質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第三二号

住民基本台帳ネットワークの運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年六月三日

櫻井 充   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   住民基本台帳ネットワークの運用に関する質問主意書

 住民基本台帳ネットワーク(以下「住基ネット」という。)が稼働して九か月になる。長野県本人確認情報保護審議会(以下「審議会」という。)の報告によれば、国会審議の際の総務大臣の答弁とは異なった実態が明らかになった。
 そこで、以下質問する。

一 審議会自ら行ったアンケートでは、長野県下一二〇市町村中一一二の自治体から回答があったが、担当職員の九一%が、住基ネットは「自治体の負担が大きい割にメリットが少ない」と答えている。

1 このシステムのメリットは何か。
2 住基ネットの担当職員がこのような回答をしていることをどのように理解するか。
3 住基ネットについての自治体の理解が足りないということか。全国の市町村が要望して作られたネットワークであるということであるならば、長野県だけとは言え、これだけ多くの担当職員が住基ネットを積極的に評価しないのはおかしいのではないか。他の都道府県の市町村の担当職員と比べて、長野県の担当職員に特に問題があるということか。あるのだとすれば、どういう問題があるのか。

二 総務大臣の国会での発言は、現状を把握した上でのものなのかはっきりしないことが多い。

1 総務大臣は「住基ネットのセキュリティーは万全だ」と言ってきたが、どのような意味か。理論上の話なのか、現実が万全であるという意味か。
2 総務大臣は「ファイアウォールがあるから万全だ」という言い方をよくしているが、ここでいうファイアウォールとはどういうものか。それで万全ということは、ウィルスやワームなどが侵入されるコンピューターはファイアウォールが設けられていないということか。
3 住基ネットの現状が万全になっているということであるとすれば、いつ、だれが、どの程度の間隔で、どのような調査を行っているのか。すべての都道府県・市町村の住基ネットの設備を確認しているということか。もしそのような調査を行っているのであれば、結果を明らかにされたい。
4 長野県の一二〇の自治体についてはどのような調査をしたのか。

三 一のアンケートでは、五六%が「本人確認情報の漏洩などプライバシーが心配」と答えているにもかかわらず、その後の審議会の調査で、実際長野県の二七の自治体で住基ネットとインターネットが物理的に接続されていることが明らかになった。このような状態では、自治体内外からインターネット経由でアクセスが殺到して情報が流出するおそれがある。

1 政府はこの事実を知っているか。知っているのであれば、いつから知っていて、どのような対応をしてきたのか。何ら対応せず放置してきたならば、その理由を述べられたい。
2 長野県では、一か月前に二七自治体の実情が分かり、改善策として、住基ネットへの接続時間を送信のときだけ行うという案を地方自治情報センターに相談したところ、二十四時間接続にする旨言われたとのことであるが、政府はこのことを承知しているか。承知しているのであれば、当センターの対応でよいと考えるか。
3 二七自治体が現在でもインターネットに接続したままになっている理由を知っているか。その理由は何か。
4 総務大臣は、平成十四年十一月十九日の参議院総務委員会と平成十五年二月十三日の衆議院予算委員会で、住基ネットは閉じたネットワークであり、他のネットと接続は一切ない旨の答弁をしているが、これは実態とは大きく異なっている。総務大臣は十分な調査も行わず虚偽の答弁をしているのではないか。
5 住基ネットがインターネットと接続されているのに、なぜセキュリティーは万全と言えるのか。
6 全国のどのくらいの自治体で、住基ネットとインターネットが接続されているのか。そのような実状を把握するために調査を行ったことがあるのか。あるのであれば、いつどのような調査を行ったのか。また、住基ネットとインターネットは接続していないとの認識であるならば、その根拠は何か。
7 このようにセキュリティーの面で問題が発覚したわけであり、安全が確認されるまで住基ネットの稼働を停止すべきではないか。

四 このような重大な事態にかんがみ、審議会は県に対し二七自治体に適切な処理をするよう依頼し、県は住基ネットとインターネットの両系統を切り離すよう業者に依頼した。

1 役所・役場内のネットワークだけではなく、支所、支庁舎との接続の関係で、想像以上の改造とそれに係るコストが必要になるというが、政府はこのことを承知しているか。
2 このような自治体はどういう対応をすればよいのか。このまま接続していてよいのか。
3 住基ネットとインターネットが接続している全国の自治体のシステムを改造するとすれば、コストは総額でどの程度となるのか。また、そのコストをだれが負担するのか。

五 セキュリティーに問題があるにもかかわらず、当初九三に限って使用されると説明された行政事務の数は二六四にも広がっている。本年一月二十一日、政府は自治行政局市町村課長名の事務連絡によって、地方自治体にもっと積極的に住基ネットを使用せよと働き掛けている。地方自治体ではデメリットの方が多いと言っているにもかかわらず、なぜこのように住基ネットを積極的に使用させようとするのか。

六 住基ネットとインターネットの分離がされていない自治体が住基ネットに参加していなければならないとすると、これらの自治体がインターネット接続していることで問題が起こった場合、これらの自治体は被害者に対して損害賠償責任などの法的責任を負うことになるのか。あるいは、地方自治情報センターか国が責任を負うのか。責任を負わなくてよいとすると、被害者救済はどうするのか。

七 住基ネットは、「自治事務」と位置付けられているにもかかわらず、実際は、国及び国の意向を受けた地方自治情報センターの指示どおりに実施することを強く期待されており、これに対し多くの自治体が反発をしている。

1 結局、住基ネットは、国による個人情報活用にあるのではないか。
2 長野県のような実情を見ると、住基ネット制度の方向性としては、住基ネットの管理責任の重さからして、住基ネットへの参加について、責任を負いきれる自信のない自治体は参加しなくてもよいとの選択肢を含めた決定権限を自治体に与えるべきではないか。

  右質問する。