質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第四一号

京都第二外環状道路北(B区間)の建設計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月二十五日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   京都第二外環状道路北(B区間)の建設計画に関する質問主意書

 政府は、京都府大山崎町から同府京都市西京区の老の坂に至る十・二キロメートルの区間に、高規格幹線道路京都第二外環状道路北(B区間)(以下「第二外環道北」という。)の建設を予定している。
 この第二外環道北について、自然環境や住環境、歴史的景観の破壊をもたらすとして、沿線住民等から、強い懸念や反対の声が示されている。また、完成後についても通行量が見込まれないとの意見があり、必要性及び採算性の観点からも強い懸念がある。
 政府を挙げて道路行政の見直しを進めている一方で、このような道路事業が進行することには、強い疑問を抱かざるを得ない。
 したがって、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、第二外環道北の通過予定ルートには、京都市の策定した「京都国際観光都市建設計画」において「第一種風致地区」に指定された地域が含まれている。第二外環道北によって、伝統ある社寺を含む「風致地区」の環境等に影響を及ぼすことが懸念されるが、どうか。

二、第二外環道北の通過予定ルートには、「京都市自然風景保全条例」に基づく「第一種・第二種自然風景保全地区」に指定された地域が含まれている。同地区は、建築物及び工作物について「自然環境に与える影響が最も少ないもの」と規定しているが、第二外環道北はこの規定及び条例の本旨に反するのではないか。

三、第二外環道北は、京都市西京区大原野の大原野神社・花の寺(勝持寺)地域の中央部分を貫通する。この周辺は、京都の原風景を残す貴重な場所として広く知られており、四季を通じて全国から数多くの人々が訪れる。大原野神社・花の寺地域の貴重な歴史的景観及び環境を、第二外環道北という巨大な構築物で破壊すべきではないと考えるが、どうか。

四、第二外環道北が大原野神社・花の寺地域を貫通することになったのは、大枝沓掛インターから京都市と長岡京市の境界山地トンネル間に至るルートを、西山側に大きく湾曲させたためである。大原野神社・花の寺地域の歴史的景観の社会的な価値と比較した上で、ルートを湾曲させた理由を示されたい。

五、昨年二月十四日、全国の国文学研究者等による第二外環道北の建設再考を求める要望書が国土交通大臣に提出された。本要望書は、国文学の専門的見地から、わが国の文化的伝統や独自の美意識を生み出した大原野神社・花の寺地域の歴史的景観の価値について、強く重要性を訴えたものである。本要望書について、政府の見解を示されたい。

六、昨年二月十五日、通過予定地の地元自治会である大原野自治連合会等から、第二外環道北通過に関する要望書が京都市長に提出された。本要望書は、「再び創造することのできない、この素晴らしい風景や環境が損なわれることは、地元大原野のみならず、京都にとって大きな損失であり、断じて許されるべきものではありません」などとして、「本道路の通過については、地上に影響を及ぼさない構造とするよう配慮することを強く要望いたします」と述べている。第二外環道北に対する地元自治会の「地上に影響を及ぼさない構造」にして欲しいという要望について、政府の見解を示されたい。

七、政府の「都市再生プロジェクト」(第二次決定)によると、「大都市圏における環状道路体系の整備」中で第二外環道北の建設促進を挙げている。これに対し、全国の国文学研究者等は、第二外環道北を京都の歴史性を破壊する事業であるとして、昨年十一月三十日、内閣総理大臣に対し、本プロジェクトからの除外と事業の再考を求める要望書を提出した。本要望書について、政府の見解を示されたい。

八、第二外環道北は、一九八七年六月に「高規格幹線道路京都縦貫自動車道」の一部として位置付けられている。京都府全域を縦貫して北部と南部を連結することを目指す自動車道の一部が、なぜ「都市再生プロジェクト」の対象となるのか、政府の見解を示されたい。

九、第二外環道北は、豊かな地下水に恵まれた地域を縦断して建設される予定であり、建設による地下水脈の切断とその影響が懸念されている。特に、大原野神社・花の寺付近は扇状地地形であり、古くより有名な「瀬加井の清水」などの湧水や多くの溜池に見られるように、地下水位が高く表層地下水脈の存在が推定されている。事業の地下水への影響について、調査内容とその結果を具体的に示されたい。

十、一九八九年に示された「第二外環に係わる環境影響評価準備書」には、以下のような問題点が指摘されている。それぞれについて、政府の見解を示されたい。

1 景観に及ぼす影響について
 本評価書は、遠距離からの眺望による写真だけを示し、影響は軽微であるとしている。しかし、肝心の中距離及び近距離からの景観に対する評価は、全く示されていない。これでは適切な評価にならないと考えるが、どうか。
2 騒音について
 本評価書は、極めて静寂な通過予定地の現状を考慮せず、定められた許容レベル内に収まることで問題なしとしている。これは、現状を無視した非現実的な評価と考えるが、どうか。
3 農業に及ぼす影響について
 本評価書は、長岡京市、京都市大枝地区、同市大原野地区の主要農産物であるタケノコについて、生産竹林への影響を不明としている。本地域は、タケノコ生産を主要産業としており、生産竹林への影響は地域住民にとって深刻な懸念である。これでは適切な評価にならないと考えるが、どうか。
4 生態系への影響について
 本評価書は、希少動植物について存在しないとしている。だが、実際には、京都市指定天然記念物ミナミイシガメ、京都府の重要な昆虫類とされるマダラルリツバメ、クロカゲモドキ、環境省により絶滅危惧種に指定されているフジバカマ、ヒメコウホネなどの希少動植物の存在が通過予定地に確認されている。このことは、評価書の記述に大きな虚偽があったことを示しているが、どうか。
5 排気ガスによる大気汚染について
 本評価書は、通過予定地の多くが盆地型の地形であるにもかかわらず、そのような場所で予想される逆転層現象に関しての大気安定度の予測評価を行っていない。これでは適切な評価にならないと考えるが、どうか。
6 水質汚濁について
 本評価書は「サービスエリア等の施設計画が無く、また、水質汚濁に影響を与えるおそれがある工事の実施等は行わない」として、水質汚濁を環境要素に指定していない。一方で、京都市環境影響評価技術検討会は、第二外環道北について「京都市と長岡京市の境界山地ではトンネル工事が、西山丘陵では切土工事が予定されており、水質汚濁や地下水の枯渇・汚濁に影響を与えるおそれがないとは考えられない」と指摘している。よって、水質汚濁について評価を行わなかったことは問題であると考えるが、どうか。

十一、第二外環道北は、大山崎町大山崎中学校を貫通分断し、長岡京市長岡第四中学校の校舎真横を通過し、大山崎小学校、長岡第四小学校、長岡第五小学校、京都府立乙訓高等学校、京都府立西乙訓高等学校の通学区域を分断する。第二外環道北が地域の教育環境に与える影響について、政府の見解を示されたい。

十二、第二外環道北について、現時点で想定している総工費総額及びその内訳、積算の根拠をそれぞれ示されたい。

十三、京都第二外環状道路の北と南を合わせた十五・七キロメートル区間の総工費償還の見通し及び通行量について、それぞれ具体的に示されたい。

十四、第二外環道北予定ルートと平行して、四車線の一般道路を建設する計画が、現時点で三本以上ある。中には、既に七十パーセント以上が完成し、部分共用されている道路もある。よって、渋滞解消の点から見ても、第二外環道北を建設する意義は薄いと思われるが、どうか。

  右質問する。