質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第四一号

内閣参質一五四第四一号
  平成十四年八月三十日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員中村敦夫君提出京都第二外環状道路北(B区間)の建設計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中村敦夫君提出京都第二外環状道路北(B区間)の建設計画に関する質問に対する答弁書

一について

 京都第二外環状道路(以下「本件道路」という。)の環境影響評価については、京都府において、「環境影響評価の実施について」(昭和五十九年八月二十八日閣議決定)及び「建設省所管ダム、放水路及び道路事業環境影響評価技術指針について」(昭和六十年九月二十六日付け建設事務次官通達。以下「技術指針」という。)に基づき、自然環境の保全に係る環境要素への影響の予測及びその評価を含め、適切に実施されたものと承知している。
 また、本件道路の通過予定地域周辺の景観の保全を図るため、国土交通省近畿地方整備局(旧建設省近畿地方建設局。以下「近畿地方整備局」という。)において、平成二年度から学識経験者等で構成される京都第二外環状道路景観検討委員会(以下「景観検討委員会」という。)を開催し、道路景観の在り方に関して検討を行ってきているところである。
 さらに、御指摘の第一種風致地区に指定された大原野神社及び花の寺の周辺地域における景観等への影響を少ないものとするため、近畿地方整備局において、平成十二年度から平成十三年度にかけて、学識経験者等で構成される京都第二外環状道路西山地区検討委員会(以下「西山地区検討委員会」という。)を開催し、花の寺の参道の保全、大原野神社周辺の地下水の保全等を図るための工法及び構造に関する提言を取りまとめたところであり、これを踏まえ、具体的な工法及び構造について検討しているところである。
 今後、事業の実施に当たっては、これらを踏まえた上で、御指摘の第一種風致地区の景観等の保全に努めてまいりたい。

二について

 本件道路は、御指摘の京都市自然風景保全条例(平成七年条例第五十四号)に基づく第一種自然風景保全地区及び第二種自然風景保全地区に指定された地域を通過しない予定である。

三について

 一についてで述べたとおり、本件道路については、環境影響評価を適切に実施するとともに、その後も景観検討委員会及び西山地区検討委員会において道路景観の在り方等に関して検討を実施するなど、本件道路の通過予定地域周辺の景観等の保全に配慮して事業を進めているところであり、大原野神社及び花の寺の周辺地域における貴重な景観や自然環境の保全が図られるものと考えている。

四について

 本件道路は、京都市西京区大枝沓掛町から京都府久世郡久御山町に至る路線として平成元年八月に都市計画決定されている。
 御指摘の大枝インターチェンジ(仮称)から京都市と長岡京市の市境にあるトンネルまでの区間は、西京区大枝西長町、大原野北春日町及び大原野南春日町の既存集落、花の寺、大原野神杜を始めとする神社、仏閣等を極力避けるとともに、地形状況、主要幹線道路との接続、沿線地域の利便性等を考慮した上で、都市計画決定されたものであり、適切なものであると考えている。

五について

 御指摘の要望書においては、「都市計画決定の見直しや建設計画の白紙撤回、またルートの大幅な変更などの適切な処置が講じられるよう」求められているが、一について及び四についてで述べたとおり、本件道路については、既存集落、花の寺、大原野神社を始めとする神社、仏閣等を極力避けるとともに、地形状況、主要幹線道路との接続、沿線地域の利便性等を考慮した路線となっており、都市計画決定及び環境影響評価が適切に実施されたものと考えている。また、その後も景観検討委員会及び西山地区検討委員会において道路景観の在り方等に関して検討を実施するなど、本件道路の通過予定地域周辺の景観等の保全に配慮して事業を進めているところであり、大原野神社及び花の寺の周辺地域における貴重な景観や自然環境の保全が図られるものと考えている。

六について

 本件道路のうち大原野神社及び花の寺の周辺地域を通過する区間の構造については、「地表改変を極力なくし、景観・植生への影響を最小限にとどめる。」との西山地区検討委員会の提言を踏まえ、具体的に検討しているところである。

七について

 本件道路は、「都市再生プロジェクトに関する基本的考え方」(平成十三年六月十四日都市再生本部決定)の3の(3)に定める「都市再生プロジェクト選定方針」に合致するものと判断したことから、都市再生プロジェクトとして決定されたものである。
 また、御指摘の要望書においては、「計画の廃止やルートの変更など、貴重な景観を守るための適切な処置」を講ずるよう求められているが、五についてで述べたとおり、本件道路については、既存集落、花の寺、大原野神社を始めとする神社、仏閣等を極力避けるとともに、地形状況、主要幹線道路との接続、沿線地域の利便性等を考慮した路線となっており、都市計画決定及び環境影響評価が適切に実施されたものと考えている。

八について

 七についてで述べたとおり、本件道路は、「都市再生プロジェクト選定方針」に合致するものと判断したことから、都市再生プロジェクトとして決定されたものである。

九について

 近畿地方整備局においては、本件道路の建設に伴う地下水への影響を把握するため、西山地区検討委員会の助言を受けつつ、水位観測、流量観測、井戸調査、水質調査、地質調査等を実施したところであり、その結果、大原野神社及び花の寺の周辺地域の地下水脈は九本あり、浅いところで地表から約五メートル、深いところで約十二メートルの位置を、山の斜面に沿って西側から東側に一日当たり約三百五十立方メートルの地下水が流れていると推測されたところである。
 大原野神社及び花の寺の周辺地域における地下水への影響については、これらの調査結果を踏まえ具体的な対策を検討しており、これにより地下水の保全を図ってまいりたい。

