質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第三三号

「心神喪失等医療観察法案」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年六月十日

平野 貞夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   「心神喪失等医療観察法案」に関する質問主意書

 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(以下「本法案」という。)については、第百五十四回国会から第百五十六回国会までの国会審議を踏まえてもなお、現在の精神医療の問題と本法案の実施・運用にかかわる疑問が残されている。
 審議において、坂口厚生労働大臣始め政府参考人からも第百五十四回国会から第百五十六回国会を通じて、しばしば精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の下における日本の精神医療が長期入院に傾きがちなことや地域医療が不十分であることの認識が示された。
 森山法務大臣は第百五十四回国会で矯正施設における精神医療の改善を図る旨答弁した。
 また、本制度の運用については第百五十五回国会で両大臣、修正案提出者及び政府参考人からは不明瞭な認識しか示されなかった。
 したがって以上の事項に関連する質問を行うものである。
 以下すべての質問に関して、直接のデータを示せない場合には参照できる資料を示されたい。

一 平成九年四月一日から平成十四年三月末日まで(以下「過去五年間」という。)の各年次の、本法案にいう対象者の定義を満たす精神障害者(以下「該当者」という。)の罪名別・障害別内訳を明らかにされたい。

二 該当者中、本法案にいう対象行為を平成十四年三月末日までに再び行い対象者の定義に当てはまった実人数とその罪名別・障害別内訳を明らかにされたい。

三 過去五年間中、措置入院を解除した者のうち、他の入院形態による入院継続となったものの人数を明らかにされたい。

四 平成十三年六月三十日における都道府県別・入院期間別の措置入院患者数及び全入院患者数を明らかにされたい。

五 平成十五年度精神保健福祉関連予算のうち社会的入院解消のための退院促進支援事業によって退院可能を見込む精神障害者の人数を明らかにされたい。

六 対象者のうち本法案の下で合議体の審判を受けての指定入院医療機関ないし指定通院医療機関での処遇を受けないものは、措置入院を含む精神保健福祉法の医療で処遇すると考えられるか。
 そうしたものは対象者中、上田参考人の第百五十五回国会での答弁から四割程度存在し得るか。

七 対象者で本法案に基づく処遇を終了したものは引き続いて措置入院を含む精神保健福祉法における医療を受けることがあり得るか。

八 本法案において、入院している対象者は、精神保健福祉法と同等に、通信面会の制限、行動の制限を行われる場合、告知されるか。
 本人の代理人ないし代理人たろうとする弁護士又は人権を擁護する行政機関の職員との通信面会は制限なく保障されるか。

九 本法案第三十七条等の鑑定において、対象者の性格の考慮には、反社会性人格障害ないし精神病質の存在が含まれるか。

十 対象者に本法案の医療による改善ないし医療の可能性がない場合、本法案以外での処遇があり得るか。

十一 司法関与を要するほどの本法案のあり得べき「人身の自由に関する制約・干渉」の性質にかんがみ、合議体での審判を受けた数・審判の結果・本法案の下、処遇を受けることになった対象者数の起訴前簡易鑑定及び本鑑定の結果別・罪名別・障害名別実数、指定入院医療機関での入院期間の分布、指定通院医療機関での通院医療期間の分布、処遇終了までの期間の分布、処遇終了後の処遇の在り方とその分布、処遇中及び処遇終了後の対象行為の発生、以上の項目の統計的なデータを、白書に準じる方法で公開する必要があると考えるが、政府の認識はどうか。

十二 現在及び過去五年間、矯正施設において精神障害者として分類収容されているものの各矯正施設・罪刑・障害別実数と全国累計、各矯正施設におけるそれらのものの処遇における独居房の使用数と仮釈放を認められた精神障害者の実数とその全国累計、精神医療の提供体制(各矯正施設精神科医勤務者の実数(常勤・非常勤別)と全国累計)、刑期満了時における分類級別実数と精神保健福祉法第二十六条による通報の実数を明らかにされたい。

  右質問する。