質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第二七号

都道環状六号線拡幅事業及び首都高速道路中央環状新宿線建設事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年六月十四日

中村 敦夫   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   都道環状六号線拡幅事業及び首都高速道路中央環状新宿線建設事業に関する質問主意書

 東京都道環状六号線を現在の二十二メートルから四十メートルに拡幅する事業(豊島区高松~渋谷区松濤)及びその地下に首都高速道路中央環状新宿線を建設する事業(豊島区高松~目黒区青葉台)について、事業地周辺住民から環境悪化への強い懸念が示されている。
 したがって、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、都市計画法の基本理念には「健康で文化的な都市生活を確保すべきこと」と定められており、たとえ公共事業であっても、事業地周辺住民に対し環境悪化の受忍を強要することは、できる限り避けなければならないと考えるが、どうか。

二、公共事業において、住民等が代替案や意見を示している場合、事業者は、いたずらに反論し事業の正当性を主張するのではなく、真摯に耳を傾け、誠実に検討し、必ず回答を示して、丁寧に説明すべきであると考えるが、どうか。

三、公共事業において事業地周辺の環境悪化を避けるため、事業地周辺の環境保全を法令に明記すべきであると考えるが、どうか。

四、東京の都市計画は、一九四七年の戦災復興計画にその基本を置いており、およそ五年ごとに行われる都市計画の見直しの際にもそれをそのまま継続させてきたという経緯があり、時代に適合していないことは明白である。政府が都市再生を重要課題と位置付けるならば、東京の都市計画について、環境保全を求める時代の要請に合わせた抜本的な見直しは、避けて通れない課題であると考えるが、どうか。

五、東京の都市計画の中でも、道路については完成率がいまだに半分程度と極めて低く、それらを計画のまま残して事業化の先送りを続けている。政府が都市再生を重要課題と位置付けるならば、東京の道路に関する計画について、環境保全を求める時代の要請に合わせた抜本的な見直しは、特に避けて通れない課題であると考えるが、どうか。

六、都道環状六号線の拡幅について、本年二月、従来六車線とされていたものが、四車線へと変更することになった。以前の計画である六車線化の場合、環境保全上どのような問題点があったのか。また、六車線化で想定されていた環境保全上の問題点は、四車線化の場合、どのように変わるのか。それぞれ具体的に示されたい。

七、環境影響評価等において大気汚染等を調べる際には、実験室内の実験ではないので、平坦な地形を想定するのではなく、土地の起伏や街並みなど現実の地形に即してシミュレーション等がなされるべきであると考えるが、どうか。

八、首都高速道路中央環状新宿線は、拡幅された都道環状六号線の地下に建設され、排気ガスは換気塔から排出される。そのため、換気塔周辺では高濃度の汚染物質にさらされる恐れがある。事業地周辺住民が民間調査機関に依頼した調査においても、実際の地形に即したシミュレーションを行った結果、住民の懸念を裏付ける結論が示されたと聞く。一方、本件の環境影響評価書は、平坦な地形という想定でシミュレーションがなされ、住民の懸念は当たらないとされている。よって、住民の懸念を払拭するためには、実際の地形に即して環境影響評価をやり直し、事業内容を見直す必要があると考えるが、どうか。

九、一九九〇年八月、環境庁長官は首都高速道路中央環状新宿線の環境影響評価書案に対する意見として、「本件事業計画地域の大気汚染の現状に鑑み、脱硝装置に関する調査研究を進め、その成果を踏まえて換気塔における脱硝装置等汚染物質の除去装置の導入を図る必要がある」と述べている。この環境庁長官意見を踏まえた「脱硝装置に関する調査研究」について、進捗状況を具体的に示されたい。また、環境庁長官意見を実現するため、政府は早急に適切な対処をすべきであると考えるが、どうか。

十、環境庁長官意見の出された一九九〇年当時では想定できなかったが、現在、換気塔によらない排気ガス浄化装置がほぼ実用化されている。これは大気を厚さ四十センチメートルほどの土壌層を通過させるだけで大部分の有害物質を除去できる極めて優れた装置である。これに対し、東京都や首都高速道路公団は旧来の機械式脱硝装置にこだわって開発を進めている。だが、機械式脱硝装置では基本的には窒素酸化物と目に見える程度の塵を除去することしかできず、最も有害なディーゼル排気ガス中の浮遊粒子状物質には効果がないことは明らかである。その上、建設費用、運転費用及び維持管理費用が膨大なものとなると考えられている。一方、土壌式ではトンネル内の換気に使った大気を、換気塔からではなく土壌を通して排出するだけであるため、運転費用は無処理の場合と変らず、維持管理も極めて容易である。
 東京都や首都高速道路公団は、土壌大気浄化システムでは広い面積が必要、大雨の対策が必要など様々な理由を付けて拒否し続けているが、いずれも解決可能な問題であり、事業地周辺住民はこの装置による代替案を示している。よって、本件道路への土壌大気浄化装置の導入を積極的に検討すべきであると考えるが、どうか。

  右質問する。