質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一五六第一〇号
  平成十五年六月三日
内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 福田 康夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出ごみ焼却炉の解体に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出ごみ焼却炉の解体に関する質問に対する答弁書

一について

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第二条第二項に規定する一般廃棄物(以下単に「一般廃棄物」という。)又は廃棄物処理法第二条第四項に規定する産業廃棄物(以下単に「産業廃棄物」という。)を処理する廃棄物焼却炉であって平成十二年から平成十四年までの各年に廃止された廃棄物焼却炉及び当該廃棄物焼却炉のうち解体された廃棄物焼却炉の都道府県別の数は、別表一のとおりであると承知している。

二について

 市町村等が、廃棄物焼却炉を解体するに際してダイオキシン類等に係る周辺環境の調査を実施する場合、国から補助金(以下「環境調査補助金」という。)を交付することとしている。当該補助金を交付した市町村等に対しダイオキシン類及び重金属等に関する周辺環境調査の結果を照会したところ、別表二のとおりであり、ダイオキシン類対策特別措置法(平成十一年法律第百五号)第七条又は環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十六条第一項に規定する基準(以下「環境基準」という。)を超えるものはなかった。
 また、廃棄物焼却炉の解体に着目したものではないものの、都道府県等においては、ダイオキシン類対策特別措置法第二十六条第一項に基づき、ダイオキシン類による大気、水質及び土壌の汚染の状況を常時監視しているほか、大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)第二十二条第一項又は水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第十五条第一項に基づき、重金属等による大気の汚染の状況又は水質の汚濁の状況を常時監視しているところである。平成十三年度における常時監視の結果は、別表三のとおりであり、ダイオキシン類等の濃度は、大部分の地点で環境基準又は世界保健機関(WHO)欧州地域事務局の定める大気質ガイドライン値を下回っている。一部、環境基準等を超えるものについても、都道府県等において、その原因が、廃棄物焼却炉の解体と考えられているものはないと承知している。
 なお、平成十五年度から、廃棄物焼却炉等の解体時に都道府県等が実施するダイオキシン類に関する周辺環境の調査について、環境省も一部協力して実施し、廃棄物焼却炉等の解体に伴う周辺環境へのダイオキシン類の影響について把握することとしている。

三について

 御指摘の「廃棄物焼却施設解体工事におけるダイオキシン類による健康障害防止について」(平成十二年九月七日付け基発第五百六十一号の二労働省労働基準局長通達。「廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策について」(平成十三年四月二十五日付け基発第四百一号の二厚生労働省労働基準局長通達。以下「要綱」という。)により廃止。)及び要綱において、廃棄物焼却施設の解体作業を行う前に施設内部の汚染除去を実施すべきこと及びこれに先立ち焼却炉本体等の内部等ダイオキシン類に汚染されているおそれのある箇所のダイオキシン濃度を調査すべきことを指示しているのは、解体作業に従事する労働者のダイオキシン類へのばく露防止の徹底を図ることを目的とするものであり、廃棄物焼却炉の解体に伴って発生した廃棄物は、別途、廃棄物処理法及びダイオキシン類対策特別措置法の規定に従って処理することとなる。
 具体的には、廃棄物焼却炉の解体に先立って除去したばいじん及び焼却灰その他の燃え殻(付着物を含む。以下「ばいじん等」という。)については、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラム以下である場合、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号。以下「廃棄物処理法施行令」という。)第三条第二号の規定による処分若しくは再生又は同条第三号チの規定による埋立処分(以下「処分若しくは再生又は埋立処分」という。)を行うこととなる(ただし、廃棄物処理法施行令第一条第二号に規定するばいじんについては、重金属等が含まれている蓋然性が高いことから、廃棄物処理法施行令第四条の二第二号ロの規定により、当該ばいじんから重金属等が溶出しないよう溶融、焼成、セメント固化、薬剤処理又は酸抽出により処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うこととなる。)。また、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラムを超える場合は、ダイオキシン類対策特別措置法第二十四条第一項及び廃棄物焼却炉に係るばいじん等に含まれるダイオキシン類の量の基準及び測定の方法に関する省令(平成十二年厚生省令第一号。以下「基準省令」という。)に基づき、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラム以下となるように処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うか、セメント固化、薬剤処理又は酸抽出の方法により処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うこととなる。
 別表四の上欄に掲げる産業廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉の解体に先立って除去したばいじん等については、同表の中欄に掲げる重金属等が同表の下欄に掲げる数値を超えて検出された場合、廃棄物処理法施行令第六条の五第一項第二号の規定による処分若しくは再生又は同項第三号カの規定による埋立処分を行うこととなる。
 廃棄物焼却炉の解体は、ダイオキシン類を含む付着物を除去した上で行うことから、当該解体に伴って発生したコンクリート、レンガ、金属類等の工作物及び電気機械等の設備機器については、廃棄物として処理するに当たり人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれはないものであり、廃棄物処理法施行令第二条第六号又は第九号に規定する産業廃棄物として、廃棄物処理法施行令第六条に規定する基準に従って処理することとなる。

