質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

「新たな小児慢性特定疾患対策」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年二月十二日

小池 晃   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   「新たな小児慢性特定疾患対策」に関する質問主意書

 厚生労働省は二〇〇四年一〇月より小児慢性特定疾患治療研究事業(以下「治療研究事業」という。)を見直し、「新たな小児慢性特定疾患対策」の実施を予定している。二〇〇四年度予算案には前年比で約三〇億円増となる一二八億円が盛り込まれている。政府は「法制化による安定化」を図るとして、児童福祉法に新たな事業を位置付ける同法改正案を今国会に提出している。
 新たに提案されている事業では、対象疾患の追加、対象年齢の引上げなど現行事業からの改善面もあるが、一方で対象者の「重点化」や患者負担の導入が計画されており、慢性疾患の子どもを持つ家族に大きな不安を与えている。患者負担が導入されれば、治療費への不安から受診を抑制する事態さえ生まれかねない。政府は慢性疾患の子どもと家族が安心してより良い医療を受けられるように制度を改善する責任を果たすべきである。そこで、以下のとおり質問する。

一、対象疾患数及び対象者数の見込みについて

 現在の「治療研究事業」の対象疾患は一〇疾患群四八八疾病、二〇〇一年度給付人員は一〇万三五六二人である。新たな事業で対象疾患数及び対象者数がどれだけ増えると見込んでいるか。

二、「対象疾患の追加、除外」の具体的内容について

1 新たな事業では「対象疾患の追加、除外」が予定されている。どのような基準で追加、除外するのか。また、追加及び除外される予定の疾患の数と具体名をそれぞれ明らかにされたい。
2 「対象疾患の追加、除外」により新たに対象となる人数及び新たに対象外となる人数の見込みを明らかにされたい。
3 対象疾患の追加により新たに必要となる予算額及び除外により削減される予算額をどれだけ見込んでいるか。

三、対象年齢の拡大及びすべての入通院への対象拡大について

 現在の「治療研究事業」では、対象となる医療費が疾患によって「一か月以上の入院」に限られていること、対象年齢が「一八歳未満」に限られる疾患と「二〇歳までの延長」を認める疾患があることが問題となっており改善が求められてきた。新たな事業では、すべての対象疾患について、入通院の区別なく医療費公費負担の対象とし、二〇歳までの延長を認めるべきと考えるがどうか。また、これらの措置により新たに対象となる患者数及び必要予算額の見込みを明らかにされたい。

四、福祉サービスの実施について

 日常生活用具の支給など福祉施策の充実は、家族・関係者の切実な願いである。新たに実施する福祉サービスの内容、その実施体制及び必要予算額について明らかにされたい。

五、対象患者の「重点化」について

1 新たな事業では、軽症者を公費負担の対象から除外し、「重点化」を図るとしているが、どのような症状・治療状況であれば軽症とする予定か。また、個々の患者が対象から外れるかどうか、どのような体制で判断するのか。
2 「重点化」によってどれだけ公費負担の対象者が減ると見込んでいるか。また、「重点化」による予算への影響額見込みを明らかにされたい。
3 子どもの健康を守るためには、症状が軽い時期から適切な診療を受け、重症化を防ぐことが重要である。「重点化」を実施すれば、症状が軽い段階で適切な医療を受けられなくなり、重症化する事態が懸念されるが、政府の見解を明らかにされたい。

六、患者負担の導入について

 難病の子どもを持つ家族は、医療費負担に加えて、遠方の医療機関へ通うための交通費や、入院時の宿泊費など多大な経済的負担を強いられている。こうした家族にとって全額公費負担の現行「治療研究事業」は、かけがえのない制度となっている。ところが、新たな事業では患者負担の導入が計画され、病気の子どもと家族に新たな苦しみを与えようとしている。患者負担の導入は、子どもの健やかな成長に配慮することを施策の基本理念に掲げ、国が子育て世帯の経済的負担の軽減措置を講ずることを基本的施策に定めた少子化社会対策基本法に逆行するものであり、撤回すべきである。
1 新たな事業において、どのような所得の世帯に、どれだけの負担を求める予定か。また、負担増となる人数、一人当たり平均負担増額及び負担増総額の見込みを明らかにされたい。
2 新たな事業では、市町村民税非課税世帯に限り引き続き患者負担を免除するとされている。新たな事業の対象となる世帯数、そのうち市町村民税非課税世帯が占める比率をそれぞれ明らかにされたい。
3 患者負担の導入により、医療を必要とする子どもが経済的理由のため医療機関から遠ざけられ病状を悪化させる事態が生じる危険性があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。