質問主意書

第157回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一五七第八号
  平成十五年十一月十四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員櫻井充君提出国立大学法人化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出国立大学法人化に関する質問に対する答弁書

一について

 現在の各国立大学において行われている教育研究活動は、国立大学法人の成立後は、各国立大学法人の設置する国立大学において行われることとなるが、各国立大学で行われる教育研究活動の業務主体は、国立大学法人の成立前はその設置者である国であり、国立大学法人の成立後においては、その設置者である国立大学法人となる。このような趣旨で、国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二十二条第一項第一号において「国立大学を設置し、これを運営すること」を国立大学法人の業務として規定しており、国立大学において行われる教育研究活動は、当該国立大学を設置する国立大学法人の業務に含まれることとなる。
 なお、同法において、国立大学法人が国立大学を設置することとしているのは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)において、大学その他の学校は、それ自体として法人格を有するものではなく、所定の設置者のみがこれを設置し、その管理を行うこととされていることから、国立大学法人が大学を設置するという形態を採ったものである。これにより、国立大学を国家行政組織から独立させ、その自主性・自律性を一層高め、自らの経営方針に基づき個性豊かな大学づくりが進められることが期待されるものである。

二について

 政策評価・独立行政法人評価委員会は、国立大学法人法第三十五条において準用する独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第三十二条第五項、第三十四条第三項及び第三十五条第三項において、国立大学法人評価委員会の行った評価の結果について、必要があると認めるときに国立大学法人評価委員会に対して意見を述べること、並びに中期目標の期間の終了時において、主要な事務及び事業の改廃に関し、文部科学大臣に勧告することができることとされている。
 このように、政策評価・独立行政法人評価委員会は、国立大学又はその組織の改廃自体に関して勧告を行う権限を有するものではない。

三の1について

 御指摘の「中期目標期間終了時における独立行政法人の組織・業務全般の見直しについて」(平成十五年八月一日閣議決定)の対象となるのは、独立行政法人通則法に規定する独立行政法人であって、国立大学法人には直ちには適用されない。
 なお、国立大学法人については、同法第三十五条が準用されており、中期目標期間終了時に組織及び業務全般の検討が行われることとされているが、その具体的な方法等については、当該閣議決定の趣旨を踏まえつつ、国立大学の教育研究の特性に十分に配慮をするとの国立大学法人法の国会審議における附帯決議等にのっとり、今後検討する予定である。

三の2について

 総合科学技術会議は、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第二十六条第一項の規定に基づき、科学技術に関する大規模な研究開発その他の国家的に重要な研究開発についての評価を行うほか、独立行政法人や国立大学法人等の自律的・自発的運営と特性に配慮しつつその主要な科学技術関係業務の優先度等について検討を行うものであり、国立大学法人自体の評価を行うものではない。

三の3について

 独立行政法人大学評価・学位授与機構が行う国立大学の教育研究の状況に関する評価は、国立大学法人法第三十五条において準用する独立行政法人通則法第三十四条第二項に基づいて、国立大学法人評価委員会が行う国立大学法人評価の一環として同委員会からの要請により行われるものである。同委員会はこの評価の結果を尊重することとされており、両者が同じ評価項目に関して重ねて国立大学法人に資料等を要求するなどの負担をかけることのないように措置しているところである。
 また、政策評価・独立行政法人評価委員会は、政府全体の立場から、国立大学法人法第三十五条において準用する独立行政法人通則法第三十二条第五項、第三十四条第三項及び第三十五条第三項において国立大学法人評価委員会の行った評価の結果について、必要があると認めるときに国立大学法人評価委員会に対して意見を述べること、並びに中期目標の期間の終了時において、主要な事務及び事業の改廃に関し、文部科学大臣に勧告することができることとされており、国立大学法人の評価を直接行うものではない。
 なお、行政改革推進本部の関与は、三の1についてで述べたとおり、国立大学法人には直ちには適用されるものではなく、また、総合科学技術会議は、三の2についてで述べたとおり、科学技術に関する大規模な研究開発その他の国家的に重要な研究開発について評価等を行うものであり、さらに、経済産業省から委託された民間団体は、産業界の視点から大学を評価する手法を開発しているところであるが、これらの評価や評価手法の開発はそれぞれ個別の観点から行われるものであり、国立大学法人の業務の全体を評価するものではないので、御指摘のように国立大学法人を評価で疲労困憊させるようなことにはならないと考えている。

