質問主意書

第160回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

国立大学法人化後の問題点に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年八月五日

櫻井 充   


       参議院議長 扇 千景 殿



   国立大学法人化後の問題点に関する質問主意書

 今年度から国立大学は国の一機関から「国立大学法人」という独立した組織に変わった。大学とその各部局独自の方策をとることが容易になるなど、法人化によって改善された面はあったものの、法人化によって失ったことも大きい。大学における教育研究は日本の国力の源泉であり、これをおろそかにするような制度であってはならない。
 このような観点から、以下質問する。

一 運営費交付金への効率化係数への適用について

1 国立大学法人の予算は、独立行政法人通則法による一般の独立行政法人と同様に運営費交付金等が削減されるようになっている。すなわち、毎年一%の効率化係数を乗じて、年々、研究費などが減少していくこととなる。このようなことは、国立大学法人法制定の経緯・趣旨及び同法案の国会の委員会における附帯決議などに照らして、不当と言えるものであり、大学の活力をそぐものではないか。
2 設置基準上必要とされる専任教員の給与費相当額等を対象外にするなど配慮が見られるが、十分とはいえない。国立大学協会も訴えていたことであるが、運営費交付金を義務的経費として効率化係数を適用しないようにすべきではないのか。

二 教育研究経費の実質減について

 法人化によって大学の運営の在り方が大きく変わり、大学運営のコストは上昇している。例えば、訴訟に係ることが国としての対応から大学独自の対応となり、そのため各大学は保険をかけるなどして対応している。一方で大学全体の予算はむしろ減少傾向にあり、実質的に教育研究の経費が減少している。このことをどう考えているか。
 また、各大学の努力に応じ増額できる仕組みとして「特別教育研究経費」の制度があるが、どの程度改善されるのかが疑問である。国立大学法人を予算面から充分に支援できる制度設計をどう考えているのか示されたい。

三 大学への評価について

 大学への評価については、大学側が作成する中期計画に数値等が盛り込まれ、その達成度を国立大学法人評価委員会が評価し、さらに総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が意見を述べることとなっている。その他にも様々な組織が違う視点から評価するが、評価の視点が大学側からは必ずしも明確でないと思われる。特に、数値目標が立てにくい基礎的な研究や長期的な研究についての評価基準が明示されておらず、研究現場の懸念を招いていることをどのように考えるか。

四 教員の負担増について

 中期計画の作成や様々な評価への対応などの大学運営に費やす時間が増えたことにより、教員が教育研究を行う時間が減っているが、これについてどのように考えるか。また、定員削減のために職員が削減された影響もあり、法人化後は教員の教育研究以外の負担は増える一方にもかかわらず、裁量労働制の導入で勤務時間の増加などが考慮されていない。法人化により職員の負担も増えており、教員を支援する職員の増員を図るなど、何か解決策は考えているのか。

五 時間外労働の賃金不払いについて

 平成十六年七月十三日、広島大学教職員組合が、同大学に時間外労働の賃金不払いがあるなどとして、広島労働基準監督署に立ち入り調査を求める告発をしている。運営費交付金の減額により、今後、時間外労働の賃金不払いがより懸念される。四月二十二日の参議院文教科学委員会では、大学内の問題として答弁しているが、そもそも業務量を増やしたのは政府であるのに、なぜ政府が責任を持って手当てをしないのか。予算措置を含めた制度的な改善策が必要ではないのか。

六 実態の把握及び施策への反映について

 以上に述べた理由により大学全体の力が落ちているとの意見があるが、国立大学法人化後の大学の実態はどれくらい把握しているのか。また、今後、アンケート等による実態の把握及びその施策への反映はどのように行うつもりか。

  右質問する。