質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第二二号

内閣参質一五六第二二号
  平成十五年五月三十日
内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 福田 康夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員神本美恵子君提出結核診断に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神本美恵子君提出結核診断に関する質問に対する答弁書

一について

 学校においては半世紀以上にわたり徹底した結核対策を実施してきたことにより、小学校及び中学校の児童生徒のり患者の数は著しく減少していると認識しており、今後とも、児童生徒の健康の保持増進を図るとともに学校教育の円滑な実施のため、引き続き結核対策に取り組んでいくことが重要であると考えている。

二について

 「結核部会・感染症部会の共同調査審議に係る合同委員会報告書」(平成十四年六月五日厚生科学審議会感染症分科会結核部会・感染症部会の共同調査審議に係る合同委員会)において、結核の早期発見の仕組みの検討を行う必要があると提言されたことを受け、文部科学省においては、有識者からなる「学校における結核対策に関する協力者会議」を開催し、小学校及び中学校における新たな結核対策について検討を行ってきたところである。同会議の最終報告(平成十四年八月二十八日)では、これまで一律に実施してきたツベルクリン反応検査を中止するとともに、結核の早期発見の機会を引き続き学校保健の場において確保するため、問診等により対象者を絞り込んだ上で精密検査を行うことが提言されたところであり、この提言を踏まえて結核の有無の検査を行うことが、結核の早期発見・早期治療に資するものと考えている。

三について

 文部科学省においては、「学校保健法施行規則の一部改正等について」(平成十五年一月十七日付け文部科学省スポーツ・青少年局長通知)、「定期健康診断における結核健診マニュアル」(以下「マニュアル」という。)等を通じて、結核の有無の検査の実施に当たってはプライバシーの保護に十分配慮するよう、都道府県の教育委員会等に対して指導しているところであり、プライバシーの保護については適切に配慮されるものと考えている。
 また、エックス線直接撮影を含め、精密検査については、学校保健法施行規則(昭和三十三年文部省令第十八号)第五条第五項第三号に基づき、問診を踏まえて学校医等において必要と認める者であって、結核に関し専門的知識を有する者等の意見により、当該者の在学する学校の設置者において必要と認めるものに対して行うこととしているとともに、文部科学省においては、マニュアルを通じて、結核の専門家等により構成される結核対策委員会において、精密検査等の指示等に関する専門的な検討を行うよう、都道府県の教育委員会等に対して指導しているところであり、適切に検査及び事後措置が実施されるものと考えている。

四について

 御指摘のような点については、個別の事例に応じて判断すべきものと考えている。

五について

 学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)第六条に基づく児童生徒等の健康診断に係る経費については、学校の設置者が負担しているところである。また、文部科学省においては、従来より、結核に関する知識の普及啓発の取組を行っているところであるが、平成十五年度予算においては、新たな結核対策の円滑な実施に資するための普及啓発資料の作成に必要な予算を確保しているところである。

六について

 精密検査の実施に関しては、三についてで述べたとおり、適切に行われるものと考えている。
 また、御指摘のパブリックコメントに対する文部科学省の回答は、新たに導入された結核の有無の検査に関する仕組みに基づく健康診断の実施状況について、適切に評価していく考えを示しているものであるが、その具体的な評価方法については、今後、検討していくこととしている。

七について

 学校保健法第四条に基づく就学時の健康診断においては、従来より、市町村の教育委員会が、経皮接種用乾燥BCGワクチン(以下「BCGワクチン」という。)の接種を含め、健康診断の当日までに受けた予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)及び結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)の規定による定期の予防接種の種別及び接種年月日を把握することとしており、今後とも、市町村の教育委員会において、適切に把握されるものと考えている。

八について

 ツベルクリン反応検査は、結核に感染していないことを確認するために行われるものであり、乳幼児については、結核予防法上、ツベルクリン反応検査を行い、その結果が陰性である者に対してのみBCGワクチンの接種を行うこととされているが、現在、ツベルクリン反応検査を経ることなく、直接BCGワクチンの接種を行うことについて検討を行っているところであり、その理由は次のとおりである。
1 乳幼児期に結核にり患する者の割合が低下していることに伴い、ツベルクリン反応検査の結果が偽陽性である者(結核に感染していないにもかかわらずツベルクリン反応検査の結果が陽性となる者をいう。)が増加しているが、これらの者は結核に感染しているものとして不要な精密検査又は予防内服を受けている可能性があるとともに、これらの者に対しては結核の予防にBCGワクチンの接種が効果的であるにもかかわらず、これを受けないまま結核に感染する可能性があること。
2 既に結核に感染している乳幼児にBCGワクチンの接種を行うことにより、まれに副作用が発生することがあるが、その場合でも副作用の大部分は経過を観察するのみでよい程度であることが明らかになったこと。