質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

アメリカ合衆国のイラク攻撃と使用する兵器に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年四月二日

櫻井 充   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   アメリカ合衆国のイラク攻撃と使用する兵器に関する質問主意書

 三月二十日、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)は、国連決議も無く、拙速な攻撃に反対する多数の国があるにもかかわらず、イギリス軍とともにイラク攻撃を開始した。査察を継続するなり、現地に特使を派遣して直接フセイン大統領と対話をするなり、ほかにも方法はあったはずであるが、米国は最大限の努力を怠り攻撃を始めたとしか思えない。この戦争で最も被害を受けるのは無辜の市民である。
 そこで、以下質問する。

一 米国はなるべく民間の犠牲者を出さない方針を表明しているにもかかわらず、残虐性が高かったり、広範に人命・健康に大きな被害をもたらす兵器を戦場で使用している。

1 米軍が使用している劣化ウラン弾から発せられる放射能のイラク国民への被害をどのように認識しているのか。世界で唯一の被爆国で放射能の恐ろしさを知っている日本として、劣化ウラン弾の使用を認めるのか。認めるのであればその根拠を示されたい。
2 米軍が使用しているクラスター爆弾は、一つの爆弾から多数の小爆弾が飛び散り、そのうちの何割かが不発弾となり、地雷のように機能するとされている。一体何割の小爆弾が不発弾となるのか。
3 クラスター爆弾の不発の小爆弾と地雷とは機能としてどのような違いがあるのか。
4 国際的な地雷廃絶の流れの中で、批判をかわすために、米軍がクラスター爆弾を事実上の対人地雷として使用している可能性も指摘されているが、「対人地雷禁止条約」に参加している政府としてこれを認めてよいのか。なぜ米国にクラスター爆弾の使用をやめるよう要請しないのか。
5 小泉親司議員の「クラスター爆弾に関する質問主意書」に対する平成十五年三月七日の答弁書「一の3の①について」の中で、特定通常兵器使用禁止制限条約の「締約国会合及び爆発性戦争残存物に関する政府専門家グループ会合において、爆発性戦争残存物が引き起こす人道的問題に早急に取り組まなければならない旨主張した。」としているが、もし、日本政府が米軍によるクラスター爆弾の使用を是認するのであれば、この答弁と矛盾するのではないか。
6 なぜ日本は米国に、「対人地雷禁止条約」へ参加するよう様々な方法で働き掛けを行わないのか。

二 米国は冷戦後唯一の超大国として、強大な軍事力を背景に、自分たちで考える「正義」を基準に物事の善悪を判断しようとしている。また、その際、統一的で一貫した基準を適用するのではなく、物事を自国に都合よく解釈し、そうした価値観を他国に押し付けている。その一方で、国際協調が必要な場面で米国が協調しないために進捗しない話合いが国際会議の場面で多々見られる。

1 その最たる例が、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准拒否である。条約発効要件国である米国が参加しなければ、国際的な核兵器の削減の流れは止まってしまうが、日本政府は米国のこうした決定を認めるのか。
2 大量破壊兵器を一番多く保有している国はどこか。その国では大量破壊兵器の破棄は進んでいるのか。進んでいないとすれば、日本政府はなぜ破棄するよう勧告しないのか。
3 イラクの大量破壊兵器開発の阻止がイラク攻撃の大義名分だとしたら、なぜ、現在までに核保有を行った国、あるいは行おうとした国に対して米国は攻撃を行わなかったのか。また、その際日本が執った態度と、今回のイラクへの攻撃支持は矛盾しているのではないか。
4 米国が国際社会に協調しないその他の例として、京都議定書への不参加が挙げられる。このように、米国は、国際的な問題に協力する姿勢を見せないことが多い一方、今回のイラク攻撃では他国に協力を求めているが、このような身勝手な態度をどのように考えるか。

  右質問する。