十の1について

 景観への影響については、技術指針に基づき、主要眺望点と考えられる善峰寺等から予測及びその評価を行ったものであると承知している。
 なお、御指摘の中距離及び近距離からの景観については、景観検討委員会において検討を行っており、本件道路周辺の景観の保全に配慮しつつ、事業を進めているところである。

十の2について

 騒音については、技術指針に基づき、七地点において予測及びその評価を行った結果、一部の予測対象地域で遮音壁等の構造物を設置することにより、すべての予測対象地域において、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十六条第一項の規定により人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められた環境基準を達成できると評価されたものと承知している。

十の3について

 御指摘の農作物への影響については、技術指針において、予測及びその評価の対象とはなっていない。なお、工事中及び供用後に、著しい悪影響が発生した場合は、必要に応じて調査を実施し、適切な措置を講じてまいりたい。

十の4について

 御指摘の希少動植物への影響については、技術指針に基づき、既存文献により本件道路がその分布地域を通過しないことを確認し、さらに、本件道路近傍で実施した現地調査においてもその存在が確認されなかったため、予測及びその評価の対象としなかったものと承知している。
 なお、ヒメコウホネについては、九についてで述べた本件道路の建設に伴う地下水への影響に関する調査において、本件道路から約四百メートル離れた地点で存在が確認されており、専門家の意見を聴きながら、必要に応じて保全対策を適切に講じてまいりたい。

十の5について

 大気汚染については、技術指針に定められた一般的な予測方法である拡散式を基に、地域特性等を考慮した係数の設定を行い、適切に予測及びその評価が実施されたものと承知している。

十の6について

 水質汚濁については、技術指針において「サービスエリア、パーキングエリア等の汚水を公共用水域に排水する場合又は工事を実施する場合で、大きな汚濁負荷を与えるおそれがある場合」に予測及びその評価を行うこととされており、本件道路はこれに該当しないため、予測及びその評価は行わなかったものと承知している。
 なお、御指摘の京都市環境影響評価技術検討会の答申を受けて京都市長から京都府知事へ提出された意見書を踏まえ、環境影響評価書においては「水質汚濁については、必要がある場合は水質に有害な影響を与えないような措置を講ずる」とともに、「工事中及び供用後予測し得なかった著しい悪影響の発生が見られる場合は、必要に応じて環境に及ぼす影響について、調査を実施し適切な措置を講ずる」と記述されていると承知しており、当該環境影響評価書に基づいて、環境保全対策を適切に行ってまいりたい。

十一について

 大山崎町立大山崎中学校については、その運動場の一部が本件道路の事業予定地とされており、現在、機能の補償について大山崎町と調整しているところである。
 また、同中学校及び本件道路が近接して通過することとなる長岡京市立長岡第四中学校については、「学校環境衛生の基準」(平成四年六月二十三日文部省体育局長裁定)に基づき、教室を対象とした騒音レベルが中央値五十五デシベル以下となるよう、環境保全対策を講ずることとしている。
 さらに、本件道路の沿線地域には、大山崎町立大山崎小学校、長岡京市立長岡第四小学校、長岡京市立長岡第五小学校、京都府立乙訓高等学校及び京都府立西乙訓高等学校があるが、通学路となっている府道、市道及び町道が本件道路と交差する部分については、通学の支障とならないように、関係地方公共団体と調整し、適切な通学路の確保を図ってまいりたい。

十二について

 お尋ねの第二外環道北(本件道路のうち大枝インターチェンジ(仮称)から大山崎ジャンクション(仮称)までの区間をいう。以下同じ。)の建設に要する総事業費の見込みは約千六百五十億円であり、その内訳は、工事費が約六百八十億円、用地及び補償費が約六百七十億円、その他が約三百億円である。また、それぞれの積算の根拠は、別表のとおりである。

十三について

 本件道路(大枝インターチェンジ(仮称)から久御山インターチェンジ(仮称)までの十五・七キロメートル区間)の総事業費の見込みは、約三千九百億円である。また、第二外環道北の供用開始予定年度である平成二十三年度の当該区間の一日当たりの平均交通量は約二万千台と予測されており、有料道路事業としての料金の徴収期間内に償還する見通しである。

十四について

 本件道路は、京都縦貫自動車道の一部を構成し、広域的な交通の円滑化を図ることを目的とする自動車専用道路であり、京都府南北間の走行時間が短縮されることで、定時性の確保による生活利便性の向上や新たな地域開発の進展に寄与するとともに、京滋バイパスと一体となって京都市中心部への交通を分散する機能を有し、京都市内への渋滞の緩和にも資する道路であると考えている。
 なお、本件道路の沿線地域においては、四車線の一般道路の整備が都市計画道路石見下海印寺線など六路線八箇所において、京都府、京都市、長岡京市及び向日市により進められているが、これらは、それぞれの地域内の交通の円滑化を図ることを目的とした道路であると考えている。

別表