四の1について 

 平成十二年から平成十四年までの各年において、一般廃棄物を処理する廃棄物焼却炉又は産業廃棄物を処理する廃棄物焼却炉の解体に伴って発生したばいじんの処理の方法は、別表五のとおりであると承知している。

四の2について

 三についてで述べたとおり、廃棄物処理法施行令第一条第二号に規定するばいじんについては、重金属等が含まれている蓋然性が高いことから、廃棄物処理法施行令第四条の二第二号ロにおいて、当該ばいじんから重金属等が溶出しないよう溶融、焼成、セメント固化、薬剤処理又は酸抽出により処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うことを規定するとともに、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラムを超えるばいじんについては、ダイオキシン類対策特別措置法第二十四条第一項及び基準省令において、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラム以下となるように処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うか、セメント固化、薬剤処理又は酸抽出の方法により処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うことを規定しているところである。

四の3から5までについて

 廃棄物処理法施行令第五条第一項に規定するごみ処理施設である廃棄物焼却炉(以下「一般廃棄物焼却炉」という。)の解体に伴って発生したばいじんを一般廃棄物焼却炉において焼却することは、廃棄物処理法施行令第三条第二号イ及び第四条の二第二号柱書の規定により認められているとともに、その場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)第四条第一項に適合する焼却設備を用いて、同規則第四条の五第一項に定める基準に従い維持管理を行うことが義務付けられている。
 同規則においては、一般廃棄物焼却炉において廃棄物を焼却する場合は、外気と遮断した状態で廃棄物を投入し、燃焼ガスを二秒以上滞留させることができる燃焼室内において摂氏八百度以上の高温で焼却すること、集じん器に流入する燃焼ガスの温度をおおむね摂氏二百度以下に冷却し、ばいじんを除去する高度の機能を有する排ガス処理施設の設置により排ガスによる生活環境保全上の支障が生じないようにすること、一般廃棄物焼却炉の煙突から排出される排ガス中のダイオキシン類の濃度を測定し、一定濃度以下になるように焼却することが定められている。
 ダイオキシン類は、廃棄物の不完全燃焼に伴って生成するほか、排ガス処理施設の入口の排ガス温度が摂氏三百度程度の場合には、排ガス処理施設内で生成するとともに、摂氏八百度以上で二秒以上の滞留時間を確保したうえで完全燃焼した場合に分解されることが知られている。
 これらのことから、同規則で定める基準に従ってばいじんを一般廃棄物焼却炉において焼却した場合、ダイオキシン類は分解され、排ガスをおおむね摂氏二百度まで急冷することにより排ガス処理施設内でダイオキシン類が生成されるものもわずかであり、わずかに生成されたものについても、バグフィルター等の集じん器により除去され、排ガス中に残存するダイオキシン類は捕捉されることから、同規則第四条の五第一項第二号ワに定める基準以上のダイオキシン類が大気中に放出されることはないものと考える。
 なお、二についてで述べた市町村等に対し照会したところ、一般廃棄物焼却炉の解体に伴って発生したばいじんを一般廃棄物焼却炉に投入し、焼却処理した際に、当該一般廃棄物焼却炉から排出される排ガス中のダイオキシン類の濃度について調査を行った施設は一か所であり、その調査結果は別表六のとおりである。排ガス中の重金属等の濃度及び周辺環境への汚染の状況について調査を行った施設はない。

五の1について

 廃棄物焼却炉の解体工事を対象とした国庫補助制度はないが、環境調査補助金については、要綱の遵守を交付の要件としている。

五の2について

 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)は、労働者の安全と健康の確保等を目的としており、要綱は、同法第二十二条及び労働安全衛生規則第五百九十二条の二等の規定を踏まえ、労働者のダイオキシン類へのばく露防止の徹底を図ることを目的として、事業者が講ずべき基本的なダイオキシン類へのばく露防止措置を示したものである。したがって、事業者による周辺住民へのダイオキシン類に関する情報提供については、特に定めていない。

五の3について

 廃棄物処理法及び関係法令において、廃棄物焼却炉から排出されたばいじん等であって、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラムを超えるものを人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして規制していること等を参考に、要綱においても、一グラム当たり三ナノグラムを基準の一つとして解体作業の区分を行っている。

