質問主意書

第154回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一五四第一号
  平成十四年二月二十二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員櫻井充君提出勤務医を取り巻く諸問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出勤務医を取り巻く諸問題に関する質問に対する答弁書

一について

 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の適用を受ける労働者を、同法第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条に定める労働時間を延長し又は同法第三十五条に定める休日に労働させる場合には、使用者は、同法第三十三条又は第四十一条に定める場合を除き、同法第三十六条に定めるところにより協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。
 また、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第五条により、使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとされている。
 御指摘のケースが労働基準法又は最低賃金法に違反しているかどうかは一概にはいえず、個々の事案に即して判断する必要があるが、これらの法律の規定に違反している事実が認められた場合には使用者に対し是正のための指導を行うほか、悪質な事案については刑事事件として取り扱うことも含め、厳正に対処していくこととしている。

二について

 大学病院のいわゆる医局については、地域医療の充実及び最先端医療の普及に貢献しているという評価がある一方、医師の人事の流動化を妨げているなどの批判もあると承知しているが、法令上の位置付けのない任意の組織であり、その態様及び機能は様々であることから、一概にお答えすることは困難である。
 今後、大学病院等において、採用に係る選考基準、手続など医師等の人事に関する透明性を一層高めることが重要であると考えている。

三について

 平成十年に「医師の需給に関する検討会」が取りまとめた報告書によれば、我が国全体としては、いまだ医師は過剰な状態に至っていないが、平成三十二年には少なくとも六千人、平成三十七年には少なくとも一万四千人の医師が過剰になると予想されている。
 また、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第二十五条第一項に基づく立入検査の結果に係る各都道府県からの報告によれば、平成十一年度に立入検査を実施した八千六百八十六病院のうち、医師について医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第四十七号)第十九条に規定されている医療従事者の員数の標準(以下「人員配置基準」という。)を満たしているものは五千九百九十七病院であり、その割合は六十九・〇パーセントとなっている。また、医師について人員配置基準を満たしている病院の割合を地域別にみると、最高は近畿地区の八十三・九パーセント、最低は北海道・東北地区の四十五・六パーセントである。
 各地域ごとの医師の確保については、各都道府県が、医療法第三十条の三に基づき策定する医療計画において医師等の医療従事者の確保方策等を定め、その推進に努めているところである。
 また、山村、離島等のへき地における医療の確保については、平成十三年に策定した第九次へき地保健医療計画等に基づき、へき地診療所への医師の派遣等に対する支援を行っているところであり、今後とも、へき地における医療提供体制の状況を踏まえて必要な支援に努めてまいりたい。

四について

 「平成十二年賃金構造基本統計調査」によれば、常用労働者である医師に対して平成十二年六月分として支給された現金給与額(賞与、期末手当等の特別給与額を除く。)の平均は約八十六万円であるが、開業医の所得及び諸外国の勤務医の所得については把握していない。

五について

 我が国の医療保険制度における診療報酬は診療行為別に評価され、設定されているが、諸外国における診療報酬は必ずしも診療行為別に設定されていないこと等から、お尋ねのような個々の診療行為に係る診療報酬の額を諸外国と比較することは困難である。

六について

 中央社会保険医療協議会は、社会保険医療協議会法(昭和二十五年法律第四十七号)第三条に基づき、保険者等を代表する委員八人、医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員八人並びに公益を代表する委員四人により組織されているところであり、医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員の中には病院の開設者等も含まれているところである。

七について

 我が国においては、他の先進諸国と比較して、国民一人当たりの病床数が多いことから、一病床当たりの医療従事者数は総体として低い水準にあるが、国民一人当たりの医療従事者数には大きな差はない。
 医療事故は、人員配置基準を大幅に上回る医療従事者が配置された病院においても、医療の高度化や診療プロセスの複雑化に伴って発生しており、必ずしも医療従事者の配置の不足がその決定的要因であるとは考えていない。
 なお、医療事故を防止するためには、個々の医療従事者の誤りを事故に発展させないような組織的な取組が重要であると認識しており、医療機関が医療事故を防止するためのマニュアルを作成する際の指針等を策定し、その周知徹底を図るとともに、特定機能病院において安全管理体制の確保を義務付ける等の対策を講じているところである。