つの物件であり、その高さが六十メートル以上であれば、昼間障害標識及び航空障害灯が必要であることは自明と考えるが、本件事故以前に、航空局には、高さ六十メートル以上の送電線について、昼間障害標識及び航空障害灯が必要であるという認識はあったのか。
3 本件事故以前に、高さ六十メートル以上の送電線について、昼間障害標識及び航空障害灯の設置の有無について、航空局が調査を行ったことはあるか。あるとすれば、その結果を明らかにされたい。また、平成十五年五月に出された「航空障害灯等の規制のあり方に関する検討報告」において、航空障害灯設置物件の全国調査がなされているが、これ以外に本件事故以前において昼間障害標識及び航空障害灯の設置の有無について、航空局が調査を行ったことはあるか。ないとすれば、なぜ行わなかったのかその理由を示されたい。
4 事故調査報告書二・一三・六に「昼間障害標識については、設置基準が定められているが、送電線の航空障害灯については、設置基準が具体的に設定されていない。」、事故調査報告書五・三に「現在、我が国では、送電線に直接設置する航空障害灯に関して、設置基準が具体的に定められていない。」とあるが、なぜ設置基準を設定していなかったのか。設置基準が設定されていなければ、設置義務を遵守することはできないのではないか。
5 「送電線等の航空障害標識のあり方検討会報告」によれば、送電線について、航空障害灯の設置までは要しないとしているが、その根拠として挙げてある理由はいつ実施された調査のどのような結果に基づくものか。
6 事故調査報告書六・一・四にある「百五十メートル以上の高さの送電線等で免除されている物件」六十件の物件について、物件名称、設置場所、物件の地上からの高さ、設置の時期、免除申請時期、免除決定時期、免除の理由及び今後の航空障害標識設置予定の有無を明らかにされたい。
7 事項調査報告書六・一・五にある「昼間障害標識の設置を必要とする山間部の送電線」五百八十六件について、物件名称、設置場所、物件の地上からの高さ、設置の時期、昼間障害標識(ないし代替措置)の設置予定時期を明らかにされたい。
 また、事故調査報告書六・一・五にある「航空障害灯及び昼間障害標識の設置を必要とする海上部の送電線」六十七件についても、物件名称、設置場所、物件の地上からの高さ、設置の時期、航空障害灯と昼間障害標識(ないし代替措置)の設置予定時期を明らかにされたい。

二 中日本航空と信越放送の対応について

1 事故調査報告書二・一に「送電線の場所を記入した地図のコピーを持って行ったかどうかは分からなかった。」、事故調査報告書三・四に「機長が、そのコピーを持って行ったかどうかは確認できず」とあるが、そもそも中日本航空長野運航所には本件事故現場の送電線の場所を記載した地図は備え付けられていたのか。備え付けられていた場合、何冊がどのように備え付けられていたのか。また、それらの地図のうち持ち出されたものはあるのか。
2 事故調査報告書二・一三・七によれば、中日本航空は「飛行に際し、送電線の場所を記入した地図を携行するようには指導していなかった。」とあるが、その根拠を具体的に回答されたい。
3 事故調査報告書三・八に「同社も送電線の場所を記入した地図を利用して経路上の危険な箇所の周知を行っていた」とあるが、具体的にどのような方法で行っていたのか。
4 事故調査報告書三・八に「機長は、読書付近に送電線が存在していることについてはある程度認識はしていたものの」とあるが、その根拠として事故調査報告書本文記載以外にも根拠があるか。
5 報告書二・一二でいう「カメラ防振装置」は、どのような型式のものか。また、そのカメラ防振装置に取り付けられていたカメラの型式は何か。さらに、このカメラ及びカメラ防振装置の組み合わせでは、ニュース素材としてふさわしい映像を撮影する場合、被撮影物に対してどの程度の距離まで高度を下げる必要があるのか。
6 事故調査報告書三・八に「取材飛行を優先して高度を下げた可能性が考えられる。」とあるが、どのような調査結果に基づいて、このように判断したのか。「取材飛行を優先して高度を下げた可能性」につき信越放送に対してどのような調査を行い、どのような調査結果を得たのか。
7 中日本航空においては、ヘリコプターに搭乗する操縦士及び整備士に対し、飛行空域における地理情報の伝達、鉄塔及び送電線の追加情報などに関する適切な講習又は連絡を行っていたのか。行っていた場合、その実施日時及び実施内容は何か。
8 中日本航空は今回の事故以前にも事業改善命令を受けているが、その際の命令事項についての改善動向を国土交通省はその後モニタリングしたのか。していたとすればどのようにモニタリングしたのか。また、今回の事故に伴う事業改善命令につき、今後どのようにモニタリングしていく予定か。
9 信越放送の航空取材に係る安全管理体制については具体的にどのような調査を行い、どのような結果を得ているのか。調査を行っていないとすればなぜ行わなかったのか。
10 信越放送には「航空取材ハンドブック」なる文書があるが、当局はその存在を把握しているか。
 また、飛行指示及び許可を出す信越放送の役職に就く者には、「航空取材ハンドブック」の内容を熟知しておく義務があると考えるが、当日の当該役職者は「航空取材ハンドブック」の内容を熟知していたのか。
11 信越放送は飛行指示及び飛行許可を出す信越放送の役職に就く者に対しては、少なくともその就任時に航空取材の指示者として必要な情報を周知させるための講習などを実施していたのか。していた場合、実施日時及び実施内容は何か。
12 信越放送の事故当日の飛行申請における手続は社内規定を遵守したものであったのか。また、遵守したものでないとすれば、具体的にどのような点を遵守しなかったのか政府はどのように把握しているのか示されたい。
13 事故当日、取材指示を出した信越放送の担当者(報道部長、デスク)は目的地の気象、地理及び送電線の状況に関して事前に把握していたのか。また、それらを中日本航空に対して連絡していたのか。把握していたものと把握していなかったものとを具体的に摘示して回答されたい。

  右質問する。