質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第三四号

給与所得者の納税制度の見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月十八日

齋藤 勁   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   給与所得者の納税制度の見直しに関する質問主意書

 我が国の個人所得課税においては、申告納税制度を基本としつつも、給与や利子等については、支払者が支払の際に一定の税額を徴収して納付する源泉徴収制度(個人住民税においては特別徴収制度)が設けられている。また、給与に関しては、源泉徴収義務者である給与の支払者が、その年の最後の給与を支払う際に、「年末調整」を行い、給与の総額に対する最終的な税額と、年間を通じて納付された源泉徴収税額の合計額との過不足を調整する仕組みになっていることから、給与収入二千万円以下の給与所得者は、医療費控除等の適用を受ける場合などを除き、確定申告を要しないこととなっている。こうした源泉徴収・年末調整制度は、適正で確実な課税を確保する観点からも、また、納税者の便宜に配意する観点からも、その意義を否定するものではないが、一方で、給与所得者自身が主体的に申告を行い、税を納付することがないため、納税意識を高めるとの観点からの問題点も指摘されている。
 したがって、給与所得者に関しても、自らが確定申告を行い、納税者としての権利と義務とを明確に意識していくことを促していくような制度改善が求められていると考える。
 こうした観点から、以下質問する。

一、給与所得に関し、現行制度を改め、源泉徴収を廃止し、確定申告による納税に一本化すること、あるいは源泉徴収制度は維持しつつも、年末調整を行わないこととし、給与所得者自らが確定申告により、税額の精算、確定を行うことについて、導入の是非、導入した場合の問題点について政府の見解を示されたい。

二、アメリカ、イギリス、ドイツなどでは、給与所得に関しては、源泉徴収制度が採用されていると承知しているが、

1 主要国においても、例えば、フランスでは源泉徴収は行われておらず、前年の納税額が一定額以上の納税者に対してのみ予納制度を設けていると聞いているが、その制度の概要及び制度の適用を受けない者に関する納税の仕組みはどのようになっているのか。また、他の主要国(例えばOECD加盟国)において、給与所得に関し、源泉徴収制度を設けていない国はあるか。あるならば、そのような国では、どのような仕組みにより、納税させることとしているのか。
2 源泉徴収を行っているアメリカでも、年末調整は行わず、納税者が確定申告により税額の精算、確定を行うこととしていると聞いているが、他の主要国(例えばOECD加盟国)で同様の制度を設けている国はあるか。
3 フランス、アメリカを含め、1及び2において挙げられた国では、前述一で政府が問題とする点について、どのような対処を行っているのか。また、こうした対処方針を踏まえて、我が国にも同様の制度を導入することの可否についての見解を示されたい。

三、我が国では、給与所得者が確定申告を行う場合の一つとして、給与所得者に対し、特定支出控除の選択適用(所得税法第五十七条の二)が認められているが、

1 特定支出控除は、給与所得控除との選択適用となっており、平成十二年の給与所得者約四千四百九十四万人に対し、特定支出控除を選択して申告した者は、わずか七人に過ぎない。特定支出控除の選択状況について、過去五年間の実績を伺うとともに、特定支出控除の選択が極めて低調な要因をどのように分析しているか、明らかにされたい。
2 特定支出控除の適用要件を大幅に見直し、給与所得者の多くが制度を利用可能とすることにより、給与所得者の多くが、自ら確定申告を行い得るよう制度を改めることについて、政府の見解を示されたい。

  右質問する。