質問主意書

第155回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

サービス残業の実態とその根絶、雇用の拡大に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年十二月六日

井上 美代   
大沢 辰美   
富樫 練三   
西山 登紀子   
畑野 君枝   
八田 ひろ子   
宮本 岳志   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   サービス残業の実態とその根絶、雇用の拡大に関する質問主意書

 厚生労働省東京労働局は九月二十七日、大阪労働局は十一月十八日、愛知労働局は十一月二十八日に、相次いで、労働基準法第三十七条違反の企業に対して是正勧告・指導を行った結果を取りまとめ、公表した。これは、人間らしく働くルールを求める広範な労働者とその家族に歓迎され、サービス残業根絶の世論を喚起する上で極めて重要である。
 言うまでもなく、労働基準法第三十七条は、使用者が時間外、休日及び深夜に労働者を働かせた場合の割増賃金を規定したもので、現在、時間外と深夜の労働については二割五分以上、休日労働については三割五分以上の割増賃金の支払いが義務付けられている。
 ところが、不況の長期化の中で「時間外労働をさせても割増賃金を支払わない」というただ働き=サービス残業や「法三十六条の時間外労働協定もなしに残業をさせている」という無協定残業などという重大な企業犯罪が増大・蔓延している。こうした中で、過労死や過労自殺という悲惨な事例も多発している。
 このような状態が放置されれば、雇用を減少させ、失業者の一層の増大を招くことは必至であり、一刻も早く改善・根絶しなければならない。
 厚生労働省は、昨年四月六日付けで「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」との通達を出し、全国の労働基準監督署は、この通達の徹底とともに、サービス残業の是正勧告・指導を進めているが、この取組はまだ緒についたばかりであり、一層の推進・強化が求められている。
 よって、以下のとおり、質問する。

一、第一五五回国会が始まった時点では、神奈川、愛知、大阪、兵庫の各労働局は労働基準法第三十七条違反企業に対して是正を勧告・指導した結果の集計についての資料要求について「全体を集約していない」との回答であった。
 そこで、改めて、労働基準法第三十七条違反企業に対して是正を勧告・指導した結果についての全国集計を行うとともに、各都道府県別にも明らかにされたい。
 その際、勧告・指導した企業数と件数、未払い賃金額、勧告・指導に基づいて割増賃金の不足分を遡及して支払った企業数と件数、金額、未払い賃金を受け取った労働者数、サービス残業代を百万円以上支払った企業数等を業種別に、二〇〇一年と二〇〇二年について、明らかにされたい。

二、是正を勧告・指導するきっかけとなった、定期監督の回数、労働者からの申告・投書・相談、家族からの訴え等の合計数を、二〇〇一年と二〇〇二年について、都道府県別に明らかにされたい。

三、労働基準法第三十七条違反で、罰則を適用した企業数を、二〇〇一年と二〇〇二年について、都道府県別に明らかにされたい。

四、わずか四%まで落ち込んだ職場に対する監督実施率を引き上げ、増大する労働者、家族などからの申告や相談にこたえる体制を強化するため、労働基準監督官の増員が必要であるが、政府の方針を明らかにされたい。

五、サービス残業を早期に、抜本的に一掃するためには、通達による是正勧告・指導だけではなく、労働基準法改正による法的規制強化を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。