質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇号

BSEで被害を被った和牛繁殖農家に対する施策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年四月二十三日

櫻井 充   


       参議院議長 倉田 寛之 殿



   BSEで被害を被った和牛繁殖農家に対する施策に関する質問主意書

 日本国内でBSE(牛海綿状脳症)の一頭目が発見されてから半年以上が経過したが、今回のBSE問題による廃用牛や子牛の価格の大暴落で畜産農家の経営は危機的状況を迎えている。
 現状では、負債が多く担保資産の少ない畜産農家では個別には対応できない状況であり、国が現在行っている融資制度では、実際に借りられる農家は少なく、借りられたとしても負債を増やし経営を圧迫するのみである。こうした状況が何年も続くとすれば、日本の畜産は崩壊へと進むおそれがあると言っても過言ではない。
 政府は、様々な施策を行っていると主張しているが、現状にかんがみ、厳しい経営状況の続く畜産農家、特に和牛繁殖農家に対する施策をより一層押し進めなければならない。また、当問題で失われつつある食の安全への信頼回復に向け、消費者に安心される畜産の確立に全力を挙げて取り組まなければならない。
 そこで、以下質問する。

一 大家畜経営維持資金(いわゆるBSE関連つなぎ資金。償還期間一年以内。)の貸付は平成十四年三月末をもって終了し、四月より新たにBSE対応畜産経営安定資金(償還期間二年以内)が始まったが、三月まで借りていた人も借換えができ、実質三年間の融資が行われているところである。この資金は、もと畜導入や飼料購入等に当てられ、有用であることは確かなことであるが、三年と短い期間であるので、BSEの影響と畜産農家の性格を考えて、これとは別に二十年から三十年という長期の融資を創設するべきではないか。

二 現在行われている、肉用牛肥育経営安定対策事業(マル緊事業)やBSE対応肉用牛肥育経営特別対策事業(BSEマル緊)等の措置は、名前のとおり肉用牛を「肥育」する農家のみが利用できるものであるので、肉用牛繁殖農家がこの補助金制度を利用することはできない。肉用子牛生産者補給金制度や子牛生産者拡大奨励事業等の助成制度では、現在の価格下落に対して不十分である。肉用牛繁殖農家に対する新たな資金制度を作るか、既存の資金の運用を拡大する予定はあるか。

三 廃用牛の肉については、市場に出回っても消費者が敬遠をするため、全く売れないばかりか、牛肉全体のイメージを悪くして畜産農家にはマイナス効果しかもたらさないものである。現下の取引価格も極端に安くほとんど買い手が付かないため、廃用牛を抱える農家は飼育を続けるだけ赤字になる悲惨な状況に陥っている。ところが、農水省の行っている廃用牛対策は、廃用牛流通緊急推進事業と呼ばれるもので、肉用牛であれば販売価格が五万円に達しなければその差額を補填するものである。これは、ほとんど値の付かない廃用牛を自主的に販売しなければならない苛酷な内容であり、問題を早急に解決するものとは言えない。今回のBSE問題は国による責任が大であるので、国は速やかに廃用牛全頭を一律価格で買い上げて処分すべきではないか。

四 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律は、牛十頭以上の畜産農家は管理基準に従って排泄物施設を設けなければならないとされている。衛生面を考えた法の精神は理解できるが、和牛繁殖農家の中には排泄物を積み残すことなく年内に経営土地内で堆肥処理を行ったり、販売するなどして処分しているところもあり、すべての繁殖農家が周辺地区を汚染しているわけではない。現在の畜産農家の現状を考えるとこのことが経営上大きな負担となるので、排泄物を処理できるところには施設設置義務を免除したり、法適用猶予期間を延長するなど、法の適用をもう少し柔軟にすべきではないか。

五 平成十四年四月四日に行われた参議院予算委員会において、農林水産省須賀田生産局長が、BSE発生に伴う損害額について答弁を行った。その内容は、肉用牛経営における収入減少額が千三百十億円程度、食肉販売業におけるものが千六百億円程度、焼肉業界におけるものが七百四十億円から九百億円程度というものであった。平成十四年四月二日に出された「BSE問題に関する調査検討委員会報告」の中の「BSE問題にかかわる行政対応の問題点・改善すべき点」で指摘されていたとおり、今回のBSE発生の責任は一義的に国にあることは明らかであるので、国は損害を被った畜産農家に対して上記の損害額を賠償すべきではないか。

  右質問する。