質問主意書

第159回国会(常会)

質問主意書


質問第三号

「日米地位協定の考え方」増補版を公開できない理由等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年二月三日

大田 昌秀   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   「日米地位協定の考え方」増補版を公開できない理由等に関する質問主意書

 沖縄の地元紙『琉球新報』は本年一月十三日付けの紙面で、日米地位協定に関する日本政府の基本的な解釈をつづった「日米地位協定の考え方」なる文書の存在を明らかにした。この件に関連しての照屋寛徳衆議院議員の質問主意書に対する本年一月三十日付けの政府答弁書では、「千九百八十年代に作成された『日米地位協定の考え方』増補版に該当すると思われる文書は保有している」と回答した。
 そこで、一月三十日に、当方が外務省日米地位協定室に対して、同増補版の写しの提供を要請したところ、同日米地位協定室からは「情報公開法第五条第三号の規定により、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあって提供できない」として、提供を断られた。
 また、同政府答弁書では、その増補版の原本となる「日米地位協定の考え方」と題する文書を「保有していない」と答弁している。しかし、増補版を「保有して」、その原本を「保有していない」というのは、理解に苦しむと言わざるを得ない。
 言うまでもなく、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」は、その第一条で「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする」とうたっている。一方、同法第五条第三号では「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報に挙げている。本件について前述の外務省日米地位協定室はこの条項を資料の提供ができないことの理由に挙げたのである。
 日米地位協定については、その内容が主権国家にとって余りにも不当なものがあるとして、在日米軍基地の過重な負担に苦しむ沖縄県民を始め、在日米軍基地が存在する都道県当局及び同議会がこれまで幾度となく抜本的見直しを強く求めてきたことは、政府も承知のとおりである。しかるに政府は、運用面の改善で十分に対応できるとして応じてこなかった経緯がある。言うまでもなく日米地位協定の条文は、公開されている。したがって、沖縄県などが求めている改定と政府の運用面での改善との考え方の違いを理解するためには、前記の「日米地位協定の考え方」とその増補版の開示が不可欠と思われる。それらの文書によって、日米地位協定に対する国民の理解は進み、より良好な日米関係が維持できると考える。
 よって、次のとおり質問する。

一 「日米地位協定の考え方」増補版及びその原本を公にすることによって、なぜ「国の安全が害される」のか、かつ「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれる」というのは具体的にどういうことなのか説明されたい。また、どこの国及びどの国際機関との信頼関係が損なわれるのかを明らかにされたい。

二 原本である「日米地位協定の考え方」と題する文書を「保有していない」という答弁は、その文書を紛失したのか、他所へ移譲したのか、それとも廃棄したのか、いずれの意味であるのかを明らかにされたい。

三 この種の協定に係る政府の解釈に関する文書の保管及び公開についての政府の基本的な考え方を明らかにされたい。あわせて、依拠する法令及び規則についても明らかにされたい。

  右質問する。