質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第三〇号

内閣参質一五六第三〇号
  平成十五年七月二十九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出ETCに関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出ETCに関する第三回質問に対する答弁書

一について

 平成十三年度から平成十五年度までに計上された「ノンストップ自動料金支払いシステム」(以下「ETC」という。)に関係する一般会計予算額は、それぞれ、平成十三年度が「ETC技術を利活用した新道路社会システムの開発」のための経費として一億五百万円、平成十五年度が「ETCの普及に伴うETCシステムの高度・汎用化経費」として十億円及び「ETCを活用したインターチェンジ整備による市場及び地域活性化に向けた検討経費」として千七百七十七万二千円となっている。なお、平成十四年度に計上されたETCに関係する一般会計予算はない。

二について

 料金所に起因する渋滞の解消策としては、料金所の処理能力を向上させるETCの導入のほか、料金所ブースの増設等が考えられるが、現在、渋滞が発生している料金所の多くは都市内にあり、料金所ブース増設等のための新たな用地の確保が困難であることから、料金所ブースの増設等によって料金所に起因する渋滞を解消することは困難であると考えている。
 一方、ETCの利用が促進され、ETC利用者が全体の半数程度に達すれば、料金所に起因する渋滞はおおむね解消されると見込まれることから、ETCの導入を図ることとしたものである。

三について

 料金所ブースの数の設定等料金所施設の設計に当たっては、第一回答弁書(平成十五年三月四日内閣参質一五六第四号)五についてで述べたとおり、料金所においていったん停車をしても著しい渋滞が発生しないよう、交通需要を考慮した数の料金所ブースを設置することとされており、例えば、日本道路公団においては、許容すべき混雑時間を最小限にとどめるとともに経済的な設計を行う観点から、供用開始十年後における年間の上位三十番目に相当する一時間当たりの計画交通量を円滑に処理できるよう、必要な料金所ブース数を設定していると承知している。
 しかしながら、供用開始後、計画を上回る交通量の伸びや特定の時間帯への交通の集中が生じたことに加え、特に都市内にある料金所については、料金所ブースの増設等による対応が困難であることにより、現在、料金所に起因する渋滞が発生する結果となっているものと考えている。

四について

 ETC利用者に特化した多様な料金施策については、現在、前払金に応じて割引が受けられるETC前払割引のほか、特定の路線や区間におけるETC利用者に限定した割引などが、有料道路の事業の採算性に影響を与えない範囲で行われていると考えている。
 また、ETC車載器の価格については、市場における競争を通じて決定されるべきものであり、お尋ねのように「適正な」ETC車載器の価格を政府として示すことは差し控えたい。

五について

 平成十五年度中に基本的にすべての料金所にETCの導入を完了することとされている等、様々なETCの普及促進策の実施により、平成十九年度末までにETC利用者を全体の半数程度まで増加させ、料金所周辺の渋滞をおおむね解消させることを目標としている。

六及び七について

 ETCは、料金所でいったん停車することなく料金を支払うことができる等、ETCを利用しない場合に比べ、利用者にとって大きな利便性や快適性を有するシステムであり、有料道路の利用者は、このようなETCの有する利便性等を踏まえて、ETCを利用するかどうかを選択しているものである。
 このように、ETCは、有料道路料金の支払方法の選択肢の一つとして導入されているものであり、「利用者が公共料金とは別に負担を強いられる」との御指摘は当たらないと考えている。
 なお、海外においても、ETCを利用するためには一定の費用負担が伴うことが一般的であると承知している。

八について

 ETCの導入が開始された平成十三年三月以降、約二年三か月を経過した平成十五年六月末現在、ETC車載器の普及台数は累計約百十五万台に達している。特に、平成十五年に入ってからの普及が急速に進んでおり、例えば本年六月の一か月間で新たに約十七万台の普及がみられるなど、ETCの普及は着実に進んでいるものと考えている。

九について

 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団(以下これらを合わせて「公団」という。)が発行するハイウェイカードのうち、これまで偽造が発見されているものは、五万円及び三万円のハイウェイカード(以下「高額券」という。)のみであり、今般の高額券の廃止は、ハイウェイカード偽造の根絶を目指すものであると承知している。御指摘のとおり、一万円以下のハイウェイカードについても、今後偽造される可能性があることは否定できないが、偽造が確認されていない現状においては、利用者の利便を考慮して引き続きこれを発行することとしていると承知している。
 高額券の廃止による偽造防止効果については、正確な金額は不明であるが、平成十四年九月末までに公団において発見された偽造されたハイウェイカードだけで約二万枚、額面金額にして約十一億円となっていると承知している。政府としては、高額券の廃止により、偽造対策として極めて大きな効果があるものと考えている。

十について

 九についてで述べたとおり、今般の高額券の廃止はあくまで偽造対策として実施されるものと承知している。

十一について

 ETCは、料金所での料金支払いのための停車を不要とすることにより料金所の処理能力を向上させるものであり、料金所での停車が必要な御指摘の「ICカード技術を利用したプリペイド式」に比べ、偽造対策のみならず、料金所周辺の渋滞の解消及び環境の改善、料金徴収経費の縮減、多様な料金施策の実施等の様々な目的の達成に資するものであると考えている。
 また、公団においては、高額券の使用の停止を予定している平成十六年三月一日までに、基本的にすべての料金所においてETCの導入を完了することとしているものと承知しており、高額券の使用停止後においても、五万円のハイウェイカードと同様の割引率による割引を受けることが可能とされているETC前払割引を利用することにより、ハイウェイカードの利用者に対するサービスの著しい低下は生じないものと考えている。

十二について

 各大臣の認可に係る公共料金について調査した限りでは、その支払手段の選択肢の一つとしてクレジットカード会社の審査を経て発行を受けたクレジットカードによる後払いの方法が認められている事例として、タクシーの運賃、国際線の航空運賃等が存在する。

十三について

 財団法人道路システム高度化推進機構において把握している限りでは、平成十五年三月末現在、路側機器の製造会社が松下電器産業株式会社等十二社、ETC車載器の製造会社が株式会社デンソー等二十六社、ETC車載器のセットアップ事業者が株式会社オートバックスセブン等二百十四事業者となっているものと承知している。
 また、国家公務員の退職後における再就職先の状況は、公務を離れた個人に関する情報であり、一般に政府が把握すべき立場にはないことから、お尋ねの事項すべてについてお答えすることは困難であるが、各省庁の職員で平成十一年八月十六日から平成十三年八月十五日までの間に課長相当職以上で退職したものの再就職状況については「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成十一年四月二十七日中央省庁等改革推進本部決定)を受け、各府省の職員で平成十三年八月十六日から平成十四年八月十五日までの間に企画官相当職以上で退職したものの再就職状況については「公務員制度改革大綱」(平成十三年十二月二十五日閣議決定)に基づき、それぞれ既に公表しているところであり、このように公表されている者につき調べた限りでは、退職時官職がお尋ねの役職に該当する者はいない。