三の4について

 国立大学法人は、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として設立されるものであり、国が責任を持って財政措置を行うことを踏まえ、その評価を行う国立大学法人評価委員会は文部科学省に置くこととしている。また、その委員については、国立大学法人評価委員会の重要な役割にふさわしい者を文部科学大臣が任命することとしている。なお、同委員会が行う国立大学法人の評価は、各委員の見識に基づき同委員会の権限と責任の下に行われるものである。

三の5について

 国立大学法人の評価は、国立大学法人法第九条第二項第一号の規定に基づき国立大学法人評価委員会の権限と責任の下で行われるものである。また、委員の活動は各委員の見識に基づき行うものであるが、各委員が独自に行うのではなく、委員会の活動として行われるものである。その委員会の活動に必要な経費については予算措置が行われているが、当該予算の具体の執行については、当該委員会が決定する活動の方針に従い行われることとなる。

四の1について

 平成十六年度以降における国立大学法人に対する運営費交付金の算定方式については、効率化係数の在り方も含め検討を進めているところであるが、法人移行前の公費投入額を十分に踏まえるとの国立大学法人法の国会審議における附帯決議にのっとり、国立大学法人の業務が確実に実施されるよう、運営費交付金を措置していくことが必要であると考えている。
 なお、国立大学法人に対する運営費交付金は、使途を特定しない交付金であることから、御質問の非常勤職員の人件費については、各国立大学法人の自主性・自律性の下に、適切に措置されるものと考えている。
 また、文部科学省としては、従来より国立大学に対し、事務の簡素化や効率化等により、勤務時間内の事務能率の向上を図りつつ、超過勤務の縮減を図るよう指導してきたところであるが、国立大学の法人化後は、各国立大学法人の自主的な判断により柔軟かつ機動的な組織編成や人員配置を行うことが可能となることから、各国立大学法人において、事務の簡素化や効率化等による超過勤務の縮減に一層積極的に取り組むことが重要であると考えている。

四の2について

 平成十五年十月二十二日に、大学における教員の業務の実態等を踏まえ、労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務(平成九年労働省告示第七号)を改正し、平成十六年一月一日から、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十八条の三に規定する専門業務型裁量労働制の対象業務に「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)」を追加したところである。このうち、「主として研究に従事する」とは、授業の時間が、週の所定労働時間等のおおむね五割に満たない程度であることをいうものとしており、実態として、これに該当する国立大学法人の教員については、裁量労働制の対象となるものである。
 文部科学省としては、国立大学法人の教員に対する裁量労働制の導入等によって、各国立大学法人において、より教職員の業務の実態等に即した労働時間の管理が可能になるものと考えている。

四の3について

 現在、各国立大学においては、平成十六年度からの国立大学の法人化に向けての準備作業を進めているところであるが、国立大学の法人化後の職員の労働条件について、法人化前にあらかじめ職員や職員団体に説明することや、その過程において職員団体からの意見を聴取することは準備作業の一つであると考えており、各大学においては、御指摘の附帯決議の趣旨を踏まえ、これらの作業を進めることが必要であると考えている。

四の4について

 大学の教員の給与等の待遇については、国立大学の教員は国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)や一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)等、公立大学の教員は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)や各地方公共団体の条例等、私立大学の教員は就業規則等に基づき定められているものであり、専任教員と非専任教員、又は常勤職員と非常勤職員との間で勤務時間数や経験年数、職務内容等に応じて給与等の待遇について差異が生じたとしても、直ちに適正を欠くことになるものではないと考えており、大学の教員の待遇について政府として調査等を行う予定はない。

