質問主意書

第161回国会（臨時会）

質問主意書


質問第七号

新潟県中越地震と原子力発電所に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

　　平成十六年十一月十八日

近藤　正道　　　


　　　　　　　参議院議長　扇　千景　殿


　　　新潟県中越地震と原子力発電所に関する質問主意書

　地震と原子力発電所の関係、特に今般の新潟県中越地震と東京電力柏崎刈羽原子力発電所（以下「柏崎刈羽原発」という。）に関して、以下質問する。

一　原子力発電所の耐震設計審査指針について

１　マグニチュード六・五の直下地震想定

（一）　耐震設計審査指針では、直下地震の規模をマグニチュード六・五と想定している。「マグニチュード六・五以上の地震では必ず、地表に地震断層が出現する」から、「この地震断層（活断層）を評価すれば十分」としたものと理解するが、この理解で良いか。
（二）　今回の新潟県中越地震を含め、国内ではマグニチュード六・五以上で地表に地震断層（活断層）の出現を伴わない地震が多数存在する。これでは、耐震設計審査指針で想定する直下地震の規模マグニチュード六・五が過小評価につながらないか。過小評価でないならその理由を、過小評価なら耐震設計審査指針を改めるのか否かも併せて示されたい。

２　地震規模と震源距離、速度・加速度の算定

（一）　耐震設計審査指針の定める算定式は、新潟県中越地震で大きな速度・加速度が計測されたＫ－ＮＥＴや気象庁の速度・加速度記録と矛盾しないか。
（二）　新潟県中越地震で得られた知見で、耐震設計審査指針の定める算定式を改めなくてよいのか。改めないなら、改めなくてよい理由は何かを併せて示されたい。

二　新潟県中越地震と柏崎刈羽原発について

１　地震時の運転対応

（一）　本震直後、柏崎刈羽原発から行政当局への連絡が三十分から一時間余り途絶えたが、連絡の遅延は想定していた範囲内であったか。
（二）　今回の連絡途絶・遅延の教訓を踏まえて、原子力発電所から行政当局への連絡について何か対策を講じたか。具体的には、いつどのような指示をどこに出したか示されたい。また、そのような指示を出さないなら、不要とする理由は何か。

２　柏崎刈羽原発の地震観測記録

（一）　今般の地震における一号機の欠測に関して、「一週間前の落雷で地震計が損傷し、本震から一時間余り記録できなかった」という、東京電力の地震計の管理体制に問題があると考えるがいかがか。
（二）　一号機の欠測事例を踏まえ、全国の各原子力発電所に対しどのような対策を指示したか。
（三）　観測事実に関して、加速度記録は震源距離が等しいのにマグニチュードが小さい方が大きな揺れになる事例があるが、地震規模と震源距離で揺れの加速度や速度を想定する手法は適切といえるか。
（四）　これまで述べたように、設計時に想定した手法の計算値と、実際の測定結果に相違があるが、実測に基づき設計手法の変更を検討することが緊急に必要でないのか。必要ないならその理由を、必要ならいつまでにどうするのかを併せて示されたい。
（五）　同じ地震にもかかわらず、一号機、五号機及び六号機の三機の基盤上に設置された地震計は、著しく異なる加速度を記録したが、その理由は何か。
（六）　大きな値を示したのは五号機及び六号機である。五号機及び六号機の基礎地盤には問題がないのか。
（七）　七号機のみ、十一月四日午前八時五十六分の余震でタービンの警報により緊急停止した。地震の揺れでなくタービンの異常で停止した事実は、地震時の停止震動設定値が高すぎることを示さないのか。
（八）　柏崎刈羽原発における地震時の停止震動設定値は、今般の地震を踏まえ、下げる必要があるのではないか。ない場合、その根拠は何か。
（九）　全国の原子力発電所の地震時停止判断値は柏崎刈羽原発同様に、水平百二十ガル、上下百ガルなのか。全国の原子力発電所の中で相違するものがあるなら、その名称と判断値及び相違する理由を併せて示されたい。

３　柏崎刈羽原発の想定地震

（一）　今般の地震において、柏崎刈羽原発から東十三キロメートル地点で確認された長岡市宮本町の沖積層の落差二メートル及び十一メートルの断層は、この断層を考慮しなかった柏崎刈羽原発の想定地震が誤りだったことを示さないか。誤りでない場合はその理由を、誤りならいつまでにどうするのかを併せて示されたい。
（二）　今般の地震より前から、「長岡平野西縁断層帯でマグニチュード八の地震が起こる」としてきた地震調査委員会の指摘は、柏崎刈羽原発の想定地震が誤りだったことを示さないか。誤りでない場合はその理由を、誤りならいつまでにどうするのかを併せて示されたい。
（三）　柏崎刈羽原子力発電所の耐震設計は、マグニチュード八の地震を基準地震動Ｓ１として考慮すべきでないか。考慮不要ならその理由を、考慮するならいつまでにどうするのかを併せて示されたい。
（四）　長岡平野西縁断層帯は日本海東縁プレート境界ではないのか。長岡平野西縁断層帯と日本海東縁プレート境界の関係をどのように考えているのか。
（五）　日本海東縁プレートの地震を柏崎刈羽原発は考慮しているか、又は今後考慮するか。考慮不要ならその理由を、考慮するならいつまでにどうするのかを併せて示されたい。

　　右質問する。