質問主意書

第159回国会(常会)

答弁書


答弁書第二六号

内閣参質一五九第二六号
  平成十六年七月十六日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員又市征治君提出港湾運送事業法における関連下請契約に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出港湾運送事業法における関連下請契約に関する質問に対する答弁書

一について

 港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号。以下「法」という。)第十六条第一項は、港湾運送について重層的な下請が行われることにより貨物の運送責任が十分に果たされなくなる事態を防止するため、一般港湾運送事業者が引き受けた港湾運送の一定量以上を当該一般港湾運送事業者が自ら行わなければならない旨を定め、同条第二項は、一般港湾運送事業者との間に一定の支配関係その他これに準じる国土交通省令で定める密接な関係が存在する港湾運送事業者(以下「関連下請事業者」という。)に下請をさせようとする場合は、貨物の運送責任が確保されると考えられることから、このような下請(以下「関連下請」という。)に係る行為は、同条第一項の適用については一般港湾運送事業者が自ら行った行為とみなすこととしている。
 右に述べた国土交通省令で定める密接な関係は、港湾運送事業法施行規則(昭和三十四年運輸省令第四十六号。以下「規則」という。)第十一条の二第一号から第四号までのいずれかに該当するものであることが規定されており、御指摘の通達(「港湾運送事業の近代化・集約化について」(昭和四十三年八月十六日付け港政第二百十二号運輸省港湾局長通達)。以下「通達」という。)は、当該規定の運用方針として各地方運輸局等に対して示されたものである。各地方運輸局等においては、一般港湾運送事業者が関連下請を行おうとする場合に、通達に基づき、規則第十一条の二第一号から第四号までのいずれかに掲げる密接な関係が存在することを確認しており、例えば、一般港湾運送事業者が同条第四号に定める場合に該当するものとして関連下請を行おうとする場合には、関連下請事業者となろうとする者との間の契約(以下「関連下請契約」という。)に通達の別紙第一の二(4)の内容が盛り込まれていることを確認しているところである。

二及び三について

 御指摘の判決において、訴訟当事者である一般港湾運送事業者と関連下請事業者との間で締結された関連下請契約のうち関連下請の要件となる当事者間の密接な関係の存在を証すべき営業保証に係る合意が実在しないとの判断がなされたと承知しており、国土交通省においては、当該一般港湾運送事業者に対し、引き続き関連下請を行おうとする場合には通達に沿った新たな関連下請契約の締結等を行うか、又は法第十六条第一項にのっとって引き受けた港湾運送を自ら行うよう指導しているところである。
 なお、一についてで述べたとおり、通達の別紙第一の二(4)の内容は、一般港湾運送事業者による貨物の運送責任を確保する観点から、関連下請契約を締結した当事者間に密接な関係が存在することを判断するための運用方針の一つとして示されたものであり、御指摘のような「下請事業者の保護」を目的としたものではない。

四について

 下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号。以下「下請法」という。)第二条第七項に規定する親事業者の要件に該当する一般港湾運送事業者(以下「親事業者」という。)は、同条第八項に規定する下請事業者の要件に該当する港湾運送事業者(以下「下請事業者」という。)に対して、下請法の規定を遵守して取引を行う必要があるが、関連下請契約が有効な場合に、関連下請契約に定められた営業保証義務を履行しないこと自体は、下請法第四条の行為に該当するものではない。
 また、既に発注された役務について、親事業者が下請事業者に発生した費用を負担することなく当該発注を取り消すことは、下請法上問題となる可能性があるが、関連下請契約の一部が無効であることを理由に取引関係の解消を申し出ること自体については、下請法上の問題は生じないと考えられる。
 御指摘の「こうしたことは商行為であり行政は関与できないということであれば、そもそも港湾運送事業は特殊な業務であることからわざわざ港湾運送事業法及びその施行規則も商行為に踏み込んでいるものであり矛盾する」との趣旨が必ずしも明らかではないが、国土交通省においては、一般港湾運送事業者による貨物の運送責任を確保する観点から、関連下請契約に関し問題が生じ、法が求めている関連下請の要件に適合していないことが判明した場合には、法の範囲内で必要な指導を行ってまいりたい。