五の4について

 三についてで述べたとおり、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラムを超えて検出されたばいじん等については、ダイオキシン類対策特別措置法第二十四条第一項及び基準省令に基づき、その含有するダイオキシン類の量が一グラム当たり三ナノグラム以下となるように処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うか、セメント固化、薬剤処理又は酸抽出の方法により処理した上で処分若しくは再生又は埋立処分を行うこととなる。
 なお、要綱において実施することとされている廃棄物焼却炉の内部の付着物に含まれるダイオキシン類の含有率の測定は、当該付着物の除去作業の前に行うものである。廃棄物焼却炉の解体は、労働安全衛生規則第五百九十二条の三の規定によりダイオキシン類を含む付着物の除去作業を行った上で行うこととされており、当該解体に伴って発生したコンクリート、レンガ、金属類等の工作物については、ダイオキシン類が含まれる付着物が除去され、廃棄物として処理するに当たり、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれはないものであることから、廃棄物処理法施行令第二条第六号又は第九号に規定する産業廃棄物として、廃棄物処理法施行令第六条に規定する基準に従って処理することとなる。

五の5について

 廃棄物焼却炉の解体作業等に伴う労働者のダイオキシン類へのばく露については、労働安全衛生規則の規定及び要綱に基づく対策を徹底することにより、防止されるものと考えていることから、要綱においては、事故、保護具の破損等により労働者がダイオキシン類に著しく汚染され、又はこれを多量に吸入したおそれのある場合に、必要に応じて、労働者の血中ダイオキシン類濃度測定を行うこととしているものである。
 また、二についてで述べたとおり、廃棄物焼却炉の解体に伴いダイオキシン類等による周辺環境の汚染が発生しているとは承知しておらず、現時点では、周辺環境のダイオキシン類等の濃度の測定については、廃棄物焼却炉の設置者若しくは地方公共団体又は解体作業を行う事業者において必要に応じて行えばよいものと考える。
 なお、平成十五年度から、廃棄物焼却炉等の解体時に都道府県等が実施するダイオキシン類に関する周辺環境の調査について、環境省も一部協力して実施し、廃棄物焼却炉等の解体に伴う周辺環境へのダイオキシン類の影響について把握することとしている。
 今後とも廃棄物焼却炉の解体に伴う周辺環境の汚染の状況の把握に努めてまいりたい。

五の6について

 二についてで述べたとおり、廃棄物焼却炉の解体に伴いダイオキシン類等による周辺環境の汚染が発生しているとは承知しておらず、また、三についてで述べたとおり、解体物の処理方法については廃棄物処理法において定められているため、現時点では、御指摘のような措置を講ずる必要はないと考えるが、今後とも廃棄物焼却炉の解体に伴う周辺環境の汚染の状況の把握に努めるとともに、適切な解体物の処理が図られるよう地方公共団体と連携し適正に対処してまいりたい。

六について

 住民から市町村等が設置する廃棄物焼却炉の解体方法及び解体物の行方について情報公開を求められた場合に、その情報について公表すべきか否かについては、当該市町村等が情報公開条例等に基づき判断すべきものと考えるが、一般に、市町村等が情報公開条例を定めていた場合、市町村等と解体する事業者の間で締結する解体工事に関する設計図書を含めた契約書等については、開示請求をすることにより、開示されるものと考える。

七について

 一般廃棄物の埋立処分については、廃棄物処理法施行令第三条第三号に規定する基準に従って、また、産業廃棄物の埋立処分については、廃棄物処理法施行令第六条第一項第三号に規定する基準に従って行うこととされており、御指摘の事例については、これらの基準に反して行われた埋立処分である場合、廃棄物処理法違反となる。
 このような事例については現時点では承知していないが、実際にあるとすれば生活環境への影響が懸念されるので、適正な処分が行われるよう地方公共団体と連携し適正に対処してまいりたい。

八について

 二についてで述べたとおり、廃棄物焼却炉の解体に伴いダイオキシン類等による周辺環境の汚染が発生しているとは承知しておらず、また、三についてで述べたとおり、解体物の処理方法については廃棄物処理法において定められているため、現時点では、御指摘のような新しい法令を制定する必要はないと考えるが、今後とも廃棄物焼却炉の解体に伴う周辺環境の汚染の状況の把握に努めてまいりたい。

別表一 一般廃棄物を処理する廃棄物焼却炉の廃止炉数及び解体炉数 1/2

別表一 産業廃棄物を処理する廃棄物焼却炉の廃止炉数及び解体炉数 2/2

別表二 ダイオキシン類に関する周辺環境調査の結果 1/2

別表二 重金属等に関する周辺環境調査の結果 2/2

別表三 ダイオキシン類常時監視結果(平成十三年度) 1/2

別表三 重金属等常時監視結果(平成十三年度) 2/2

別表四

別表五 一般廃棄物を処理する廃棄物焼却炉の解体に伴って発生したばいじんの処理方法 1/2

別表五 産業廃棄物を処理する廃棄物焼却炉の解体に伴って発生したばいじんの処理方法 2/2

別表六