質問主意書

第158回国会(特別会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質一五八第四号
  平成十六年二月六日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出新潟県刈羽村の電源三法交付金事業ラピカ等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出新潟県刈羽村の電源三法交付金事業ラピカ等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成九年度及び平成十年度に刈羽村(以下「村」という。)に交付された刈羽村生涯学習センターラピカ(以下「ラピカ」という。)の建設に係る電源立地促進対策交付金(以下「本件交付金」という。)については、ラピカの竣工後に、本件交付金の交付申請時に提出された設計図等の交付申請書類の間で記述内容に矛盾する点があること、交付申請書類と実際に行われた工事との間に大きく乖離している点があることなどが明らかになったため、村において、交付申請時に提出した設計図及び特記仕様書を基に他の交付申請書類の内容を見直すなどの作業(以下「村の作業」という。)を行い、また、経済産業省においても、村の作業の結果等を踏まえ、本件交付金の交付額の妥当性について評価を行ったところである。
 お尋ねの陶芸館長靴室のスチール製棚(以下「本件スチール製棚」という。)については、村の作業において、その単価の見直しがなされた結果、本来交付申請時点において三十九万四千百円という単価で計上すべきであったとされたところであるが、本件スチール製棚は一般に販売されている既製品のスチール製棚に同じ仕様の製品が存在しない特殊な仕様のものであると承知しており、村の作業における見直し後の本件スチール製棚の単価と、市販のスチール製棚の単価との間に差があることについては、特段の問題があるとは考えていない。
 なお、ラピカの設計書に本件スチール製棚が既製品である旨の記載があったことについて、村からは、設計当初の段階では既製品の利用を想定して設計書にその旨を記載したところ、その後、設計書の仕様を満たす既製品が存在しないことが明らかになり既製品の使用を取りやめたにもかかわらず、設計書の記載については確認が及ばず修正がなされなかったものであると聞いている。

一の2について

 一の1についてで述べたとおり、本件スチール製棚は一般に販売されている既製品ではないものと承知している。また、村からは、本件スチール製棚の見積りが一社からしか提出されていない理由について、村としては三社以上の業者に見積りの提出を要請したが、これに応じて見積りを提出した業者が一社しかなかったためであると聞いており、このような村の対応に特段の問題があったとは考えていない。

一の3について

 一の1についてで述べたとおり、本件スチール製棚は一般に販売されている既製品ではないものと承知しており、村が十六万七千六百円で購入したことについて、特段の問題があるとは考えていない。

二の1について

 経済産業省としては、お尋ねの事実関係は、村から報告を受け承知していた。

二の2について

 村からは、お尋ねの見積りに係る見積単価が一定比率となっていることについて、当該見積りを提出した業者から事情を聴取したところ、自社が提出した見積りは飽くまで自社の基準により単価を算出したものであるとの回答を各事業者から受けたところであると聞いており、見積単価が一定比率となっていることをもって、直ちに設計単価の設定が不適切であったとはいえないと考えている。

二の3について

 お尋ねの木製建具及びタイルは、一般に販売されている既製品の木製建具及びタイルに同じ仕様の製品が存在しない特殊な仕様のものであると承知しており、市場価格との比較をもって、直ちに不適切であるとはいえないと考える。

三の1について

 村から聴取したところ、本件交付金の交付申請額の決定に当たっては、新潟県土木部が作成している建築工事設計単価表、財団法人建設物価調査会が発行している「建設物価」又は財団法人経済調査会が発行している「積算資料」に記載のある資材等についてはこれらの資料に記載された単価を使用し、これらの資料に記載のない資材等については業者の見積りを基に単価を決定するなど、同部が策定した建築工事設計単価の決定方法に準拠して作業を行ったとのことである。また、見積りが一社からしか提出されていない場合があることについては、村としては少なくとも三社以上の業者に見積りの提出を要請したが、これに応じて見積りを提出した業者が一社しかなかったことが理由であると聞いており、このような村の対応に特段の問題はなく、交付申請書類の記載の内容に矛盾する点がある場合を除き、交付申請書類に記載された資材等の単価を見直す必要はなかったものと考えている。なお、村の作業においては、交付申請書類の内容の見直しとは別に、実際の工事に要した費用等を基に設計図等を作成しており、経済産業省においては、当該設計図等も踏まえて、本件交付金の交付額の妥当性について評価を行ったところである。
 また、「問題を指摘しつつも是正しなかったのはなぜか」とのお尋ねについては、指摘を行った者、指摘の内容等が明らかではないためお答えすることが困難であるが、右に述べたように、村が本件交付金の交付申請額を決定する際に採用した「設計単価の決定手法」に特段の問題があったとは考えていない。

三の2について

 一の1についてで述べたように、本件交付金については、ラピカの竣工後に交付申請書類に係る書類上の不備が明らかになったため、事後的に交付額の妥当性について評価が行われたところであるが、その際、村の作業の過程においては、必要に応じ、新たに業者に見積りを依頼するなどの方法によって資材等の単価の見直しを行うこととなったものと承知している。このような事態が生じたことは遺憾であるが、「完工事業を見積りによって単価の再決定をした」ことを含め、村の作業は、本件交付金の交付額の妥当性を評価するために必要な作業であったと考えている。

