質問主意書

第159回国会(常会)

答弁書


答弁書第二四号

内閣参質一五九第二四号
  平成十六年六月四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員浅尾慶一郎君提出我が国公的年金制度の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浅尾慶一郎君提出我が国公的年金制度の在り方に関する質問に対する答弁書

一について

 公的年金制度は、世代間扶養の考え方に基づく賦課方式を基本とした財政運営を行っていることから、定期的に将来の収支見通しを作成することによって財政の健全性を確認している。御指摘の資料は、この収支見通しを基に将来の収入や支出を現時点の価値に換算して作成したものにすぎず、公的年金制度の財政を運営していく上で必須のものではない。第百五十九回国会に国民年金法等の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)を提出するに当たっては、法案の内容に沿って収支見通しを作成し、その内容が長期的に収支の均衡がとれたものであることを明らかにしたところである。なお、法案の内容を踏まえた厚生年金及び国民年金に係るお尋ねのような資料については、将来の保険料水準をあらかじめ定める方式が導入され、収支を均衡させる期間(以下「財政均衡期間」という。)が将来にわたる全期間から有限の期間に変更されることに伴って、その作成の考え方を整理しつつ作業を進め、これを平成十六年四月二十二日に公表したところである。

二について

 世代間扶養の考え方に基づく賦課方式を基本とした公的年金制度においては、過去の保険料拠出に対応する給付を現時点の価値に換算した額に相当する積立金を保有せず、これを今後の保険料収入等によって賄う財政方式を採用している。したがって、今後拠出される保険料の収入等で過去の保険料拠出に対応する給付と将来の保険料拠出に対応する財政均衡期間内の給付を賄うものであることから、今後拠出される保険料の収入等の財源をお尋ねのように過去の保険料拠出に対応する給付に充てられるべき部分と将来の保険料拠出に対応する給付に充てられるべき部分に分けた形で示すことは適当ではないと考えている。

三について

 世代間扶養の考え方に基づく賦課方式を基本とした公的年金制度においては、過去の保険料拠出に対応する給付を現時点の価値に換算した額に相当する積立金を保有せず、これを今後の保険料の収入等によって賄う財政方式を採用している。したがって、お尋ねの趣旨が、過去の保険料拠出に対応した給付を現時点の価値に換算した額と現に保有する積立金との差額を、今後拠出される保険料の収入等で賄うということを意味するのであれば、それは賦課方式での財政運営を行う限り、当然の帰結である。
 なお、公的年金制度における拠出と給付の結び付きは、保険料を納付したことが記録され、老齢等あらかじめ設定した保険給付の要件を満たしたときに、記録された保険料納付実績が根拠となって年金受給権が発生することを意味するものであり、この点に関しては、制度発足以来変わりはなく、今後保険料を引き上げても変わるものではない。

四について

 過去の保険料拠出に対応する給付は将来の保険料の収入等によって賄うので、過去の保険料拠出に対応する給付を現時点の価値に換算した額と現に保有する積立金との差額を債務超過とはとらえていないが、これを債務超過と仮定し、消費税で賄うこととしてそれに必要な税率を試算するとしても、財政均衡期間である今後おおむね百年間における消費税収の推移については予測することが困難であり、その税率を算出することはできない。

五の1について

 国立社会保障・人口問題研究所が取りまとめた「日本の将来推計人口(平成十四年一月推計)」においては、統計調査により把握された結婚や出生に関する実態に基づいて、同じ出生年の世代ごとに将来のその世代の結婚の時期、未婚の状況、結婚後の出産の状況等を推定し、人口推計を行っているが、そのうち、昭和六十年より後に生まれた世代の平均初婚年齢については、その推定の前提となる結婚に関する実態がないことから、中位推計においては、昭和六十年生まれの世代の平均初婚年齢の推定値である二十七・八歳を基準として推定している。

