質問主意書

第155回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質一五五第一二号
  平成十五年一月二十八日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員櫻井充君提出量販店における公共性への配慮の欠如に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出量販店における公共性への配慮の欠如に関する質問に対する答弁書

一について

 平成三年から平成十一年にかけてお尋ねの店舗数について、「商業統計表」によって見てみると、百貨店、総合スーパー及び食料品スーパーの合計は、一万六千九百二十二店から二万七百七十一店に増加しており、食料品専門店は、二十九万七千十五店から二十四万九千二百八十七店に減少している。

二について

 お尋ねの「予約相対」については、卸売業者と仲卸業者又は売買参加者との間においてあらかじめ締結された契約に基づいて行う売買取引を指すものと解されるが、当該売買取引のうち取引数量の把握が制度上可能である卸売市場法(昭和四十六年法律第三十五号)第三十四条の二第二項及び第三十九条第二号の規定により卸売市場の開設者が認めたものの取引数量について見てみると、平成十三年度における全国の中央卸売市場の総取引数量に占める割合は、それぞれ青果物で四パーセント、水産物で三パーセント、食肉で六パーセントである。

三について

 事業者が、どのような条件で取引するかは基本的には取引当事者間の自主的な判断にゆだねられるものであるが、量販店が、生産者、卸売業者及び仲卸業者を始めとする納入業者(以下「納入業者」という。)に対して取引上優越した地位にある場合において、その地位を利用して正常な商慣習に照らして、不当に納入業者に対して不利益となるように取引条件を設定するときには、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)に規定する不公正な取引方法(優越的地位の濫用)に該当すると考えられる。
 お尋ねの事案については、量販店と納入業者との間において、納入業者が予定数量を納入できなかった場合に量販店に対して違約金を支払う契約を締結すること自体が、直ちに独占禁止法に違反するものではないと考えるが、当該契約を締結する以上は、違約金の支払に係る基準が契約上明確になっていることが望ましいと考える。その上で、例えば、納入業者に対して取引上優越した地位にある量販店が、納入業者が納品できなかった場合に違約金を課しておきながら、一方的な都合でその売れ残りを返品したり、納品することが困難な数量を一方的に定め、納品できなかった場合に違約金を課すなどにより、正常な商慣習に照らして不当な不利益を納入業者に与えることとなる場合には、独占禁止法上問題となり得る。いずれにせよ、具体的な事案に即して個別に判断すべきものと考えている。

四について

 平成十四年一月以降、食品の偽装表示事件において農林水産省が生産者等に対して立入検査等を実施しているが、天候等により生産量があらかじめ締結された契約における取引数量に満たない場合において違約金を回避しようとすることが偽装表示の主たる原因となっているとの確証は得られていない。

五について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、卸売市場における売買取引は、せり売若しくは入札又は相対取引により行われ、卸売市場ごとに卸売市場の開設者が、卸売業者、仲卸業者、食品専門小売業者を始めとする売買参加者等の利害関係者の意見を聴いて、業務規程において各取引の方法別の割合等を品目ごとに設定しており、売買参加者である食品専門小売業者の意向はその中で反映されていると考えている。
 また、卸売市場法第四十六条の二第二項の規定により、卸売業者は売買取引の方法ごとに毎日の卸売の数量及び価格を公表しなければならないことから、一般的にせり売又は入札による価格と相対取引による価格が著しく乖離することは想定しにくい。

六について

 中心市街地等の小売店舗は、これまでも身近な買物の場の提供に加え、地域住民の交流の場の提供等地域コミュニティの中核として、重要な役割を果たしているものと認識している。さらに、高齢化社会が進む中、きめ細かなサービスや住居近隣での買物を志向する高齢者等の地域の顧客ニーズが高まっており、このようなニーズに適合した買物の場の提供や高齢者の交流の場の提供といった観点からも、歩いて買物に行ける近所の小規模小売店舗の果たす役割はますます重要と考えている。
 他方、小規模小売店舗の減少の背景としては、近年の消費不況の中、価格競争の激化や消費者ニーズの多様化・高度化、大型店の出店の増加等の点が指摘されているほか、経営者が高齢化する一方で後継者がいないといった事情も大きく影響していると考えられる。
 このため、政府としては、中心市街地活性化対策等の小売商業対策を積極的に講じることにより、意欲ある中小小売商業や商店街の支援に努めてまいる考えである。

七について

 大型店が立地できる地域の設定については、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)に基づくゾーニング手法等により対応することとしており、また、同法等により立地可能である地域に大型店が出店するに際しては、大型店の周辺地域における交通問題や騒音問題といった生活環境の問題について大規模小売店舗立地法(平成十年法律第九十一号)に基づき対応することとしている。これらの法においては、それぞれの観点から住民等の意見を聴取する手続が定められている。
 一方、大型店の退店については、当該店舗の経営上の不都合による場合が多く、また、事前の予測可能性にも限界があることから、企業の自主的な判断にゆだねられるべきものであり、政府による一律の規制や指導にはなじまないものと考える。