質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第三三号

内閣参質一五六第三三号
  平成十五年七月十五日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員平野貞夫君提出「心神喪失等医療観察法案」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員平野貞夫君提出「心神喪失等医療観察法案」に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの数については暦年で把握しており、平成九年一月一日から平成十三年十二月三十一日までの五年間について、第百五十六回国会において成立した心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下「本法律」という。)第二条第三項に規定する対象者の各年ごとの数(ただし、不起訴処分をされた者については、心神耗弱者である疑いのある者を含めて計上した。)並びにその罪名別及び障害別の内訳は、別表第一のとおりである。

二について

 お尋ねの数については把握していないが、一についてでお答えした合計千七百八十五人について、不起訴処分又は無罪等の確定裁判に係る対象行為が行われた年から起算して過去十年以内に本法律第二条第二項に規定する対象行為についての前科又は前歴を有する者の数並びにその罪名別及び障害別の内訳は、別表第二のとおりである。

三について

 お尋ねの数については把握していないが、平成十四年度の厚生労働科学研究費補助金による障害保健福祉総合研究事業として行われた「措置入院制度の適正な運用に関する研究」によれば、平成十二年四月一日から平成十三年三月三十一日までの間に精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「精神保健福祉法」という。)第二十五条の規定による検察官からの通報に基づき精神保健福祉法第二十九条第一項又は第二十九条の二第一項の規定による入院措置(以下「入院措置」という。)がされた事例のその後六月以内の状況は別表第三のとおりであり、平成十二年五月及び十一月に精神保健福祉法第二十四条の規定による警察官からの通報に基づき入院措置がされた事例のその後六月以内の状況は別表第四のとおりである。

四について

 厚生労働省において行った調査の結果によれば、平成十三年六月三十日現在、都道府県及び政令指定都市ごとの入院期間別の措置入院者数は別表第五のとおりであり、精神病床に入院している者の数は三十三万二千七百十四人である。

五について

 平成十五年度から開始する「精神障害者退院促進支援事業」の対象予定者については、平成十五年六月三十日現在、十六府県市から提出された事業計画書に基づき集計したところ、合計二百三十七人となっており、これらの入院している者が退院できるように努めてまいりたい。

六について

 本法律第四十二条第一項第三号の規定に基づき本法律による医療を行わない旨の決定を受けた者であっても、精神医療を必要としている限り、入院措置を含む精神保健福祉法による医療の対象となり得る。
 また、本法律第二条第三項に規定する対象者のうち、本法律第四十二条第一項第三号の規定に基づき本法律による医療を行わない旨の決定を受けた後、精神保健福祉法による医療を受けることとなる者の割合について、確定的なことをお答えすることは困難である。

七について

 本法律第五十一条第一項第三号、第五十六条第一項第二号又は第六十一条第一項第三号の規定に基づき本法律による医療を終了する旨の決定を受けた者であっても、精神医療を必要としている限り、入院措置を含む精神保健福祉法による医療の対象となり得る。

八について

 精神病院に入院している者については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(昭和六十三年厚生省告示第百三十号)において、患者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を患者にできる限り説明して制限を行うよう努めることとされており、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者についても、本法律第九十三条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準において、同様の基準を定めることを予定している。
 また、精神病院に入院している者については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十六条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める行動の制限(昭和六十三年厚生省告示第百二十八号)において、精神病院の管理者は、人権擁護に関する行政機関の職員及び患者の代理人である弁護士との電話及び面会の制限並びに患者又は保護者の依頼により患者の代理人となろうとする弁護士との面会の制限を行うことができないこととされており、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者についても、本法律第九十二条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める行動の制限において、同様の行動の制限を行うことができない旨定めることを予定している。

九について

 本法律第三十七条第二項は、精神保健判定医等が対象者の鑑定を行うに当たっては、当該対象者の性格も考慮するものとしているところ、精神医学上、一般に、精神病質とは思考、感情、人と接する態度等が同一文化の中の平均的な者から極端に乖離した持続的な性格異常の状態を意味するものと解されており、反社会性人格障害とはこのような精神病質の一類型であると解されていることから、仮に対象者がこれらの精神病質を有している場合には、それが当該対象者の性格にも影響を及ぼしていると考えられるので、当該対象者の性格の一部として、当該鑑定に当たって考慮されることとなると考えられる。

十について

 本法律による医療によって、少なくともその病状の増悪を抑制する可能性がある対象者については、本法律による医療を受けることがあり得ると考えられるが、その可能性が全くない対象者については、必要に応じて福祉施設又は自宅において福祉サービス等の提供を受けることがあり得ると考えられる。

十一について

 本法律附則第四条には、施行後五年を経過した場合において、本法律の規定の施行の状況について、国会に報告するとともに、検討を加える等の政府の責務が規定されており、政府としても、今後、御指摘の事項を含め、政府として把握すべき施行の状況の内容、その公開の方法及び内容等について、検討を進めてまいりたい。

十二について

 お尋ねの数のうち、全国の行刑施設(刑務所、少年刑務所及び拘置所をいう。以下同じ。)において精神障害者として分類収容されているもの(以下「M級受刑者」という。)の数については、各年十二月三十一日現在の数を把握しており、平成九年から平成十四年までの六年間のその施設別の内訳と総数は別表第六のとおりであり、平成九年一月一日から平成十四年十二月三十一日までの六年間に仮釈放を認められたM級受刑者の数は別表第七のとおりである。また、行刑施設の精神科医師の数については、平成十二年から平成十五年までの各年四月一日現在の数を把握しており、その施設別及び常勤・非常勤別の内訳と総数は、別表第八のとおりである。さらに、行刑施設における精神保健福祉法第二十六条による通報件数については、暦年で把握しており、平成九年一月一日から平成十四年十二月三十一日までの六年間の出所受刑者に係る通報件数の施設別の内訳と総数は、別表第九のとおりである。
 その余のお尋ねの数については、把握していないが、参考として、平成九年から平成十四年までの六年間の各年十二月三十一日現在の在所受刑者の罪名別人員は別表第十のとおりであり、平成九年一月一日から平成十四年十二月三十一日までの六年間の出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員は別表第十一のとおりである。

別表第一

別表第二

別表第三 検察官からの通報に基づき入院措置がされた後6月以内の状況
別表第四 警察官からの通報に基づき入院措置がされた後6月以内の状況


別表第五 入院期間別の措置入院者数

別表第六 行刑施設別のM級受刑者数

別表第七 仮釈放を認められたM級受刑者の数

別表第八 行刑施設別及び常勤・非常勤別の精神科医師数

別表第九 出所受刑者に係る精神保健福祉法第26条による通報件数 1/2

別表第九 出所受刑者に係る精神保健福祉法第26条による通報件数 2/2

別表第十 12月31日現在在所受刑者の罪名別人員 1/2

別表第十 12月31日現在在所受刑者の罪名別人員 2/2

別表第十一 平成9年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 1/7

別表第十一 平成10年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 2/7

別表第十一 平成11年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 3/7

別表第十一 平成12年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 4/7

別表第十一 平成13年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 5/7

別表第十一 平成14年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 6/7

別表第十一 平成14年 出所受刑者の施設別出所時収容分類級別人員 7/7