質問主意書

第155回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

陸上自衛隊立川基地の所属航空機の危険飛行に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年十二月二日

大田 昌秀   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   陸上自衛隊立川基地の所属航空機の危険飛行に関する質問主意書

 陸上自衛隊立川基地と航空自衛隊入間基地の所属航空機が両基地を離発着する際に、現在、東京都小平市の上空で交差する形となっている。防衛庁の「航空機の運航に関する訓令」第二十六条では「飛行中の航空機は、編隊飛行その他の接近が予定される飛行以外の場合においては、他の航空機と六百メートル以上の水平距離又は百五十メートル以上の垂直距離を保たなければならない」とされている。しかし、小平市上空では両基地の航空機が垂直距離で数十メートルで擦れ違う、いわばニアミスを起こしている現場を地元住民が何度も目撃しており、住民の間では墜落事故等への不安の声が出ている。
 また、両基地への自衛隊機の飛来は日によっては一日百数十回に上り、小平市が毎年定期的に行っている航空機の騒音調査では飛来航空機の騒音が平均七十ホン前後、最高八十五ホンを記録しているなど、航空機騒音にも住民から多くの苦情が出ている。そのため、小平市では平成三年三月、同十一年四月と八月、同十四年五月にそれぞれ両基地、防衛庁及び運輸省(当時)東京航空局に対して、市民の安全と飛行騒音の低減を求める要請をしている。
 自衛隊機は「航空法」や「航空法施行規則」、防衛庁の「航空機の運航に関する訓令」等を遵守し、飛行しなければならないことは言うまでもない。また、航空機の離発着、訓練飛行等による航空機騒音によって、住民の生活の安寧を脅かすことがあってはならない。しかし、小平市上空においては、法規に反する飛行の疑義もあり、飛行に関して改善が必要であると考える。
 よって、次のとおり質問する。

一、本件に関連して、栗原君子参議院議員(当時)が平成十年四月七日に提出した「市街地上空の自衛隊機飛行訓練等に関する質問主意書」で、「立川基地広報によると、当該地域における同基地及び他の陸上自衛隊基地所属機の飛行高度は海抜三百六十メートルから四百五十メートルの範囲であり、入間基地等との協定もしくは内規等により四百五十メートル以上の高度では飛行できないとしているが、そうした協定もしくは内規はどのような根拠に基づいて策定されたものであるのか。また、そうした取り決めが確定した年月日を明らかにされたい」と質問した。この点について、橋本龍太郎内閣総理大臣(当時)名の同年五月二十六日付の政府答弁書では「御指摘の内規は、防衛庁の内部規則に基づき、東部方面航空隊長が、立川飛行場に進入し又は同飛行場から出発する航空機が入間飛行場への進入を妨げることなく、安全に飛行することができるように定めているものであり、御指摘の飛行高度に関する内容は、立川飛行場の運用が開始された昭和五十七年三月一日以来適用されている」と答えている。栗原議員の質問主意書でいう「協定もしくは内規」について、その内容を明らかにされたい。

二、その「協定もしくは内規」では、前記の栗原議員の質問主意書で指摘しているとおり、立川基地所属機は「四百五十メートル以上の高度では飛行できない」となっているが、そういう内容であるとすれば、ひとつの疑問が生じる。「航空法施行規則」は第百七十四条で、「航空機の最低安全高度」を定めており、その高度は「有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの」でなければならず、そのひとつとして「人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度」を挙げている。実は立川基地所属の航空機の小平市上空の飛行ルートには、一戸建ての住宅が並ぶ中にひときわ目立つ「ブリジストン工場」の煙突が立っている。地元住民による計測では、同工場の標高は海抜七十八メートルで、煙突の高さは百十三メートルとなっている。したがって、煙突の高さは海抜百九十一メートルとなる。
 ということは、航空機はこの地域の最も高い障害物である「ブリジストン工場」の煙突上端の海抜百九十一メートルに、「航空法施行規則」第百七十四条でいうところの「最低安全高度」の三百メートルを加算した海抜四百九十一メートル以上の高度を保って飛行しなければならないことになる。したがって、「四百五十メートル以上の高度では飛行してはならない」とした前記の「協定もしくは内規」は「航空法施行規則」に違反することになりはしないか。この点についての、政府の見解を示されたい。

  右質問する。