質問主意書

第156回国会(常会)

質問主意書


質問第五号

別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年二月十日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   別寒辺牛川のイトウと砂防ダムに関する質問主意書

 北海道釧路管内厚岸町を流れる別寒辺牛川は、ラムサール条約登録湿地である別寒辺牛湿原・厚岸湖を抜ける準用河川である。上流部が陸上自衛隊矢臼別演習場内を流れることから開発を免れ、レッドデータブック絶滅危惧IB類のイトウ(サケ科)が生息するなど、原始的な姿を残した大変に貴重な河川である。
 この別寒辺牛川において、防衛施設庁札幌防衛施設局は、米軍演習受入れの環境整備の一環として、砂防ダム建設事業(以下「当該事業」という。)を進め、既に一基の提体を完成させている。しかし、当該事業は、別寒辺牛川の貴重な自然環境に甚大な影響を与え、取り返しのつかない事態に発展するおそれがある。
 以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、政府は、イトウの保護について、どう認識しているのか。

二、別寒辺牛川の自然環境について

1 イトウは、同川の中下流部に生息し、上流部で繁殖すると聞く。当該事業によって、生活圏が分断され、繁殖及び生息が妨げられるのではないか。
2 当該事業は、同川下流部のラムサール登録湿地流域の河床低下を招き、ひいては河岸崩壊や湿地の乾燥化にまで至るおそれがあると聞くが、どうか。
3 当該事業において、環境アセスメントが実施されていないと聞くが、事実か。もし行われていないのであれば、同川が貴重な自然環境を有することを踏まえて、その理由を示されたい。

三、厚岸町周辺地域の基幹産業は、別寒辺牛川河口部を拠点とする水産業である。よって、当該事業が河口部の環境を変化させ、水産業に影響を与えることが懸念されているが、どうか。

四、陸上自衛隊矢臼別演習場は、陸上自衛隊によって約三十年にわたり実弾演習が行われ、現在まで土砂流出の被害は報告されていないと聞く。だが、当該事業は、米軍の実弾演習による土砂流出を理由として進められている。なぜ、陸上自衛隊の実弾演習では土砂流出がなく、米軍の実弾演習では土砂流出が起こるのか。合理的な理由を示されたい。

五、札幌防衛施設局は、土砂流出予想箇所に対し、原因対策を実施していないと聞くが、事実か。事実であれば、原因対策を実施せずに当該事業を行った理由を示されたい。

六、札幌防衛施設局は、環境保護団体等に対し、当該事業について砂防法も含めて一切の法令が及ばないと説明したと聞く。法治国家であるわが国において、一切の法令に根拠を置かず、自然河川に砂防施設を建設することができるのか。

七、別寒辺牛川の自然環境の重要性にかんがみ、当該事業を中止し、既に建設した砂防ダムについても撤去するべきだと考えるが、どうか。

  右質問する。