質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第二五号

日本語による国際連合ウェブサイト開設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年六月二日

吉川 春子   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   日本語による国際連合ウェブサイト開設に関する質問主意書

 現在、国際連合(以下「国連」という。)ウェブサイトは公式六言語(英語、フランス語、中国語、ロシア語、スペイン語、アラビア語)で見ることができる。ドイツ語は公用語ではないが、ドイツなど四か国が自ら費用を負担して、国連の重要文書などを国連ウェブサイト上からドイツ語で検索できるようにしている。これらにより、世界の多くの人々は国連の情報を比較的容易に手に入れ、活用できるようになっている。
 しかし、国連ウェブサイトから日本語では情報を入手することができない。我が国はヨーロッパ諸国のように、相互の国の言葉を比較的容易に理解できるような地理的条件とは異なり、国民の多くが日本語で日常生活を送り、外国語に触れる機会が少ないため、英語などが堪能なごく一部の人々を除き、直接的に国連の情報を知り、活用することは難しい。
 日本政府においても、国連など国際機関の情報を国民に知らせる体制が薄く、日本語訳の公開は一部の情報にとどまっている。一九九五年に北京で行われた第四回国連世界女性会議で採択された、男女平等を推進する「行動綱領」の日本語訳には数か月を要し、同「行動綱領」の日本国内での活用を大幅に遅らせるなど、国民にとって重要な情報が入手しづらいのが現状である。
 国連の情報を日本語で容易に入手することは、日本国内の人権に対する意識や関心を高める上でも、重要となっている。
 日本国憲法第九八条第二項では「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と規定している。日本は国際法規、条約の誠実な遵守が最高法規である日本国憲法で規定されている国家である。
 しかし、日本が国際機関の勧告を軽視し、実効性ある措置を政府が採っていない例は枚挙にいとまがない。例えば、第二次世界大戦中に犯した集団的性犯罪である従軍慰安婦問題でも、日本政府は誠実な対応を採っていない。
 国連人権委員会は一九九六年以降、何度も日本政府へ補償、実行行為者の処罰等を勧告している。また、国際労働機関(ILO)も五回にわたって「慰安婦」は強制労働条約違反と認定し、『アジア女性基金』に代わる、被害者が納得できる制度の導入を勧告しているが、政府はこれらの勧告を無視している。既に一九六八年には、国連で戦争犯罪及び人道に対する罪には時効不適用であるとする条約が採択され、人道に対する罪には時効がないことが認められている。国連及び国際機関において日本の女性の人権問題への対応が求められている。こうした最新情報が国民に詳しくもたらされる必要がある。
 市民社会レベルでのグローバル化、インターネットの普及が進む中で、日本のNGOや国民は世界で目覚ましい活動を行っており、世界の諸問題に市民が直接関与する時代が到来している。世界標準の情報に日本国民が取り残される現状を放置しておいてよいのであろうか。国連の活動を直接知り、世界の諸問題に直接関与する国民を増やすことこそ、日本国憲法に沿った国際貢献と言える。
 そこで以下質問する。

一 一九四六年の第一回国連総会では、「国連は世界中の人々がその内容と活動を十分に知らされないならば、目的を達成できない」と決議している。

二〇〇〇年の第五五回国連総会では、国連が広報に関する方針転換を行っている。すなわち、第五五回国連総会のA/RES/55/136B決議では、国連が世界的な諸問題に対して、実際にどのように取り組んでいるかを、「政府とメディアを介する広報」から、「ラジオやインターネットを含む各国国民への直接広報」という方針に転換し、国連のウェブサイト上で可能なすべての言語で国連ラジオプログラムの増加を奨励する(パラグラフ三八)、英語以外の公用語の国連ウェブサイトの水準を英語同様に引き上げる(パラグラフ四八~五〇)、世界各地にある国連広報センターでのウェブサイトの確立・インターネットを含む最近の情報技術の最大限活用(パラグラフ四五、四六)などの方向を決めた。

1 政府は、現在国連が、日本語の広報充実について、どのような方向性を持っていると認識しているか。
2 二〇〇〇年の第五五回国連総会でのA/RES/55/136B決議の内容に沿って国連が日本語広報を充実するよう、日本政府も努力すべきではないか。

二 日本語の国連ウェブサイト開設は、日本語が国連の公用語にならなくても可能である。ドイツ語については、ドイツ、オーストリア、スイス、リヒテンシュタインの四か国が費用を負担し、国連に翻訳サービスを置き、国連の重要文書やドイツに関連する文書を国連ウェブサイト上で発信することを、国連から認められている。

1 日本語の国連ウェブサイト開設には、どのくらい費用が掛かるのか。
2 日本政府が費用負担してドイツ語並みに、国連ウェブサイト上で重要文書の日本語検索を可能にすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 日本に置かれている国連広報センターは、国連情報の日本語での情報発信を行っている。一で示したように、国連はそのウェブサイト充実の方向性を示しており、国連広報センターのウェブサイト充実という名目で日本政府が資金を拠出すれば、拡充させることができる。そのために、政府は、国連に拠出する国連広報センターウェブサイト充実のための予算を、抜本的に拡充すべきではないか。

四 外務省がホームページで国連情報の一部を日本語訳で掲載しているが、日本が批准した条約及びこれに関する国連勧告など一部にとどまっている。改善・充実させることは日本政府の義務である。

1 外務省ホームページで掲載している日本語に訳した国連情報は、国連の英語ウェブサイト情報の何パーセントの情報量に当たるか。英語ウェブサイト情報の英文の量を基準とした割合を示されたい。
2 国連に関する日本語情報が少ないという指摘について、情報公開の視点からどう考えるか。
3 外務省ホームページ上で、国連総会決議、安保理決議、日本が関連する委員会議事録など国民が必要とする国連情報の日本語訳を提供すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 国連の専門機関の一つであるILOの条約及び勧告についても、日本語で提供できるようにすべきである。ILOは英語、フランス語、スペイン語が公用語であり、日本語の情報はその三言語に比べると極めて少ない。現状は、日本が批准していないILO第一号条約の条文(八時間労働制)すら、インターネット上で探すのは困難を要する。国連ウェブサイトと同様に、ILOの日本語版ウェブサイトを開設すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。