質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第二二号

歯科訪問診療料の算定基準に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年五月十四日

櫻井 充   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   歯科訪問診療料の算定基準に関する質問主意書

 今般の診療報酬改定では、訪問歯科の分野の規制が強化された。これは、一部の悪質業者が歯科訪問診療を行うことにより患者に不利益を与えている現状に対応するための処置であり、その意図は評価できる。また、現在政府が良質な歯科訪問診療を推進していることについては、全く同感である。
 しかし一方で、今回の改定によって善良な歯科訪問診療を行っている医療機関の診療を制限する危険性が考えられる。また、要介護などで歯科医療が必要な患者に対し、受診制限を来すことも考えられる。
 そこで、以下質問する。

一 今回の診療報酬改定では、一つの歯科医院に複数の歯科医師が勤務し、各々が歯科訪問診療に出向いた場合、その訪問先にかかわらず、いずれかの歯科訪問診療についてのみ所定点数を算定するとされている。歯科医療現場において、施設などへの訪問診療を行っている実態を政府はどの程度認識しているのか。また、その実態を踏まえた上で、なぜこのような算定基準になったのか。また、このような算定基準は、医科の保険医療機関でも同様の取扱いとなっているのか、示されたい。

二 同日に社会福祉施設等で療養を行っている通院困難な複数患者に対し、訪問して歯科診療を行った場合の歯科訪問診療料の算定基準として、二人目以降は歯科診療に要した時間が三十分以上であるときと規定されているが、三十分である根拠を明らかにされたい。また、医科の訪問診療においても、同様の時間設定がなされているのか、示されたい。

三 医科の疾患に対する治療のため保険医療機関へ通院している場合等、歯科訪問診療の必要性を認めない患者については、歯科訪問診療料を含め歯科診療に係る一連の費用は算定しないこととされているが、この「必要性を認めない患者」であるかどうかについては、いつ、誰が、どのように判断するのか、明らかにされたい。
 また、例えば、
 ①居宅等で寝たきりであるため家族又はヘルパー等の付添えを伴って医科の保険医療機関へ通院しているが、この上さらに歯科の保険医療機関へ通院するには経済的体力的負担が大きいため困難である患者、
 ②透析で在宅療養している者のうち通院が困難な患者、
 ③社会福祉施設等の入所者のうち、医科に通院している患者、
 ④通常は寝たきりであるが、一月に一度医科の保険医療機関へ通院又は検査通院している患者
は、歯科医療現場において歯科訪問診療の必要性があると考えられているが、それぞれの場合について歯科訪問診療料が算定されるかどうか、明らかにされたい。
 また、寝たきりでありながら、医科において家族が薬剤を取りに医院等を訪ねた場合、レセプト上は外来診療扱いになる。この際の歯科訪問診療の算定は可と思われるが、状況の確認は、いつ、どこで、誰がするのか、示されたい。
 さらに、通院が困難であるため歯科訪問診療を受けていたが、月末に体調を崩し、医科の保険医療機関へ受診した場合、それまでの歯科訪問診療料は保険給付外となるのか、明らかにされたい。
 一方、医科においては、例えば内科で訪問診療を受けているがリハビリのために整形外科、皮膚科あるいは眼科には通院している場合等、他科に通院していることをもって訪問診療を認めないとする解釈は示されていない。にもかかわらず、歯科においては保険給付が認められないことになっている。このような解釈は全く整合性がなく、早期に是正すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 訪問歯科衛生指導料は、歯科訪問診療料を算定すべき歯科訪問診療を行った場合に限るとされている。この規定では、社会福祉施設等で複数の入所者の歯科衛生指導を行った場合、歯科訪問診療2(三百八十点)の規定により歯科訪問診療料を算定していない患者については保険給付外となってしまう。これでは、社会福祉施設等で必要とされている歯科衛生指導が十分に行われないことになると思われるが、政府の見解を示されたい。

五 訪問歯科衛生指導は、保険医療機関に勤務する歯科衛生士等が当該保険医療機関内で歯科医師からの直接の指示を受け、終了後は指示を行った歯科医師に直接報告することとされている。このとき、歯科医師から複数の患者の訪問歯科衛生指導について直接の指示を受け、すべての患者の衛生指導を終えた後、その歯科医師に直接報告した場合、訪問歯科衛生指導料は算定されるか。また、歯科衛生士が電話にて、歯科医師から指示を受けた場合は、直接の指示を受けたものと解釈してよいか。また、ファックスあるいはインターネットを用いて報告書を送付し、電話にて歯科医師に報告した場合、直接報告したものと解してよいか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。