質問主意書

第161回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた名護市辺野古沖のボーリング地質調査に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年十一月十九日

大田 昌秀   


       参議院議長 扇 千景 殿



   米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた名護市辺野古沖のボーリング地質調査に関する質問主意書

 那覇防衛施設局は十一月十七日から、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた名護市辺野古沖のボーリング地質調査を開始した。今回のボーリング調査について、地元新聞の報道では、辺野古沖のリーフ周辺を埋め立てるに当たって、その影響を調べるものと言われ、「掘削作業は海底六十三か所に、直径十一-十四センチ、深さ平均二十五メートルの穴を掘り」、かつ、「作業用足場は、水深四メートル未満用の単管足場(三十か所)、水深四メートル以上二十五メートル未満用のスパット台船(二十か所)、水深二十五メートル以上用の固定ブイやぐら(十三か所)の三種類」を設置すると報じられている。このような大掛かりな作業が周辺海域の環境に影響を与えないはずはない。当然、工事に伴う騒音は、この周辺海域の藻場を餌場とし、音に敏感な国の天然記念物ジュゴンにも影響を与えるおそれが十分ある。
 そのため、環境アセスメント学会は「護岸建設は事業と一体不可分であり、海底ボーリング調査は環境アセスメントの対象にすべきだ。」と主張し、日本弁護士連合会は「環境影響評価法の趣旨をないがしろにする。」と批判しており、また、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団(東恩納琢磨団長)は「ボーリング調査によって生態系を攪乱した後では、生態系の正しい把握は不可能になる。」として、ジュゴンなどへの影響を懸念している。さらに、環境影響評価方法書の答申案を審議する沖縄県環境影響評価審査会も沖縄県知事に対する答申には、「(ボーリング調査は)環境への影響を検討した上で実施するように求める」旨を盛り込むことを決めた。
 普天間飛行場を始め沖縄など在日米軍基地・施設については、米国側が今後、米軍の再編による世界各地の海外基地見直し作業の中でどのような扱いとするのか、特に、普天間飛行場代替施設の建設まで(工期は、最短でも環境影響評価に四年、建設工事に九年半の計十三年半は必要と言われている。)米軍が待つのかどうかなど不明な点が多い。したがって、「返還は五年から七年後」とした普天間飛行場は八年経っても返還されず、しかも移設先も確保されていない中で、同飛行場の返還を目玉としたSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意については、その実現可能性が極めて疑問であり、実質的に破綻しつつあると言わざるを得ない。
 一方、今回の調査に対して、生活の場でもある海の環境破壊を心配する地元住民は、辺野古での百五十日以上にわたる調査阻止の座り込みを続け、調査の準備や開始日には、作業船を止めるため海上で抗議行動を繰り返し、強く反対している。
 以上のことを勘案すると、百歩譲って普天間代替施設建設を検討していくとしても、ボーリング調査を急ぐ必要もないし、また、急ぐべきではないと考える。
 よって、次のとおり質問する。

一、米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた、名護市辺野古沖での那覇防衛施設局によるボーリング地質調査の必要性及び概要を明らかにされたい。

二、今回のボーリング調査は、環境影響評価法第二条でいう「第一種事業」あるいは「第二種事業」に該当すると思われるが、その見解を明らかにされたい。

三、今回のボーリング調査を実施した場合、周辺海域など自然環境に与える影響をどの程度と見積もっているのか、明らかにされたい。

四、本件に対する環境影響評価に関係する諸機関・団体などの懸念及び地元住民の反対の声を無視してまで、本調査を強行実施するのか、これからの対応を示されたい。

五、SACO合意は抜本的に見直すべき状況にあると思うが、この点に関する政府の考えを示されたい。

  右質問する。