質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

最低賃金額の引上げと最低賃金審議会委員の公正な任命等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年四月五日

畑野 君枝   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   最低賃金額の引上げと最低賃金審議会委員の公正な任命等に関する質問主意書

 日本経済は大企業の多くがV字回復、史上最高の利益と言われているが、中小企業や労働者にとっては景気回復が実感できない状況が続いている。大企業の業績回復は、中国向けを中心とした輸出の増大と「リストラ効果」によるものと言われ、下請関連企業の再編・単価の切下げ、大量の人減らしやパート・派遣などの不安定労働者への置き換えによる結果である。賃金・家計収入も連続して低下し、財界・日本経団連は「日本の賃金は世界でも最高水準」と宣伝しているが、現実には生活保護基準にも満たない収入の労働者も増えている。
 坂口厚生労働大臣は第一五一回国会・二〇〇一年三月二一日の参議院予算委員会において、日本共産党の吉川春子議員の最低賃金に関する質疑の答弁において、「その最低賃金額の決定ということと生活保護とを比較してどうかということをおっしゃいますけれども、・・・トータルで見てこういう状況になるということにつきましては、御指摘の状況はよくわかりますので、私たちも検討したいと思います。」と述べている。しかしその後、せめて最低賃金は生活保護基準を上回る額にしてほしいとの多くの労働者の要望にもかかわらず、依然として改善されていない。
 また、最低賃金を決定する最低賃金審議会委員の選任について、連合と全労連が労働運動の二つのナショナルセンターとして発足した一九九〇年以来、今日まで一四回の任命が中央最低賃金審議会及び各地方最低賃金審議会において行われているが、労働者側委員の選任はすべて連合が独占するという極めて異常な状況が続いている。このことについては、毎年行政不服審査なども行われているが全く改善されていない。
 地方労働委員会の選任では次々と改善され、選任されなかった地方でも裁判において、連合による委員の独占に対し「裁量権の逸脱」との見解なども出されている。各地方最低賃金審議会委員の定数や連合・全労連の組織人数比から見て、多くの地方で全労連・地方労連推薦の委員が選任されて当然である。
 さらに、多くの地方最低賃金審議会では、経営者側の委員は中小企業の経営者等が多いにもかかわらず、労働者側の委員は大企業労組の代表が多く、地域別最低賃金により影響を受ける中小零細企業の労組代表が全くと言っていいほど選任されていない。現に神奈川などでも中小企業の労組出身者が推薦されているにもかかわらず、大企業労組出身の委員だけになっている。
 同時に、政府の指針としても各種審議会の委員に女性を三分の一以上選任することを定めているが、最低賃金審議会においてもほとんど改善が見られない。
 最低賃金審議会委員の不公正な選任に対して行政不服審査請求がいくつかの地方労連や個人からも出されているが、いずれも「不服申立てをする法律上の利益を有するものとはいうことはできない」と門前払いされている。
 これらを踏まえ以下質問する。

一、厚生労働大臣及び厚生労働省は、最低賃金と生活保護基準との関連や最低賃金の改善についてどのような検討をしたのか。

二、長期にわたって、中央最低賃金審議会及びすべての都道府県の地方最低賃金審議会において連合による労働者側委員の独占となり、全労連推薦の委員が全く任命されていない理由を明らかにされたい。

三、神奈川を始め、多くの地方最低賃金審議会で中小企業の労組出身者が推薦されているにもかかわらず、大企業労組出身の委員だけになっている理由を明らかにされたい。

四、全国の中小企業に従事するパート労働者は引き続き増えている。パート労働者の半数が女性であり、全国で最も比率の高い神奈川では女性労働者のうちパート労働者が五〇%を超えている実態がある。それにもかかわらず、最低賃金審議会や地方労働委員会におけるパートの代表として女性の委員が極めて少ないのが現状である。その理由について政府の見解を示されたい。

五、最低賃金審議会委員の選任について、行政不服審査請求を行っても、「法律上の利益を有しない」として門前払いされているが、どういう団体・個人であれば「法律上の利益を有する」のか。あるいは、どんな団体・個人も不服申立てをする資格はないのか。

  右質問する。