質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第四九号

内閣参質一五六第四九号
  平成十五年九月五日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員山下栄一君提出国民年金保険料の納付状況及び収納対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下栄一君提出国民年金保険料の納付状況及び収納対策に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成十年度から平成十四年度までの間の各年度における当該年度分の国民年金の保険料として納付されるべき保険料の総額、このうち当該年度内に納付された額及び両者の差額は、保険料を納付すべき総月数及び実際に納付された総月数並びに一月当たりの保険料額である一万三千三百円を基に試算すれば、別表第一のとおりである。

一の2について

 平成十四年度末における法定免除者(国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第八十九条により保険料を納付することを要しない被保険者をいう。以下同じ。)は百二万七千七百八十六人、住民税非課税世帯等であることによる申請免除者(同法第九十条第一項第一号から第四号までのいずれかに該当する被保険者であって、保険料の免除を申請し、その全額が免除されているものをいう。以下同じ。)は百二十九万五千八百四十八人、天災、失業等による申請免除者(同項第五号に該当する被保険者であって、保険料の免除を申請し、その全額が免除されているものをいう。以下同じ。)は十四万千五十九人である。
 平成十四年度における法定免除者に係る保険料免除総額は、保険料を納付することを要しないこととした月数及び一月当たりの保険料額である一万三千三百円を基に試算すれば、約千六百五十三億円となる。また、同年度における申請免除者に係る免除総額は、法定免除者の保険料免除総額と同様の方法により試算すれば、約二千九十一億円となるが、申請免除者の免除事由ごとの保険料を納付することを要しないこととした月数を把握していないため、この金額を住民税非課税世帯等であることによる申請免除者に係るものと天災、失業等による申請免除者に係るものとに区分することはできない。

一の3について

 厚生労働省が行った平成十三年の公的年金加入状況等調査の結果によれば、お尋ねの未加入者は平成十三年十月十五日現在約六十三万五千人であるところ、約六十三万五千人の国民年金の第一号被保険者が一年間に納付すべき保険料の総額を、一月当たりの保険料額である一万三千三百円を基に試算すれば、約千十三億円となる。

二の1について

 若年層の国民年金保険料の納付率が低下していることの要因の一つとして、若年層の雇用情勢が悪化し、若年失業者、定職を持たずアルバイトだけで生計を立てるいわゆるフリーター等が増加することにより、若年層の保険料負担能力が低下していることがあると考えている。

二の2について

 平成十四年四月から国民年金保険料の収納事務が市町村から国へと移管されたところ、これに伴う体制の整備や被保険者からの照会への対応に時間を要し、収納対策の本格的実施が遅れたこと、市町村と協力して収納に当たっていた自治会等の組織を活用できなかったこと等が、平成十四年度の国民年金保険料の納付率の低下に影響したものと考えている。

二の3について

 二の1について及び二の2についてでお答えした要因以外の国民年金保険料の納付率の低下要因としては、失業率の上昇等経済が低迷したこと、平成十四年四月からの保険料の免除制度の改正によって、平成十四年度は、前年度に保険料の納付が免除されていた者であって当年度は免除されなかったものが大幅に増加し、かつ、これらの者の平成十四年度における納付率が極めて低かったこと等があると考えている。

二の4について

 厚生労働省が平成十四年十二月に公表した「年金改革の骨格に関する方向性と論点」における試算のために使用した国民年金の納付率は、平成十二年度の検認率の実績である七十三パーセントである。

二の5について

 公的年金制度においては、長期的な視点に立った財政運営に資するため、将来的な社会経済の動向等を踏まえて財政見通しを作成することとしており、国民年金保険料の収納率のみを平成十四年度の実績値に置き換えた試算を行うことは考えていない。

三の1について

 平成十四年度における未加入者対策としては、引き続き政府広報等を通じた国民年金制度への加入勧奨を行うとともに、二十歳に到達した者が自ら国民年金の第一号被保険者としての資格取得の届出を行わない場合に、社会保険事務所から年金手帳を送付し、国民年金を適用する等の措置を講じたところである。
 また、平成十四年度における未納者対策としては、引き続き年金制度への理解を促し、自主的な納付に結び付けるための教育、広報等を実施し、口座振替の利用の勧奨等を実施したほか、国民年金保険料の収納事務が市町村から国へと移管されたことを契機として、全国一律に、未納者に対して年六回催告状を送付するとともに、電話による納付督励及び国民年金推進員の戸別訪問による納付督励を行う等、より徹底した未納者対策を実施したところである。

三の2について

 平成十五年度以降の国民年金保険料の収納対策としては、厚生労働省及び各地方社会保険事務局に国民年金特別対策本部を設置し、今後五年間で納付率を八十パーセントにするという中長期的な目標を設定した上で、着実な収納体制の確立に取り組むこととしており、三の1についてでお答えした未納者対策に加えて、保険料免除制度の周知徹底、コンビニエンスストアでの保険料収納等を実施するとともに、度重なる納付督励によっても理解が得られない未納者のうち、十分な所得又は資産が有り、他の被保険者の納付意欲にも悪影響を与えかねないものに対しては、強制徴収を実施することとしている。

四の1について

 平成十年度から平成十四年度までの間の各年度末における口座振替利用者数及び口座振替率の推移は、別表第二のとおりである。

四の2について

 口座振替利用者に送付する国民年金保険料口座振替額通知書兼領収済額通知書(以下「領収済額通知書」という。)の平成十四年度における作成経費は、約四億二千万円である。また、同年度における領収済額通知書の郵送経費は、他の料金後納郵便の郵送経費とともに一括して請求されていることから、その正確な金額を把握していないが、領収済額通知書の作成件数を基に推計すれば、約二十六億千万円となる。

四の3について

 国民年金の保険料が金融機関の窓口等で納付される場合には、その都度領収証書を交付していることから、口座振替利用者に送付する領収済額通知書も、現在は保険料を収納する都度発行しているところであるが、郵送経費の節約等の観点から見直すことを検討している。
 なお、仮に領収済額通知書の発行を年一回とした場合に節約される経費は、四の2についてでお答えした作成経費及び郵送経費を基に試算すれば、約二十七億四千万円になると見込まれる。

五の1について

 居住者が自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき国民年金の保険料を支払った場合又は給与から控除された場合には、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十四条並びに地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三十四条及び第三百十四条の二により、その支払った金額又はその控除された金額を、当該居住者のその年分の総所得金額等から控除することとされているが、現行制度上、確定申告、年末調整等において社会保険料控除を適用する際に、特にその納付額を証明する書類の添付を求めていない。

五の2について

 国民年金保険料に係る社会保険料控除の適用に当たっては、居住者から申告された支払保険料に基づき処理している。

別表第一

別表第二