質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一五四第二号
  平成十四年三月五日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出自賠責保険の適用除外に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出自賠責保険の適用除外に関する質問に対する答弁書

一について

 自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)第二条第一項で定める自動車(以下単に「自動車」という。)のうち、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百十四条第一項の規定により道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定が適用されないものであって国が自衛隊の任務の遂行に必要な業務のため運行の用に供するもの(以下「自衛隊の適用除外車」という。)については、自衛隊の訓練等特別な状況において使用される可能性があり、そのような場合に生ずる事故を一般の交通事故を想定している自動車損害賠償責任保険で取り扱うことは適当ではないこと、諸外国においても、同様の業務のため運行の用に供する自動車を強制保険の対象としていない例が多いこと等から、自動車損害賠償保障法第五条の規定を適用しないこととしている。
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)に基づき日本国内にあるアメリカ合衆国の軍隊がその任務の遂行に必要な業務のため運行の用に供する自動車(以下「合衆国の軍隊の適用除外車」という。)については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法(昭和二十七年法律第百二十一号)第一条の規定により、日本国政府がこれに係る事故の損害賠償を行い、いわゆる運行供用者たるアメリカ合衆国が被害者に対して直接に当該損害賠償を行うことがないから、自動車損害賠償保障法第五条を適用しないこととしている。また、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定(昭和二十九年条約第十二号)に基づき日本国内にある国際連合の軍隊がその任務の遂行に必要な業務のため運行の用に供する自動車(以下「国際連合の軍隊の適用除外車」という。)についても、合衆国の軍隊の適用除外車と同様である。

二について

 一についてで述べた理由から、自動車損害賠償保障法第十条及び自動車損害賠償保障法施行令(昭和三十年政令第二百八十六号)第一条の規定については、現在においても改廃の必要はないと考える。

三について

 自動車損害賠償保障法第三条の規定により、被害者は、加害者の自動車の運行によってその生命又は身体を害された事実を証明すれば損害の賠償を求めることができ、加害者は、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明しない限り免責されないことになっている。
 同法第五条の規定が適用されない自動車に係る事故の場合であっても、被害者は、同法第三条の規定により加害者が右の証明をしない限り損害賠償を求めることができるため、御指摘は当たらないと考える。

四について

 平成三年度から平成十二年度までの間における自衛隊の適用除外車と民間の自動車及び人との間における事故並びに合衆国の軍隊の適用除外車と民間の自動車及び人との間の事故のそれぞれの件数は、別表のとおりである。
 また、右の間に国際連合の軍隊の適用除外車に係る事故は発生していないものと承知している。

五について

 自動車損害賠償保障法第五条の規定が適用されない自動車による事故については、被害者との話合い等により、同法第三条等の規定に基づく適正な損害賠償を行ってきているところである。
 平成三年度から平成十二年度までの間において発生したこれらの事故に関して提起された訴訟の件数は四件であり、これらの訴訟は、事故の事実関係又は事故当事者間の過失の割合について事故の相手方との間で合意が成立しなかったため、提起されたものと承知している。

六について

 自衛隊の適用除外車に係る事故が発生した場合、当該事故の当事者である自衛隊員は、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第七十二条の規定に基づき、直ちに負傷者の救護等を行うとともに、警察官に報告を行っている。また、自衛隊の適用除外車又は合衆国の軍隊の適用除外車に係る事故が発生した場合、当該事故による損害の賠償を適正に行うため、自衛隊員が現場に赴いてその状況を確認することがある。しかしながら、これらの自衛隊員は、当該事故の捜査等を行っているものではなく、当該事故の捜査等は、自衛隊員の右の活動とは別に報告を受けた警察官によって適正に行われているところである。

別表