質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第四六号

内閣参質一五四第四六号
  平成十四年十月二十九日
内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 福田 康夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員山本孝史君提出ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本孝史君提出ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 業務用・施設用蛍光灯等に用いられているポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)が使用されている安定器(以下「PCB使用安定器」という。)については、昭和四十七年に製造が中止されたが、一部の施設において耐用年数を超えて使用が続けられている実態がある中で、平成十二年十月四日、八王子市内の小学校で耐用年数を超えたPCB使用安定器が破裂し、PCBを含有する絶縁油(以下「PCB絶縁油」という。)が児童の身体に付着するという事件が発生したこと等を受け、政府としては、このような事件が、国民の健康を保持するのみならず、環境汚染を防止する上で見過ごすことのできない事態であるとの認識に基づき、平成十二年十一月二十八日、「業務用・施設用蛍光灯等のPCB使用安定器の事故に関する対策について」を閣議了解したものである。

一の2について

 各府省庁が管理する施設、事務所及び事業所(以下「施設等」という。)並びに各府省庁が補助金の交付等を行っている団体(地方公共団体を除く。)が管理する施設等(以下「所管施設等」という。)に関し、各府省庁ごとの平成十二年十一月二十八日時点においてPCB使用安定器を使用していた施設等数及びそのうち平成十四年三月三十一日までにすべてのPCB使用安定器の交換又は撤去(以下「交換等」という。)の措置を講じた施設等数並びに平成十二年十一月二十八日時点において使用していたPCB使用安定器数及びそのうち平成十四年三月三十一日までに交換等の措置を講じたPCB使用安定器数は、別表のとおりである。

一の3について

 別表に示すとおり、所管施設等において平成十二年十一月二十八日時点で使用されていたPCB使用安定器については、平成十四年三月三十一日までに約八割について交換等の措置を講じたところであり、また、本年度末までには、おおむね交換等が終了する予定である。なお、施設の建替計画等との調整から早急な交換が困難な場合等については、脱落防止のための固定等の必要な措置を講ずることとしている。

二について

 環境大臣は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成十三年法律第六十五号。以下「PCB特措法」という。)第六条の規定に基づき、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならないこととされ、基本計画には、PCB特措法第二条第一項に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の発生量、保管量及び処分量の見込み、PCB廃棄物の処理施設の整備その他PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するために必要な体制に関する事項並びにこれらの事項のほかPCB廃棄物の確実かつ適正な処理の推進に関し必要な事項を定めることとされている。
 これらの事項のうち、PCB廃棄物の発生量、保管量及び処分量の見込みについては、PCB特措法第八条に基づき届け出されたPCB廃棄物の保管及び処分の状況から、推計がほぼ終了したところである。
 しかし、PCB廃棄物の処理施設の整備その他PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するために必要な体制に関する事項については、現在、北九州市において環境事業団によるPCB廃棄物の処理施設の設置を進めているほか、東京都及び愛知県において関係地方公共団体から環境事業団によるPCB廃棄物の処理施設の設置の同意を得たところであるが、いまだ関係地方公共団体との調整を進めている状況にあるPCB廃棄物の処理施設もあることから、基本計画の策定には至っていない。
 今後、PCB廃棄物の処理施設の整備に関する進ちょく状況等を踏まえつつ、できる限り早期に基本計画を策定してまいりたい。

三について

 PCB廃棄物の保管については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第十二条の二第一項及び第二項の規定に基づき、これまでもPCB廃棄物を保管する事業者に対し適正な保管を義務付けるとともに、廃棄物処理法第十八条及び第十九条の規定等に基づき、都道府県及び保健所を設置する市(以下「都道府県等」という。)がその状況を把握してきたところであるが、御指摘のような状況があったことを踏まえ、より体系的に保管の状況を把握し、管理の徹底を図ることができるよう、PCB特措法第八条により、PCB廃棄物を保管する事業者に対し、毎年度、そのPCB廃棄物の保管及び処分の状況について届け出ることを義務付けたところである。
 また、PCB絶縁油が用いられた電気工作物のうち一部については、現在も使用が続けられていることから、平成十三年十月十五日、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第百六条に基づく電気関係報告規則(昭和四十年通商産業省令第五十四号)を改正し、現在使用が続けられているPCB絶縁油が用いられた変圧器、電力用コンデンサー等の設置状況について経済産業局長への報告を義務付けたところである。
 これらの制度に基づき、PCBの保管、処分及び使用の状況について体系的に把握し、その適正な管理を確保するとともに、紛失等の不適正な保管が明らかになった場合には、都道府県等において廃棄物処理法に基づく改善命令その他の必要な措置が行われるよう適切に対処してまいりたい。

四について

 産業廃棄物であるPCB廃棄物については、そのPCB廃棄物を排出した事業者の責任により適正に処理されるべきものであるから、当該事業者が自ら処理するか、又は処理業者に委託して処理することが原則である。
 しかしながら、PCB絶縁油が用いられた高圧トランス及び高圧コンデンサーの処理には御指摘のように多額の費用を要することから、費用負担能力の低い一部の中小企業者が、不適正な処理を行うことにより、環境中に放出されたPCBが新たな環境汚染を引き起こすことが強く懸念される。
 このため、環境事業団によるPCB廃棄物の処理施設の整備に対する補助を通じて中小企業者が保管するPCB廃棄物の処理料金を引き下げさせるとともに、中小企業者が保管するPCB廃棄物の処理費用の一部に充てるために環境事業団法(昭和四十年法律第九十五号)第三十五条に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基金を設置するなどの措置を講じているところである。
 これらの措置により、中小企業者の負担を軽減することとしているが、中小企業者が実際にどの程度の処理費用を負担することになるかについては、処理費用の算定に必要な全国のPCB廃棄物の処理施設の整備の費用や、環境事業団が処理を行うこととなるPCB廃棄物の量の見込み等について精査する必要があると考えている。

五について

 PCB廃棄物の長期保管に伴う紛失等及び事業者の負担の増大を防止するためには、まずは、PCB廃棄物を処理できる体制を早急に整備することが必要であると考えており、このため、環境事業団によりPCB廃棄物の処理施設の整備を進める等処理体制の構築に取り組んでいるところである。なお、処理が行われるまでのPCB廃棄物については、三についてで述べたとおり、PCB特措法に基づく届出により保管状況を把握し、その適正な管理を確保することとしているところである。
 なお、御指摘のPCB廃棄物を蓄積し、貯蔵するための施設の設置については、PCB廃棄物の処理施設と同様に、地域住民の理解を得なければならないことから、実現には困難が伴うことが予想されるが、特に事業者の倒産等により紛失等のおそれのあるPCB廃棄物を都道府県が中心となって地域ごとに当該施設を設置することは、望ましいものであると考えている。

六について

 過去に埋設処理された残留性有機塩素系農薬については、平成十三年度及び平成十四年度において、都道府県、市町村、農業協同組合等に対し、当該農薬の埋設地点における環境の汚染状況等を調査し、当該調査の結果、環境の汚染が懸念される場合には、当該農薬を掘り出し、適切に保管するよう指導しているところである。
 また、平成十二年度から残留性有機塩素系農薬を安全に処理するための有機化合物の分解に係る技術開発を進めているところであり、今後、開発された技術を基に適切に処理してまいりたい。

別表