質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第四〇号

水源涵養保安林に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年七月一日

平野 貞夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   水源涵養保安林に関する再質問主意書

 平成十五年四月十七日に提出した「水源涵養保安林に関する質問主意書」に対する答弁書の内容が不十分であるので再度質問する。

一、答弁書「三について」に関して、「森林の面積は、保安林の指定の要件とはなっていない」とあるが、保安林を指定するに当たっては、面積、地形、植生、降雨量などの基本条件を事前に検討することが必要不可欠である。実際の面積が、指定面積の三分の一しかなかったとしたら、保安林の機能も三分の一しかないと考えるのが順当であろう。そうした場合、不足分を補うため代替地を指定することが、保安林行政の原則と考えるが、どうか。また、面積が指定の三分の一しかなくても保水力の点で問題がないのであれば、当初の指定計画で、必要以上に広い面積を指定していたことになるが、そうみなしてもよいのか。

二、答弁書「四から六までについて」に関して、当方が入手した財団法人冨士霊園(以下「財団」という。)、静岡県及び小山町の打合せ記録などによれば、保安林に指定された静岡県駿東郡小山町大御神字内山八八〇番地他の森林の面積が、約八万平方メートル減じられた経緯は、以下のようなものである。

1 財団は、当該地を、昭和四十九年から五十年にかけて造成し、墓所として現在も販売している。
2 昭和六十年五月及び同年七月、財団が保安林を違法造成したのではないかとの疑いを持った静岡県東部農林事務所の飯田係長と栗田係官が、現地を調査した。
3 その結果、違反を確信した飯田係長と栗田係官は、①保安林に指定された八八〇番地の境界を変更し、八八〇番地の面積を減じること、②地主に依頼し、八八〇番地の境界は、もともと変更後の場所にあったことを証明してもらうこと、以上二点の隠蔽工作を指示し、③それを証明する地主の文書と承認書を速やかに作成、提出するよう求めた。
 同年八月五日に飯田係長から財団に対して、「国土調査、または赤道の整備の時に処理する以外に方法がないので、私からも小山町の林君に国土調査、または赤道の整備を急ぐように話をしておくからそのことを財団からも小山町にお願いするように」と指示がなされた。
4 平成七年から、財団が小山町の依頼で「赤道の整備」を始めた。平成九年三月二十二日の財団と小山町の合同会議(財団側から勝又常務理事、岩田所長、田代所長代理、梶次長の四人、小山町からは当時の梶繁美都市整備課長が出席)の記録によれば、昭和六十年の静岡県東部農林事務所、飯田係長の筋書に基づき、「七区八号地(上部)道路位置確定について(含む保安林)基本的な考え方」として、現況に合わせて公図を訂正することを基本方針とした上で、三つの(注)と二つの(※)が列記されている。
 (注)一、冒頭から保安林内の造成処理として持ちかけると、全く方策がなく、保安林の機能に戻すことが絶対条件になる。
 (注)二、赤道用途廃止整理については町当局より以前から行政指導が有り、此の度、八八〇番地及び八七九-一番地の実測を実施し道路位置の確定をする。その他区域については随時実施していく。・・・・という回答をする。
 (注)三、保安林内道路については現況位置と何らかわらず、造成等で形質変更はしていない。・・・・と言う事で押し通す。
 (※)一、処理上での問題点 イ、地権者全員の同意が得られるか? ロ、登記官の承認が得られるか? ハ、東部農林事務所が承認するか?
 (※)二、町当局の関係課長、係長が好意的に協議して下さる事になった。
 また、平成九年七月四日の「赤道用途廃止整理の確認(打合せ事項)」なる内部打合せ記録(財団側から岩田所長と池谷氏(元静岡県職員)、小山町からは梶都市整備課長、その他に東静測量設計(株)の鈴木氏が出席)では、道路位置の確認について、「赤道用途廃止整理については、町当局より以前から行政指導があり、この度、八八〇番地及び八七九-一番地の実測を実施し道路位置を確定する。(注)この方向で町担当、県担当、登記官は進めている。従って、間違っても保安林云々を出さないようにする。」という記述もある。
5 平成八年六月に三菱地所(株)土木部、渡辺参事(現在、冨士霊園勤務)と大成建設(株)御殿場事務所、八木所長作成の「財団法人冨士霊園現状に於ける問題点」の中で報告された地域森林計画区域内に墓所を造成したことの隠蔽工作についても、平成九年三月二十二日の財団と小山町の会議で次のような協議がなされている。
 ◆森林(不正)開発について(十一区八号、七区五号、団体家族墓所五区)
 「都市計画法、農振法については、五年に一回の見直しがある。森林法(地域森林計画区域)についても九年?(確認)に一回の見直しが行われるので当該線引き見直しの折りに除外する事を約束し、近々小山町役場において、関係課長と係長を交えて協議をする。その後、財団関係との会合を設けるように段取る事にする。」
 こうした経緯を林野庁は承知しているのか。

三、当方の質問主意書の保水力の質問「六」について全く触れられていない。したがって、改めて次の点に対して答弁されたい。

1 保安林の機能を維持する条件に面積は不可欠のものではないのか。
2 面積が十二万八千四百六十九平方メートルから四万八千八百八十九平方メートルに「正規」の手続によって更正されたことを確認したとのことだが、減じた約八万平方メートル分の保水力は、どのように補完したのか。

四、不動産登記法によれば、登記官は登記上必要な調査を行う権限を有している。本件の場合、更正は、錯誤によるものとされているが、一般常識としても、その範ちゅうを逸脱しており、明らかに土地に関する調査が行われるべきだと考えられる。
 この件に関して、以下の点を調査、報告されたい。
1 当該登記官はこの更正に対して、通常の登記業務として取り扱うべきだと判断したのか。
2 当該登記官は、当該土地に関する調査を行ったのか。
3 十万平方メートルを超える土地に関して、六割以上減の更正の前例があれば報告されたい。また、錯誤による同規模の更正があれば、併せて報告されたい。

  右質問する。