質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

嘉手納基地の騒音問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年三月十日

糸数 慶子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   嘉手納基地の騒音問題に関する質問主意書

 日本、米国の両政府に対し、嘉手納飛行場からの米軍機の夜間・早朝の飛行差し止め等を求めた新嘉手納基地爆音訴訟の判決が本年二月十七日、那覇地方裁判所沖縄支部で言い渡された。
 判決の骨子は、「飛行差し止め請求は棄却」、「騒音と健康被害の因果関係は認めない」など原告側の主張を退け、損害賠償においてもうるささ指数(騒音の基準となるW値)を八十五以上として、旧嘉手納基地爆音訴訟におけるうるささ指数七十五の認定を見直すなど、賠償範囲を大幅に狭め、原告側住民にとって極めて不当な判決であった。
 このような不当判決からわずか数日後の二月二十一日と二十二日の両日、嘉手納飛行場所属のF15戦闘機やKC135空中給油機など二十五機が午前二時から三時にかけて離陸、二十二日も午前五時四十五分から約十分間の間に四機が離陸した。
 嘉手納飛行場の周辺住民は、深夜から早朝にかけての爆音に「住民無視だ」と、怒りの声をあげ、二月二十二日の衆議院予算委員会でもこの問題が取り上げられた。社会民主党の東門美津子氏が、平成八年三月に日米合同委員会で合意された「嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航空機騒音規制措置に関する合同委員会合意」(以下「騒音防止協定」という。)の遵守を米軍側に日本政府として求めたのかとただしたのに対し、町村外務大臣は「(航空機)規制措置が遵守されていないという確定的な情報を得ておりません」と応えるのにとどまり、今回の深夜・早朝飛行についても、合意事項の「運用上の所要」に当たるとの認識を示し、問題ないとした。
 この騒音防止協定は、米軍側の意向によって運用され、「運用上、必要とされる飛行については認める」という内容であり、騒音防止協定の遵守には疑問が投げかけられている。
 そこで、騒音防止協定の遵守と新嘉手納爆音訴訟に対する政府見解及び本年二月二十一日から実施された防衛施設庁による嘉手納飛行場周辺の「航空機騒音度調査」について、以下質問する。

一、本年二月十七日に新嘉手納基地爆音訴訟一審判決が言い渡されたが、本判決に対する政府の見解及び同事件に対する控訴を行った理由を明らかにされたい。

二、本年二月、那覇防衛施設局が二十八年ぶりに、嘉手納基地周辺の騒音測定調査を開始したと報道されているが、騒音調査の内容(予算、機関、時間帯、調査箇所)について明らかにされたい。

三、前回の騒音調査時(二十八年前)と現在における、嘉手納基地の所属あるいは飛来する航空機の種類・機数について把握しているか。把握しているのであればその実態を明らかにされたい。

四、沖縄県が平成十五年度に実施した航空機騒音測定では、十五測定局中十測定局で環境基準値を超過し(前年より一局増加)、日平均騒音発生回数については、前年度と比較して十五測定局中十三測定局で増加した。この結果についてどのような見解を持っているか。

五、沖縄県が平成十一年に公表した「航空機騒音による健康影響調査報告書」では、嘉手納基地周辺地域で、長年の航空機騒音による聴力の損失、低体重児の出生率の上昇、幼児の身体的、精神的要観察行動の多さ等、航空機騒音による住民の健康への悪影響が明らかになっている。この結果に対する見解を示されたい。また、国においても同様の調査をする考えはないか。

六、騒音防止協定は、米軍側の意向で運用され、時間帯や飛行経路等など十四項目にわたる騒音規制措置が遵守されているとは言い難い。新嘉手納基地爆音訴訟においても騒音被害を認定している。政府は、嘉手納飛行場の周辺住民の騒音被害を軽減するため騒音防止協定の遵守を米軍側に求めたことがあるか、具体的に明らかにされたい。

  右質問する。