質問主意書

第156回国会(常会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質一五六第四号
  平成十五年三月四日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出ETCに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出ETCに関する質問に対する答弁書

一について

 「ノンストップ自動料金支払いシステム」(以下「ETC」という。)は、その導入により料金所の処理能力を向上させるものであり、国土交通省においては、料金所周辺の渋滞の解消及び環境の改善、料金徴収経費の縮減、多様な料金施策の実施等の様々な目的の達成に資するものとしてその普及を促進しているところである。

二について

 料金所周辺の渋滞の解消策としては、ETCの導入のほか、料金所ブースの増設等が考えられるが、ETCは料金所周辺の渋滞の解消のみならず、料金所周辺の環境の改善、料金徴収経費の縮減、多様な料金施策の実施等の様々な目的の達成に資する施策であることから、これらを勘案し、ETCの普及を促進しているところである。

三について

 日本道路公団、首都高速道路公団及び阪神高速道路公団が平成九年に実施した調査に基づき、国土交通省において、各公団の管理する道路において発生する渋滞による損失額を算定したところ、その額は年間約一兆円であり、その約三割が料金所に起因するものと考えられた。このため、ETCの導入により料金所周辺の渋滞が解消されれば、年間約三千億円の経済効果があると見込んだものである。

四について

 現在、日本道路公団、首都高速道路公団及び阪神高速道路公団にETCが導入されているが、ETCの利用時においてETCカードの挿し忘れ等により正常に無線交信ができないことに起因して開閉バーが開かない場合があるため、安全上の観点から、時速二十キロメートル以下を目安として十分に減速し通行するよう、各公団において広報を行っていると承知している。

五について

 料金所の手前は基本的に本線部と比較して大きく拡幅した構造となっており、従来から、料金所においていったん停車をしても著しい渋滞が発生しないよう、交通需要を考慮した数の料金所ブースが設置されているところである。また、ETCの利用時にはいったん停車せずに料金所を通過するため、ETCの専用車線における一時間当たりの処理能力は従来と比較して二倍から四倍に向上すると見込まれることから、ETCの利用が促進されれば料金所周辺の渋滞は減少し、ETC利用者が全体の半数程度まで増加すれば、料金所周辺の渋滞はおおむね解消されるものと考えている。

六について

 五についてで述べたとおり、ETCが導入されている料金所(以下「ETC料金所」という。)の通過時の減速に起因する渋滞は発生しないと想定している。

七について

 御指摘の「料金所渋滞」は、年間を通じた平均的な渋滞を想定したものである。なお、ETCの導入により、盆暮れなどにおける季節的な料金所渋滞についても大きく緩和されるものと見込んでいる。

八について

 ETC料金所の拡充、ETC利用者に特化した多様な料金施策等の普及促進策の実施及びETC車載器の価格の更なる低廉化により、ETCの普及が促進されるものと考えている。

九について

 ETC利用者に特化した多様な料金施策については、現在実施されている前払金に応じて割引が受けられるETC前払割引のほか、特定の路線や区間におけるETC利用者に限定した割引など、今後もETCの機能を活用した様々な料金施策が実施される予定であると承知しており、ETCの普及が促進されるものと考えている。

十について

 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団(以下これらを合わせて「公団」という。)が発行するハイウェイカードについては、その偽造が社会問題化しており、これまで公団において偽造防止対策を施した新型カードを販売するなどの対策を講じてきたものの、新たな偽造カードの使用及び流通が後を絶たない状況であることから、公団は、五万円及び三万円の高額のハイウェイカードについて、平成十五年二月二十八日をもって販売を停止し、平成十六年二月二十九日をもって使用を停止することを決定したと承知している。
 一についてで述べたとおり、ETCの導入は料金所周辺の渋滞の解消及び環境の改善等の様々な目的の達成に資する施策であると考えているところ、ETC利用者に特化した多様な料金施策は、ETCの普及の促進を図るために実施することとされているものであり、有料道路の料金施策として適切なものと考えている。
 現在ETCが利用できない自動二輪車については、二輪車用のETC車載器の開発が進められており、国土交通省においては、ETC利用時の安全性の検証など、自動二輪車へのETCの導入に向けた実験及び検討を実施しているところであり、早期の実用化に向けて努力しているところである。また、ETCは料金を後払いとするシステムであることから、ETCカードの発行に当たっては、その支払の確実性を担保するための審査が行われているものである。
 これらのことから、御指摘は当たらないと考えている。

十一について

 首都高速道路、東京外かく環状道路などの都市部の有料道路においては、大量の交通を効率よく円滑に処理する必要があることから、原則として入口のみで定額の料金を徴収することとしているところ、御指摘のように都市部の有料道路において入口で通行券を発券し出口で料金を徴収する方式を採ることとすると、本線料金所等に起因する渋滞が解消されたとしても、出口で停車することによる渋滞が新たに生じることが予測され、また、出口での料金所設置のための新たな用地の確保が困難であることから、当該方式を採ることは困難であると考えている。