質問主意書

第155回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一五五第一号
  平成十四年十一月二十九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員櫻井充君提出ゴルフ場の化学物質汚染に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出ゴルフ場の化学物質汚染に関する質問に対する答弁書

一について

 環境省(旧環境庁)においては、ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止について都道府県がゴルフ場を適切に指導することができるよう「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」(平成二年五月二十四日付け環水土第七十七号環境庁水質保全局長通知。以下「指導指針」という。)を策定し、都道府県に対し通知しているところである。
 指導指針においては、都道府県は、ゴルフ場から排出される水に含まれる農薬濃度の調査を行い、農薬濃度が指導指針に定める指針値を超えた場合には、ゴルフ場関係者に対し、農薬の使用量の削減等について指導すること等が定められており、平成十三年度においては、千五百二十六か所のゴルフ場を対象に当該調査が行われたが、当該指針値を超えた事例は無かったところである。
 なお、指導指針に定められている農薬及び当該農薬についての調査が行われたゴルフ場数は、別表のとおりである。

二から四までについて

 お尋ねの地盤凝固剤は、地盤の透水性を減少させ又は地盤の強度を増加させるために地盤に注入する材料(以下「地盤注入材」という。)を指すものと考えられるが、地盤注入材についての化学物質の使用状況及びゴルフ場の造成又は維持における具体的な使用状況については、把握していない。
 また、お尋ねの土地改良剤は、地力増進法(昭和五十九年法律第三十四号)第十一条第一項に規定する植物の栽培に資するため土壌の性質に変化をもたらすことを目的として土地に施される土壌改良資材を指すものと考えられるが、化学物質である土壌改良資材としては、一般に、ポリエチレンイミン系資材(アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩との複合体をいう。以下同じ。)が使用されていると承知しているものの、ゴルフ場の造成又は維持における具体的な使用状況については、把握していない。ポリエチレンイミン系資材については、人体への直接の暴露により、目、のど等の粘膜又は皮膚に対し、刺激を与える性質があることを承知しているが、土壌改良資材として使用されたものについては、直ちに粘土粒子と結合するため、人体が当該物質に直接暴露されることは考えられない。

五について

 地盤注入材及び土壌改良資材以外にゴルフ場で使用される化学物質としては農薬及び肥料(化学的方法により生産されるものに限る。以下同じ。)が考えられるが、それらが使用されているゴルフ場の数については、把握していない。

六について

 農薬については、農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)に基づき、製造業者又は輸入業者は、その製造し若しくは加工し又は輸入した農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければこれを販売してはならないこととしており、農薬の使用により河川等の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるときは、当該農薬の登録を保留するとともに、農薬の安全かつ適正な使用を確保するため必要があると認めるときは、その使用の方法等について農薬を使用する者が遵守することが望ましい基準を定める等の措置を講じているところである。
 肥料については、肥料取締法(昭和二十五年法律第百二十七号)に基づき、肥料を業として生産し又は輸入しようとする者は、農林水産大臣の登録を受けなければならないこととしており、含有を許される有害成分の最大量等についての公定規格を定め、公定規格に適合しない肥料の登録は行わない等の措置を講じているところである。
 化学物質一般については、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)に基づき、新規の化学物質の製造又は輸入に際し、事前にその化学物質の性状を審査するとともに、難分解性の性状を有し、人の健康を損なうおそれがある化学物質については、当該化学物質が有する性状等に応じ、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質又は指定化学物質に指定し、当該化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制措置を講じているところである。
 水道水については、水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)に基づき、水道事業者は、水質基準に関する省令(平成四年厚生省令第六十九号)に規定する基準に適合するものを供給しなければならないこととしている。また、同省令で規定していない農薬等の化学物質についても、「水道水質に関する基準の制定について」(平成四年十二月二十一日付け衛水第二百六十四号厚生省生活衛生局水道環境部長通知)により、水道事業者等において適切な監視が行われるよう、都道府県に対し通知しているところである。
 また、都道府県からゴルフ場に対して適切な指導が行われるよう、一についてで述べたとおり、環境省において都道府県に対し指導指針を通知しているほか、農林水産省において、ゴルフ場における農薬使用の適正化について都道府県がゴルフ場を適切に指導することができるよう「ゴルフ場における農薬使用の適正化について」(平成二年七月六日付け二農蚕第三千九百四号農林水産省農蚕園芸局長通知)を策定し、都道府県に対し通知しているところである。
 政府としては、今後とも、これらの法律に基づく措置を適切に講ずるとともに、都道府県に対して必要な助言を行うことにより、ゴルフ場及びその周辺地域における化学物質による環境汚染の防止に努めてまいりたい。

別表