質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第三〇号

合計特殊出生率の発表の在り方等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年六月十一日

山本 孝史   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   合計特殊出生率の発表の在り方等に関する質問主意書

 今次通常国会における年金関連法案の審議に際して、私は厚生労働省に対して、平成十五年の人口動態統計を早期に発表するよう求めていたところである。将来の年金財政に影響する要因の一つとして、平成十五年の合計特殊出生率はどの程度であるのかが大いに注目されていたからである。
 しかるに、国会議員や国民は、年金関連法案が強行採決された後に、初めて知ることとなった。それも、平成十六年六月十日付けの全国紙朝刊によって、「一・二九」との数字が報じられ、ようやく知ることとなったのである。この報道がなければ、厚生労働省は、国会の会期終了後まで公表を遅らせたのではないかとの疑念もある。
 この間の経緯を振り返ると、薬害エイズ事件の経過と酷似しているとの思いを抱かざるを得ない。薬害エイズ事件では、関係者によって当時の厚生省内に真相解明に不可欠の「隠されたファイル」が存在することが指摘されていたにもかかわらず、厚生省がその存在が認め、公表するのに甚だ手間取った。
 今回の事案に接し、厚生労働省の隠蔽体質が改まっていないことに驚くと同時に、今後、同様の事態が繰り返されてはならないと強く願っている。
 このような観点から、以下質問する。

一 人口動態統計のうち、合計特殊出生率の集計を直接的に担当しているのは、いかなる部局のだれか。また、その者が、平成十五年の合計特殊出生率に関する集計作業を終え、一・二九との集計数字を最初に把握したのは何月何日であったか。

二 平成十五年の合計特殊出生率の集計終了後、担当課長、統計情報部長、官房総務課長、官房長、年金課長、年金局長、事務次官には、それぞれ、何月何日の何時頃に、だれから、一・二九との数字が報告されたのか。事実関係を克明に明らかにされたい。

三 坂口厚生労働大臣は、平成十五年の合計特殊出生率が一・二九となったとの報告を、何月何日の何時に、どこで、だれから受けたのか。

四 細田官房長官は、平成十六年六月十日午前の記者会見で、平成十五年の合計特殊出生率が一・二九となったことについて、「昨年は若干の特殊要因があり、およそ一・三〇と考えている。どんどん下がるとの認識ではない。」との発言をしている。
 厚生労働省は、いつ、どこで、だれが、細田官房長官に対して、「若干の特殊要因」を含めた説明を行ったのか。事実関係を克明に明らかにされたい。

五 細田官房長官が記者会見を行っていた時刻には、参議院厚生労働委員会が開催されており、坂口厚生労働大臣は同委員会において、「担当者からまだ報告を受けていない。」と答弁している。
 その国会答弁が正しいのであれば、坂口厚生労働大臣に先立って、細田官房長官に報告がなされていることになるが、そのように理解してよいか。そうでないのであれば、時間の経緯を追って、両者への報告過程を克明に明らかにされたい。

六 私は平成十六年六月九日の夜、翌十日の参議院厚生労働委員会で、合計特殊出生率の発表について質問するとの質問通告を行った。
 その際、厚生労働省統計情報部の職員は、「六月中に発表します」と返答したが、なぜ、翌日の新聞に報道される内容のものを「六月中に発表します」と回答したのか。また、「六月中に発表します」と回答したものを、なぜ、翌日に発表したのか。納得のいく説明をされたい。

七 平成十六年六月十日の参議院厚生労働委員会が終了した後に、参議院議員会館の私の事務所に、厚生労働省統計情報部の担当者から「平成十五年人口動態月報年計(概数)の概況」なる資料が届けられた。
 印刷・製本された報告書の体裁から察するに、かなり以前から印刷・製本作業が行われていたと思わざるを得ない。印刷製本は、どのような経緯でなされたのか。印刷を委託した業者(あるいは厚生労働省の内部部局)があるのであれば、その社名(部局名)を明らかにされたい。また、その業者(あるいは厚生労働省の内部部局)に印刷原稿が渡されたのは何月何日のことか。さらに、厚生労働省の担当部局に、これらの報告書が納品されたのは何月何日か。事実関係を克明に明らかにされたい。

八 そもそも、厚生労働省が集計した数字はだれのものか。私は、国民全体の財産と考えるが、政府の見解を求める。

九 合計特殊出生率等の統計数字をどのように評価するかは、さまざまな分析手法があり、その結果、異なった見解が生じることもありうると考える。しかしながら、年金関連法案が国会で審議されている状況を踏まえれば、できる限り早期に集計結果を公表し、厚生労働省だけでなく、各方面から分析が加えられることが望ましいと考えるが、厚生労働大臣の真っ当な見解を求める。

  右質問する。