質問主意書

第157回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

日出生台演習場での米海兵隊実弾射撃演習に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年十月八日

吉岡 吉典   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   日出生台演習場での米海兵隊実弾射撃演習に関する質問主意書

 これまで四年間にわたり、大分県の陸上自衛隊日出生台演習場では周辺住民の反対を押し切って、米海兵隊の沖縄県道一〇四号線越え一五五ミリりゅう弾砲実弾射撃演習移転が強行されてきた。その中で、演習の恒常化につながる米軍用宿舎等の演習支援施設の建設で機能強化が年々進められ、「沖縄と同質・同量」という協定上の取決めが、夜間射撃演習の実施等によってなし崩しにされつつある。その一方で、沖縄県のキャンプハンセンでは、演習による山火事被害が繰り返し発生するなど、「沖縄の負担が軽減」されるどころか、場合によっては一層深刻な状況となっている。
 こうした下で更に来年二月に米海兵隊のりゅう弾砲実弾射撃演習の移転訓練が実施されると発表されたことは、地元住民と県民の間に大きな不安と怒りを呼んでいる。我が党は、この住民を無視した演習の移転を中止することを要求する。併せて、住民の安全にとって切実な問題について、米海兵隊、外務省、防衛施設庁、陸上自衛隊、関係省庁が最大限の措置を怠りなく講ずべきだと考える。
 そこで、質問する。

一 沖縄県のキャンプハンセンでは、一五五ミリりゅう弾砲の実弾射撃演習が移転された後も、同じ場所を使って支援用機関銃や自動小銃、対戦車無反動砲等を使った激しい実弾射撃及び部隊による攻撃行動訓練が行われている。それらから発射される曳光弾や無反動砲の成形炸薬弾による引火を原因とした山火事が、昨年八月から今年五月までの間に十件も発生しており、一五五ミリりゅう弾砲射撃演習の移転以前に匹敵する回数となっている。騒音や流れ弾による被害も深刻であると聞いている。政府は、こうした被害の実態をどう把握し、どのような対策を講じているか。

二 前項の質問で示したような実態や、その後の沖縄県における米兵犯罪の実情を見るなら、結局一五五ミリりゅう弾砲の実弾射撃演習の本土分散移転とは、沖縄県民の苦痛をそのままにしておきながら、基地被害を全国に拡散するものに過ぎないのではないか。政府は、この演習移転で具体的に沖縄県における演習や基地被害がどのように軽減されたと認識しているか。本土での演習移転先で、地元からどのような被害や問題が指摘されているか。把握している事実を具体的に示されたい。

三 昨年二月の日出生台演習場への演習移転の際、船舶で港に入港して演習場まで移動する一部の米軍車輌には、車体後部にナンバープレートを付けていなかった。これでは、万一の事故の際、車輌の確認が困難になることが予想される。また、これら車輌は沖縄県から船舶輸送されてきたのであり、結局、沖縄県においてもナンバープレートを付けないで走行していることになるのではないか。これは、米軍車輌にナンバープレートを付けることを決めたSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意に反するのではないか。

四 沖縄県が国に出した地位協定見直し要望の中でも、米軍車輌のナンバープレートが見えにくいために事故を起こした車輌が特定できないから、容易に識別できるようにしてほしいとされている。これは当たり前の要望である。全国どこであろうと、米軍車輌がその前後に昼夜間問わずに個別の車輌を容易に識別できるナンバープレート又は標識を付けるべきであり、政府はそれを米側に求めて厳正に実施すべきと考えるが、どうか。

五 この間の演習では、自由外出時に毎回のように泥酔した米海兵隊員による痴態が繰り広げられたり、隊員同士の喧嘩や無銭飲食等の事態が起きている。また、九州の他の地方にとっても、昨年の演習移転の際は外出先が突然長崎市方面に変更になる等、安全策を講ずる面で関係自治体と住民に多大な迷惑をかけた。今後、政府としては、当初より予定を明確にして関係自治体と調整するとともに、国が以前に地元自治体と締結した協定にある「米兵の最高度の規律の保持」と「米兵外出時の防衛施設局職員の同行」を厳守すべきと考える。これらの点について、国としての責任をどのように果たしていくつもりか、具体的に示されたい。

六 前項までに指摘してきた米軍の行動に関する内容について、地元自治体や住民等から要望や苦情があった場合、地方の防衛施設局が現地に設置する対策本部に持ち込んでも、米軍に対して地元からの要望を伝え調整することができないという。併せて、地元住民の話では「米軍は防衛施設局からの注文を受け付ける態度をとらないようだ」との話も聞いた。そこで、米軍にSACO合意での取決め事項や地元自治体等との協定を遵守させるために、外務省等、政府の権限ある省庁・部局から現地対策本部に人員を配置し、地元と米軍との調整に当たるべきではないか。

  右質問する。