質問主意書

第161回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一九号

内閣参質一六一第一九号
  平成十六年十二月十四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出ヤミ金融対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出ヤミ金融対策に関する質問に対する答弁書

一について

 近年、闇金融と呼ばれる貸金業の無登録営業、違法な高金利による貸付け、悪質な取立て等の違法行為が多発し、その被害が深刻化している状況にあることから、貸金業の適切な運営を確保し、資金需要者の利益の保護を図る必要性が一層強まってきた。そこで、いわゆる闇金融対策として、平成十五年七月に、貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律(平成十五年法律第百三十六号。以下「改正法」という。)が成立し、平成十六年一月一日(一部の規定については、平成十五年九月一日)から施行されている。改正法は、①貸金業の登録要件の厳格化、②広告や勧誘に関する規制の強化、③取立て行為等に関する規制の強化、④貸金業務取扱主任者制度の創設、⑤年百九・五パーセントを超える金利での貸付契約の無効化、⑥無登録者に対する取締り強化等を図るものであり、悪質な業者への対策強化に大きく資するものになっていると考えている。
 警察による闇金融事犯の取締り実績については、警察庁の統計によれば、検挙事件は、平成十一年百四十九件、平成十二年百六十八件、平成十三年二百十件、平成十四年二百三十八件、平成十五年五百五十六件であり、また、検挙人員は、平成十一年三百二十一名、平成十二年四百六十一名、平成十三年五百十七名、平成十四年四百四十六名、平成十五年千二百四十六名である。このうち平成十五年中の検挙事件及び検挙人員は、過去最高となっている。さらに、平成十六年上半期の実績についても、検挙事件が二百五十四件、検挙人員が五百十六人と、上半期として過去最高となっており、闇金融関連の被害に対する取締り効果はあがってきていると考えている。

二について

 貸金業の規制等に関する法律(昭和五十八年法律第三十二号。以下「貸金業規制法」という。)第二十五条に規定する貸金業協会は、貸金業の適正な運営及び不正金融の防止に資することを目的とし、任意加入制の下、会員に対する指導、苦情の解決、研修等の業務を行っている。貸金業者に対し、貸金業協会への加入を義務付けることについては、金融関連の業界団体において加入を義務付けている例がないことを踏まえつつ、慎重な検討を行う必要があると考えている。

三について

 昭和五十八年以降破産者数が増加傾向にあることは事実であるが、破産手続をとるものが増えていることには、景気動向や生活様式の変化など様々な要因が複雑に関係していると考えられ、貸金業者の貸出しに関する上限金利を抑制することが、破産者の増加を食い止める効果に乏しいかどうかについてお答えすることは、困難であると考えている。

四及び五の2について

 上限金利の規制の在り方については、資金需要者保護の観点から上限金利を更に引き下げるべきであるとの指摘がある一方で、更なる引下げはかえっていわゆる闇金融の横行につながるおそれがあるとの指摘があるなど、種々の議論があるところであり、お尋ねのような「短期間で少額のもののみ金利を上げる」ことや、「地元に根ざした地域貸金業者がより幅広いリスクを負えるような制度」にすることを含め、上限金利の規制の在り方については、資金需給の状況その他の経済金融情勢、貸金業者の業務の実態等とともに、国会等における様々な議論も踏まえつつ、慎重に検討すべきであると考えている。
 なお、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合における上限金利を定める出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第二項の規定については、改正法附則第十二条第二項において、「施行後三年を目途として、資金需給の状況その他の経済・金融情勢、資金需要者の資力又は信用に応じた貸付けの利率の設定の状況その他貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うものとする。」と規定されているところである。

五の1について

 貸金業規制法は、過去に貸金業を巡る様々な社会問題が生じたことを背景に、資金需要者保護のために、登録制の下、すべての貸金業者に対し一定の規制を課しており、適正に業務を行っている業者に対しても一定の負担をもたらす措置を含んでいるが、厳しい取締り等により、違法業者が排除されることになれば、業界全体の適正化・健全化が図られることになり、適正に業務を行っている業者のためにもなると考えている。
 お尋ねのように、悪質な貸金業者に対する取締りを強化するため、特別法を制定することについては、悪質な業者を客観的に区分することが困難であることから、慎重な検討が必要であると考えている。