三の3について

 経済産業省における本件交付金の交付額の妥当性の評価は適切に行われたものと考えており、更なる見直しが必要であるとは考えていない。

四の1について

 村から聴取したところ、お尋ねの源土運動広場のゲートボール場(以下「本件ゲートボール場」という。)についてコートの半分が使用不能であるという事実はなく、八面ある本件ゲートボール場のうち一面について、雨天が続くとその後数日間水たまりのために使用ができなくなる状況であるとのことであるが、本件ゲートボール場は、ある程度地盤が沈下することを想定しつつも、村の所有地の有効活用の観点から、軟弱な地盤の上に地盤の沈下の程度を慎重に予測しつつ整備されたものと承知しており、結果として水たまりのために施設の機能に若干の問題が生じる状況となっているものの、地盤がどの程度沈下するかを完全に予測することが技術的に困難であることなどを考慮すれば、そのような状況が直ちに問題であるとはいえないと考えている。

四の2について

 村から聴取したところ、源土運動広場の設計後、平成八年度に行った地質調査(以下「平成八年度地質調査」という。)によって、同運動広場の地盤における軟弱層が設計前の段階で行った地質調査の結果から想定していたものよりも厚いものであることを示すデータが得られたが、監理業者等とも相談の上、社団法人地盤工学会が策定した「沈下板を用いた地表面沈下量測定方法」(以下「地盤工学会測定方法」という。)に従って地盤の沈下量を確認しつつ施行する予定であることなどを踏まえれば、施工方法の変更は必要ないと判断したとのことであり、村のかかる対応が不適切であったとは考えていない。

四の3について

 四の2についてで述べたように、村は、平成八年度地質調査の結果も踏まえて本件ゲートボール場の工事を行ったものと承知している。

四の4について

 お尋ねの「沈下動態観測」とは、村が地盤工学会測定方法に従って実施した地盤の沈下量の測定を指すものと考えるが、村から聴取したところ、当該測定は、地盤の沈下量を確認するために行ったものであり、測定の結果として設計段階に想定していた地盤の状況と実際の地盤の状況とに大きな隔たりがあると判明した事実はないとのことである。

四の5について

 村から聴取したところ、村においては本件ゲートボール場に係る傾斜の状況の調査を年に三回実施しているところであるが、本件ゲートボール場の便所棟に生じている傾斜は、便所の使用に支障を来さない程度のわずかなものであるとのことであり、当該傾斜について特段の対応が必要であるとは考えていない。

四の6について

 村から聴取したところ、平成八年度地質調査において御指摘の先端支持層の傾斜が確認されたため、当該傾斜に合わせて支持杭の長さを変更した上で、支持杭の支持力が十分であるかを確認しつつ工事を行ったとのことであり、「先端支持層の傾斜を確認しながらも、考慮なしに施行されている」との御指摘は当たらないと考える。

四の7について

 村から聴取したところ、平成八年度地質調査の結果によれば、施工箇所の軟弱層の厚さは六メートル程度であり、社団法人日本建築学会が策定した建築基礎構造設計基準において施行箇所の軟弱層の厚さが十五メートルを超えた場合に負の摩擦力を考慮すべきであるとされていることを踏まえ、負の摩擦力を考慮する必要はないものと判断したとのことであり、かかる判断に特段の問題はなかったものと考えている。

四の8について

 産業廃棄物とされる源土運動広場の多目的広場及びその周辺の地表に露出したコンクリートの破片等(以下「本件コンクリート等」という。)については、村から聴取したところ、平成十四年三月二十三日及び同月二十四日に行った修復作業によりいったん完全に撤去し、また、当該修復作業後、新たに地表に露出した本件コンクリート等についても、地表への露出を確認し次第撤去しているとのことであり、特段の対応が必要であるとは考えていない。

四の9について

 村から聴取したところ、子供用遊具周辺の地表に露出したプラスチック網については、利用に当たって支障となるものではなかったとのことであり、このことをもって、国庫補助事業として不適切であったとはいえないと考えている。
 なお、村からは、当該プラスチック網は既に撤去したと聞いている。

四の10について

 本件コンクリート等については、地表に露出した場合には撤去作業を行うなどの対応が図られており、村等に対して、現時点で何らかの責任を問う必要はないものと考えている。

四の11について

 現在、源土運動広場の利用に大きな支障が生じている状況にはないものと認識しており、新潟県及び村に対し、特段の追加的な対応を求める必要があるとは考えていない。

五について

 本質問主意書における御指摘によって、これまで把握していなかった事実が明らかになったわけではなく、特段の追加的な対応が必要とは考えていない。
 なお、今後、ラピカ及び源土運動広場について、新たな事実が判明した場合には、適切に対処してまいりたい。