質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第二五号

別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年四月二十三日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する再質問主意書

 本年三月十四日に受領した「別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する質問に対する答弁書」(以下「答弁書」という。)について、地域の実情と自然環境について判然としない点がある。特に、イトウの生態等について、当方の理解と隔たりがある。
 したがって、次の事項について再質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、砂防ダム建設事業(以下「本件事業」という。)は、別寒辺牛湿原のラムサール条約登録湿地の要件に影響を及ぼすことが危惧される。政府は、同条約を軽視しているのではないか。また、本件事業によって、同条約登録湿地の要件が失われた場合、どのような責任を取るのか。

二、答弁書一及び二について

1 本件事業について「厚岸町に委託している」としているが、事業執行に責任を有する者はだれか。また、漁業被害が出た場合、補償責任を負う者はだれか。
2 イトウは「保護のため十分な配慮がなされるべき種である」としているが、「保護のため」になされるべき「十分な配慮」とは、本件事業において具体的に何を指しているのか。
3 イトウの「繁殖及び生息にできる限り影響を及ぼすことのない方策について検討」を行ったとしている。政府は、本件事業に関連して、イトウの繁殖及び生息にどのような条件が必要であると認識しているのか、イトウの産卵場の条件及びイトウの遡上能力についての評価を示した上で、明らかにされたい。また、イトウの繁殖及び生息に必要な条件を満たすため、比較検討した方策も併せて示されたい。
4 イトウの「繁殖及び生息にできる限り影響を及ぼすことのない方策について検討」した結果、「有効と考えられる附帯施設として魚道を設置した」としている。魚道の設置をイトウなどの「繁殖及び生息にできる限り影響を及ぼすことのない方策」と認めた科学的根拠を示されたい。
5 魚道の設置をイトウの「繁殖及び生息にできる限り影響を及ぼすことのない方策」と認めて建設を終えたにもかかわらず、今後、「有識者から意見の聴取等を行う」としている。「有識者から意見の聴取等」を建設前に行わなかった理由、並びに「意見の聴取等」を建設後に行わなければならなくなった理由をそれぞれ示されたい。
6 イトウなどサケ科魚類は、河床を掘り起こし、そこに卵を産み、上部に礫をかぶせて産卵する。このため、新鮮できれいな水が常時流れ込み、卵の呼吸と生育を助ける。しかし、札幌防衛施設局は、砂防ダム上流部においてならば、川にシルト質を含む土砂の流入することを容認していると思われる。川にシルト質を含む土砂が流入する場合、イトウの繁殖が妨げられ、種を保護することは困難と思われるが、どうか。
7 厚岸町の漁民や住民などが、別寒辺牛川流域及び支流域の山林において、厚岸沿岸の良好な漁場を保護・育成するため、植林活動を展開していると聞く。一方、固床工砂防ダムによって、山林からの有効な栄養分の供給を断たれ、河川及び河口沿岸の漁業資源に悪影響を与えることは、広く知られている。よって、本件事業により、漁民などの努力が無為となり、厚岸沿岸の漁業資源に悪影響を及ぼすことが懸念される。本件事業により厚岸沿岸の漁業に悪影響が生じた場合、政府は永久にこれを補償するのか。

三、答弁書「三について」の「汚濁」の意味が必ずしも明らかではないが、浮揚黒土(ウォッシュロード)を意味するとすれば、この流出を食い止めるために有効と考える方法をすべて示されたい。また、政府が着弾地などから流出すると想定している土砂の流径と本件事業で防止できる土砂の流径をそれぞれ比較した上で、本件事業が浮揚黒土の流出防止に有効であることを科学的に証明されたい。

四、答弁書「四について」によると、「合衆国軍隊による沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃訓練を本土に移転して行う訓練が開始される以前からも、本件事業と同様の事業を行ってきた」とある。「同様の事業」とは、具体的に何を指すのか。事業の年月日、場所、概要について明らかにされたい。

五、答弁書「五について」によると、「土砂の流出防止対策を講ずることは困難である」としているが、土砂の流出状況について、裸地化している場所の範囲、分布、河道との位置関係、降雨状況、実際に生じた土砂流出量など、具体的に示されたい。

六、厚岸漁業協同組合が、厚岸町などに対し、本件事業の環境影響などの再調査と凍結を要求していると聞く。本件事業を「厚岸湖及び厚岸湾の漁業資源確保等に資するもの」と規定する以上、漁業協同組合の要求を受け入れ、本件事業について環境影響などの再調査と凍結をすべきではないか。

  右質問する。