五の2について

 平均初婚年齢が上昇している原因は必ずしも明らかではないが、国立社会保障・人口問題研究所が五年に一度行ってきた出生動向基本調査によると、二十五歳から三十四歳までの男女に独身でいる理由として「適当な相手にまだめぐり会わないから」及び「結婚する必要性をまだ感じないから」という回答が多くなっている。人口推計に当たっては、同調査において、結婚しようとする意思を有する未婚者のうち、「ある程度の年齢までには結婚するつもり」と考える者が近年減少傾向にあること等から、しばらくの間、平均初婚年齢の上昇が続くものと考えている。
 合計特殊出生率の低下については、平均初婚年齢の上昇による影響のほかに、未婚者の増加及び結婚した夫婦からの平均的な出生数の低下といった様々な要因が考えられることから、結婚や出産をためらわせる障壁を極力取り除き、子育ての不安や負担を軽減する観点等からの総合的な対策を進める必要があると考えている。このため、従来から進めてきた子育てと仕事の両立支援の施策に加え、男性を含めた働き方の見直し、地域における子育て支援の充実、子どもの社会性の向上や自立の促進等を図る施策についても、改めて政府、地方公共団体、企業等が一体となった取組を進めることとしている。

六の1について

 二十歳以上六十歳未満の国民年金の第二号被保険者(国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号。以下「法」という。)第七条第一項第二号に規定する第二号被保険者をいう。以下同じ。)が失業した場合、第一号被保険者(同項第一号に規定する第一号被保険者をいう。以下同じ。)又は第三号被保険者(同項第三号に規定する第三号被保険者をいう。)への種別の変更の届出(法第十二条第一項に規定する届出をいう。以下同じ。)を行う必要があるが、法第五条第一項に規定する被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者である第二号被保険者が当該被保険者、組合員又は加入者としての資格を喪失した場合において、その理由が失業によるものかどうかを把握していないため、失業により種別の変更の届出を行うべき者のうち被保険者の種別の変更の届出を行っていないものの割合は把握していない。

六の2について

 御指摘の事務当局の説明(以下「事務当局の説明」という。)は、失業者が増加し第二号被保険者数が減少しても、第一号被保険者が増加すること等から公的年金被保険者全体の数に変化を及ぼすものではなく、したがって公的年金被保険者数の減少率を基礎として設定される毎年の調整率にはほとんど変化がないことを説明したものである。しかしながら、失業者が増加することによって、厚生年金の保険料収入が減少することから、標準的な前提を置いた場合の収支見通しと比べて、財政の均衡を図るためにより長期間の調整を必要とするため、最終的な所得代替率が低下することとなる。
 したがって、所得代替率が低下するという御指摘の答弁は、事務当局の説明と矛盾するものではない。

六の3について

 厚生年金や国民年金における被保険者数等の将来見通しについては、性別及び年齢別の人口、労働力率及び労働力人口に占める被用者の割合の見通しに基づいて被保険者数の推計を行っており、直接失業率を推計に用いていないが、直近の被保険者数等を推計に反映させることを通じて、最近の雇用動向は間接的に反映されていると考えている。

七の1について

 御指摘の答弁は、日本郵政公社の役職員や退職者に適用される年金制度の在り方については、公的年金制度全体の中での共済年金制度の在り方をも見据えながら検討していかなければならないという認識を示したものであり、日本郵政公社の役職員や退職者に係る年金給付を、国家公務員共済組合の負担のみにより賄うといったことを意味するものではない。

七の2について

 御指摘の答弁は、日本郵政公社の役職員や退職者に係る職域加算部分について、厚生年金制度の中には存在しない制度であり今後ともその中に設けることは考えていないという認識を示したものであり、日本郵政公社の役職員や退職者に係る職域加算部分を廃止するといったことを意味するものではない。

七の3について

 日本郵政公社の役職員や退職者に適用される年金制度の在り方については、日本郵政公社の民営化に向けた今後の作業の動向等も踏まえつつ、公的年金制度全体の中での共済年金制度の在り方をも見据えながら検討していかなければならない問題であると考えており、これらの者に係る年金給付の費用負担についても、この年金制度の在り方についての議論の中で検討していく問題であると考えている。