質問主意書

第159回国会(常会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一五九第六号
  平成十六年三月九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員大田昌秀君提出「SACO最終報告の見直し」に係る日米間の協議内容等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大田昌秀君提出「SACO最終報告の見直し」に係る日米間の協議内容等に関する質問に対する答弁書

一について

 「沖縄に関する特別行動委員会」(以下「SACO」という。)は、平成七年十一月十九日に行われた村山内閣総理大臣とゴア副大統領(いずれも当時)との会談の結果、日米安全保障協議委員会(以下「SCC」という。)の下に設置された。SACOの最終報告(以下「SACO最終報告」という。)は、平成八年十二月二日に開催されたSCCにおいて池田外務大臣、久間防衛庁長官、ペリー国防長官及びモンデール駐日大使(いずれも当時)が了承し、政治的な意思の表明として発表した文書である。SACO最終報告は、我が国とアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)との間に国際法上の権利・義務関係を設定する国際約束ではないが、日米両政府の閣僚の間の意見の一致の上に策定された文書であって、日米両政府のいずれか一方が他方の意向に反してSACO最終報告の内容を一方的に変更するような政策をとることは想定していない。

二について

 普天間飛行場の移設・返還への取組は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)及び関連取極の下における日米両政府それぞれの義務との両立を図りつつ、沖縄における合衆国軍隊の施設・区域の整理・統合・縮小を図るとのSACO最終報告の趣旨に沿って進められている。我が国政府は、代替施設協議会において、普天間飛行場の代替施設建設について関係地方公共団体と約二年間にわたる協議を積み重ねた結果、平成十四年七月二十九日に「普天間飛行場代替施設の基本計画」(以下「基本計画」という。)を策定した。
 基本計画に至る普天間飛行場の移設・返還への取組の中で代替施設の具体的な整備内容に変更が生じたことについて、日米両政府間においては、SACO最終報告に基づき設置された普天間実施委員会(以下「FIG」という。)の同年十月二十三日の会合において、基本計画を踏まえて普天間飛行場の移設・返還を進めていくことで一致し、これをSCCに報告した。SCCは、この報告を受けて、同年十二月十六日の会合において、普天間飛行場の移設・返還につき、基本計画に基づいて、迅速に移設を進めることを確認した。
 お尋ねの議事録又は合意録については、「日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)の下の審議官レベル会合(ミニSSC)及び普天間実施委員会(FIG)の概要 平成十四年十月二十四日 日米安全保障条約課」(以下「FIG等の概要」という。)及び「共同発表 日米安全保障協議委員会 於 ワシントン 二千二年十二月十六日」(以下「共同発表」という。)を公表している。
 FIG等の概要においては、FIGの同年十月二十三日の会合について、「米側から、日本政府が米側と密接な協議を踏まえて先に基本計画を決定したことを評価する旨の発言があり、今後、基本計画に基づき普天間飛行場の移設・返還に向けた作業を進めていくことで一致し、その旨日米各々のSSC及びSCC(「二+二」)構成員に報告することとなった。」と述べている。
 共同発表においては、SCCの同年十二月十六日の会合について、「日本側は、千九百九十九年十二月の閣議決定に従い、在沖縄海兵隊の普天間飛行場の移設と同施設が現在占めている土地の地元への返還に係る問題を取り上げた。閣僚は、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の実施に関する両政府のコミットメントを再確認した。閣僚は、普天間飛行場代替施設の基本計画策定に際して、在日米軍の能力及び即応態勢を十分に維持しながら沖縄県における米軍施設及び区域を整理、統合、縮小するとのSACO最終報告の目的に沿って、両政府が緊密な協議を行ったことを評価した。閣僚は、二千二年七月の基本計画の策定を沖縄県民の負担を軽減するために両政府がとった一つの重要なステップとして歓迎し、同計画に基づいて、迅速に移設を進めることを確認した。」と述べている。

三及び四について

 普天間飛行場の移設・返還について、本年二月十三日付け毎日新聞で報道されているような、代替施設なしでの普天間飛行場の返還を含むSACO最終報告の見直しにつき、合衆国政府から打診を受けているという事実はない。
 この点は、国会審議や記者会見等を通じ、明らかにしてきている。

五について

 昨年十一月に発表されたブッシュ大統領の声明によれば、合衆国政府は新たな安全保障環境における課題に対処するため、合衆国軍隊の全世界的な軍事態勢の見直し作業を行っており、海外の軍事態勢の見直しにつき、合衆国議会、同盟国、友好国等との協議を強化するとしている。
 合衆国軍隊の全世界的な軍事態勢の見直しにおいては、沖縄に駐留する合衆国軍隊を含む我が国に駐留する合衆国軍隊もその例外ではないと理解している。
 合衆国政府との間での我が国に駐留する合衆国軍隊の軍事態勢の見直しに関する協議においては、我が国に駐留する合衆国軍隊が有している抑止力が効率的に維持されるとともに、沖縄を含む、合衆国軍隊の施設・区域が所在する地方公共団体の負担が十分念頭に置かれるべきであると考えており、こうした観点から、合衆国政府との協議を進めていく考えである。

六について

 SACO最終報告に盛り込まれた土地の返還については、その実施に取り組んできた結果、平成十年十二月二十二日に安波訓練場の全部が返還され、また、昨年三月三十一日にキャンプ桑江の一部が返還された。
 このほか、普天間飛行場、北部訓練場、楚辺通信所、読谷補助飛行場、キャンプ桑江(同日に返還された部分を除く。以下同じ。)、瀬名波通信施設、那覇港湾施設並びにキャンプ桑江及びキャンプ瑞慶覧の合衆国軍隊の住宅地区の土地の一部(以下「住宅地区の一部」という。)については、これらの返還に必要な施設の移設等につき関係地方公共団体からの了解が得られ、現在、土地の返還に向け取り組んでいるところであり、これらのうち、楚辺通信所、キャンプ桑江、瀬名波通信施設及び住宅地区の一部については、代替施設等の建設工事に着手しているところである。また、ギンバル訓練場及び牧港補給地区については、関係機関と鋭意調整を行っているところである。