質問主意書

第161回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二○号

内閣参質一六一第二○号
  平成十六年十二月七日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員斎藤勁君提出納税者保護に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員斎藤勁君提出納税者保護に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 消費税は、消費一般に広く負担を求める間接税であり、事業者を納税義務者として取引の各段階における売上げに対して課税されるが、中小事業者の事務負担等に配慮して、事業者免税点制度及び簡易課税制度が設けられている。
 この事業者免税点制度及び簡易課税制度に関する届出書については、御指摘のように、原則として、これらの特例措置の適用を受けようとし又は受けることをやめようとする課税期間の開始前に提出することとされているが、これは、課税事業者であるか否かが消費税相当分の価格への転嫁の有無に影響を及ぼすこと、簡易課税制度を選択するか否かにより売上げや仕入れに関する記帳義務の内容が異なること等から、これらの特例措置の適用の有無を課税期間開始前に確定しておくことが適正な課税の実現等のために不可欠であることによるものである。
 また、これらの特例措置は、中小事業者の事務負担等に配慮して設けられたものであることから、その選択は、本来、納付税額が有利になるか不利になるかという考慮に基づき行われるべき性格のものではない。
 仮に、簡易課税制度の適用の有無を当該課税期間に係る確定申告書への記載により選択できる制度とした場合及び相続による簡易課税制度選択に関する届出書の提出時期を相続税申告書の提出期限までとした場合には、納付税額が有利になるか不利になるかという考慮に基づき簡易課税制度の適用の有無を選択することが可能となり、いわゆる「益税」の発生を制度的に容認することとなる。
 また、御指摘の二年間の継続適用については、前述のような事業者免税点制度及び簡易課税制度の趣旨等を踏まえ、納付税額が有利になるか不利になるかという考慮に基づく制度の濫用を防止する観点から設けられているものである。
 以上から、御指摘のような簡易課税制度の適用について確定申告書への記載により選択できる制度に変更すること、相続があった場合の簡易課税制度選択に関する届出書の提出時期を相続税申告書の提出期限までとすること及び二年間の継続適用を廃止することについては、困難な問題があると考えている。
 なお、相続があった場合の簡易課税制度選択の届出書については、個人事業者が相続により簡易課税制度の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合における当該相続があった日の属する課税期間(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第十条第一項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)の末日までに提出した場合には、当該課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができるほか、やむを得ない事情があることにより税務署長の承認を受けた場合には、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の初日の前日に提出したものとみなす等の特例が設けられているところである。
 また、事業者免税点制度及び簡易課税制度に関する届出書以外の各種届出書(課税期間の短縮に関する届出書を除く。)及び承認申請書で、その届出等に係る事項の適用が翌期以降になるものはない。

三について

 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二十三条第一項に規定する更正の請求をすることができる期間は、申告納税方式による国税においては法定申告期限内に適正な納税申告書が提出されることが要請され更正の請求はあくまでもその例外を認める制度であること、法律関係の早期安定や税務行政の能率的な運営に配慮する必要があること及び納税者が自ら誤りを発見するのは、通常、次の申告時期が到来するまでの間であることを総合的に勘案して定められているものであり、合理的なものであることから、これを延長することは適当ではないと考えている。なお、同法第七十条第二項に規定するいわゆる減額更正をすることができる期間は、税務署長が適正かつ公平な課税の実現を図る観点から減額更正を行うこととされていることを踏まえて定められているものであり、納税者が自己の過大申告について更正を求めることができる期間とは、その趣旨を異にするものである。
 また、同法第二十三条第二項に規定する更正の請求をすることができる期間については、納税者は同項各号に規定する事由を直ちに知ることができることから、これを延長する必要はないと考えている。
 なお、これらの更正の請求をすることができる期間内に更正の請求がされなかった場合においても、同法第二十四条及び第二十六条において、税務署長は、納税申告書に記載された税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき等は、その調査により、その申告書に係る税額等を更正する旨規定されていることから、納税者の権利救済の途が閉ざされているわけではないと考えている。