五の1について
 平成十六年度以降における国立大学法人に対する運営費交付金の算定方式については、現在、検討を進めているところであるが、法人移行前の公費投入額を十分に踏まえるとの国立大学法人法の国会審議における附帯決議にのっとり、国立大学法人の業務が確実に実施されるよう、運営費交付金を措置していくことが必要であると考えている。
 なお、御質問にあるように、従来の試算基準に基づけば、研究所の多い国立大学においては標準教職員数の割合は全体の半数程度になる場合もあり得るものの、そのことのみを事由として直ちに教員数が削減されるようなことはないものと考えている。

五の2について

 教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)は、国立大学の場合については、国家公務員法により教員等の任命権を文部科学大臣が有することに対応し、大学の自治に由来する教員人事の自律性を保障するための特例として定められたものである。国立大学の法人化に伴って国立大学の教員等は公務員ではなくなり、教員等の任命権も文部科学大臣ではなく各国立大学法人の学長に属することとなるため、このような特例を引き続き設ける必要性がなくなったものである。
 なお、大学の自治の観点から、国立大学法人の学長の任命については、国立大学法人法第十二条第一項の規定により国立大学法人の申出に基づいて文部科学大臣が行うものとされているところである。また、教員人事に関する事項については、同法第二十一条第三項第四号の規定により教育研究評議会の審議事項とされているところであり、教員人事の具体的な在り方については、各国立大学法人において自主的に定められるものである。

五の3について

 国立大学法人法第十一条第二項第四号において、学長が当該国立大学の廃止に関する事項について決定をしようとするときは、役員会の議を経なければならないこととしているのは、主として国立大学の再編・統合の場合を想定し、このような重要事項に関して、当事者となる国立大学法人としての意思決定を行う際には、判断の適正を期す上で、役員会の議を経ることが適当であるためである。
 なお、役員会を構成することになる理事の任命に当たっては同法第十四条の規定により、その任命の際現に当該国立大学法人の役員又は職員でない者(以下「学外者」という。)が含まれるようにしなければならないこととされているが、理事の過半数を学外者から任命しなければならないこととはされていない。

五の4について

 国立大学の法人化に伴い、国立大学の職員が公務員ではなくなることについては、かねてより周知しているところであり、文部科学省としては、特別に全職員の希望を聴取する考えはない。なお、国立大学の職員の人事については、任命権者が、各職員の人事上の希望等を勘案しつつ、適材適所の観点から行うものであると考えている。

五の5について

 国立大学の法人化による予算の減要因としては、平成十五年度予算において計上した国立大学法人への円滑な移行準備のための経費等の減が予定されている。

五の6について

 中期計画は、全学的な視点に立った教育研究の実施体制等に関する事項を記載するものであって、学部や研究科における個々の具体的な教育研究活動について記載を求めるものではないことから、平成十五年七月三十一日付けの事務連絡「国立大学法人の中期目標・中期計画について」において各国立大学に示した「教育の成果に関する目標を達成するための措置」や「教育内容等に関する目標を達成するための措置」等の中期計画の各項目については、全学的な視点から記載されることを想定しているものである。ただし、例えば、知的財産の創出及び活用の促進、地域社会との連携の推進等の観点から、各国立大学として特に重点的に取り組む必要があるもの等については、必要に応じ中期計画の各項目の記載において附随的に学部等の教育研究活動が記載されることはあり得るものである。
 なお、平成十六年度以降における国立大学法人に対する運営費交付金の具体的な積算方法については検討を進めているところであるが、各国立大学の教育研究活動も踏まえつつ、運営費交付金を措置していくことが必要であると考えている。

五の7について

 国立大学法人が設置する国立大学の教育研究上の基本組織の在り方は、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図る上で基本的な事項であるため、中期目標で示すこととしているものである。また、中期目標を定める際には、国立大学法人法第三十条第三項に基づき、あらかじめ国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮することとされており、国立大学の教育研究上の基本組織を中期目標に記載することが教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)第十条の趣旨に反することになるとは考えていない。

六について

 東京都が設置した大学の再編・統合に係る検討の方法等については、設置者である東京都が主体的に判断すべきものであり、現在、設置者である東京都において検討が進められているところであることから、その検討の方法等について、政府として指導を行う考えはない。