質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第四九号

国民年金保険料の納付状況及び収納対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年七月二十五日

山下 栄一   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   国民年金保険料の納付状況及び収納対策に関する質問主意書

 社会保険庁は本年七月二十四日、社会保障審議会年金部会に対し、「平成十四年度の国民年金の加入・納付状況」等を提出し、平成十四年度の国民年金保険料の納付率が昭和三十六年に国民年金制度が発足して以来、最悪の六十二・八パーセントになったことを明らかにした。また、未加入者などを含めると、国民年金の第一号被保険者となるべき適用対象者の約四割が保険料を納めていないことも明らかになっており、国民年金制度の空洞化が深刻な状況に至っていることが判明した。
 現行の国民年金財政は賦課方式で運用されており、現在の国民年金受給者の年金給付は、その年に納付される国民年金の保険料等によって賄われている。したがって、国民年金の空洞化による影響は、未加入者・未納者が将来、無年金者若しくは低額の年金受給者になるだけではないのである。国民年金の空洞化は、現在の厚生年金、共済組合の加入者を含む全国民年金加入者の保険料負担で支えられている基礎年金の収支を悪化させることから、保険料負担のしわ寄せを国民年金保険料の完納者や源泉徴収等によって納付を拒めない者等に押し付ける結果となっている。このままでは、社会的な不公平感の強まりとともに公的年金制度の根幹が揺るぎかねず、「年金崩壊」といった事態を招くおそれがあると思われる。
 そこで、公的年金制度に対する信頼を回復するため、政府に対し、国民年金保険料の納付状況に関して一層の説明を求めるとともに、効果的な収納対策の確立を促すため、以下の諸点について質問する。

一 国民年金保険料の納付状況について

1 国民年金保険料の納付率は、当該年度の保険料として納付すべき総月数に対して実際に納付された月数の割合で示されていると承知している。そこで、過去五年間における、納付すべき保険料、実際に納付された保険料それぞれの総額とその差額を各年度ごとに明らかにされたい。
2 国民年金保険料の納付率は、保険料が免除される低所得者等を除いて算出されていると承知している。そこで、現在の、法定免除者の人数とその保険料免除総額、住民税非課税世帯であって申請により保険料の全額が免除されている者の人数とその保険料免除総額、天災・失業等によって特例で保険料の全額が免除されている者の人数とその保険料免除総額を、それぞれ明らかにされたい。
3 平成十三年公的年金加入状況等調査結果によると、国民年金第一号被保険者として適用されるべき者であって、いまだ適用されていない未加入者が六十三万五千人いることが明らかとなっている。これらの者が未加入であることによる国民年金の歳入不足、すなわち、これらの者がすべて加入し、保険料を全額納付すると、その額は年間でいくらか。

二 国民年金保険料の納付率低下の要因と今後の影響について

1 国民年金保険料の納付率低下の要因として、若年層におけるフリーターの増加が背景にあるとも考えられるが、政府は、若年層の雇用情勢の悪化と国民年金保険料の未納問題との関係をどのように認識しているのか。
2 国民年金保険料の徴収事務が平成十四年四月から市区町村から国に移管されたことに伴い、国民年金保険料の納付率が急激に低下したとの指摘もある。政府は、その影響について、どのように分析しているか。
3 国民年金保険料の納付率の低下について、その他の要因としてはどのようなものが考えられるのか。的確な分析とともに、わかりやすく説明されたい。
4 国民年金保険料の納付率は、基礎年金拠出金制度を通じて、厚生年金等の保険料に影響を与えることになる。また、国民年金保険料の納付率が低下すると、今後の厚生年金等の保険料や給付水準の見通しにも影響を与えることになると考えられる。厚生労働省が平成十四年十二月に公表した「年金改革の骨格に関する方向性と論点」において、給付と負担の見直しに関する方式の整理とその試算結果が示されているが、試算に関する諸前提には国民年金保険料の納付率が示されていないため、この試算が前提としている国民年金保険料の納付率を明らかにされたい。
5 平成十四年度の国民年金保険料の納付率を前提とすると、「年金改革の骨格に関する方向性と論点」において示された試算結果はどのようになるのか。

三 国民年金保険料の収納対策について

1 平成十四年度において、未加入者、未納者に対して、どのような対策を実施したのかを明らかにされたい。
2 国民年金の収納対策について、平成十五年度以降、どのような強化策を講じようとしているのか、具体的に説明されたい。

四 国民年金保険料の口座振替について

1 国民年金の保険料が納付しやすいよう、口座振替の利用が推奨されているが、直近の利用者数と被保険者に占める利用者の口座振替率、及びこれまでの推移をそれぞれ明らかにされたい。
2 平成十四年四月から社会保険庁が国民年金の保険料を徴収しているが、口座振替の利用者に対しては、振替のたびに領収書が発行されている。領収書の発行に伴う郵送料等の年間経費を明らかにされたい。
3 市区町村が国民年金の保険料を徴収していた平成十四年三月までは、領収書の発行方法は市区町村によって異なっていたと聞く。また、口座振替を利用した固定資産税等の支払についても、必ずしも振替ごとに領収書を発行しているわけではない。そこで、国民年金保険料の口座振替に係る領収書の発行についても、原則年一回として、その合理化を図るべきであると考えるがどうか。また、仮に年一回の発行にした場合に節約される経費は年間いくらぐらいと見込まれるのかを明らかにされたい。

五 社会保険料の控除について

1 厚生労働省は税制改正において、国民年金保険料の社会保険料控除の手続について、納付証明書類の添付等を義務付けること等を検討・要望するとしているが、現在、国民年金保険料の社会保険料控除の手続に際して、納付を証明する必要がないというのは事実か。
2 国民年金保険料の未納者に対する社会保険料控除の実態を明らかにされたい。

  右質問する。