質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第一九号

過剰水源開発問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年四月三日

中村 敦夫   


       参議院議長 井上 裕 殿



   過剰水源開発問題に関する質問主意書

 全国のほとんどの地域でここ十年近く、都市用水の需要は横這いの傾向が続いている。人口があと五年程度でピークを迎えることを考えれば、水道用水は今後ともほぼ現状のまま推移し、やがて漸減の傾向になることは確実である。実際、既に工業用水の方は産業構造の変化で横這いから漸減の方向に変わっている。また、新規の農業用水の必要性は既に失われている。
 それにもかかわらず、全国で何百という数のダム建設事業が計画され、工事が進められている。水需要飽和の時代においてこれだけ多くのダムを造ることは、使う当てのない遊休水利権を増産することを意味する。
 以上の観点から次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、水需要の停滞が確実な状況下において、水源開発政策に関して国民の適切な理解を得るには、正確な情報を包み隠さずに公開することが重要である。水源開発政策に関する情報公開の重要性について、政府の基本認識を示されたい。

二、政府、水資源開発公団(以下「公団」という。)及び都道府県が現在、建設を計画しているか、若しくは建設工事を進めているダム(総貯水容量一〇〇万立方メートル以上を指す。以下同じ。)について、ダムの名称、建設(予定)地、事業主体、総貯水容量、目的、総貯水容量の目的別内訳、ダムの方式・高さ・長さ・体積、集水面積、湛水面積、水没予定戸数、完成予定年度、現在の事業進捗率と事業段階及び総事業費をそれぞれ明らかにされたい。

三、前項の答弁で示されたダムのうち、水道用水の開発目的があるダムについて、水道の利水予定者と受水予定量をそれぞれ明らかにされたい。また、水道用水に関して未配分の水利権がある場合は、その利水予定者がいつ決まるのか、明らかにされたい。

四、前項の答弁で示された、水道の利水予定者が定まっているダムについて、当該ダムに関する利水予定者の水道施設(取水施設、浄水施設、送配水施設)の着工(予定)年と完成予定年をそれぞれ明らかにされたい。なお、水道施設の着工(予定)年と完成予定年は、厚生労働省が補助金交付の段階で把握している着工(予定)年と完成予定年を意味することとする。

五、水道用水に関して未配分の水利権がある政府直轄ダム及び公団ダムについて、その未配分の水利権に係わるダム事業費の負担金がどの会計から政府又は公団に支出されているのか、それぞれ明らかにされたい。

六、二項の答弁で示されたダムのうち、工業用水の開発目的があるダムについて、工業用水の利水予定者と受水予定量をそれぞれ明らかにされたい。また、工業用水に関して未配分の水利権がある場合は、利水予定者がいつ決まるのか、明らかにされたい。

七、前項の答弁で示された、工業用水の利水予定者が定まっているダムについて、当該ダムに関する利水予定者の工業用水道施設(取水施設、浄水施設、送配水施設)の着工(予定)年と完成予定年をそれぞれ明らかにされたい。なお、工業用水道施設の着工(予定)年と完成予定年は、経済産業省が補助金交付の段階で把握している着工(予定)年と完成予定年を意味することとする。

八、工業用水に関して未配分の水利権がある政府直轄ダム及び公団ダムについて、その未配分の水利権に係わるダム事業費の負担金がどの会計から政府若しくは公団に支出されているのか、明らかにされたい。

九、二項の答弁で示されたダムのうち、農業用水の開発目的があるダムについて、農業用水の利水予定者と受水予定量をそれぞれ明らかにされたい。また、農業用水に関して未配分の水利権がある場合は、利水予定者がいつ決まるのか、明らかにされたい。

十、前項の答弁で示された、農業用水の利水予定者が定まっているダムについて、当該ダムに関する利水予定者の農業用水施設(取水施設、送水施設)の着工(予定)年と完成予定年をそれぞれ明らかにされたい。なお、農業用水施設の着工(予定)年と完成予定年は、農林水産省が補助金交付の段階で把握している着工(予定)年と完成予定年を意味することとする。

十一、農業用水に関して未配分の水利権がある政府直轄ダム及び公団ダムについて、その未配分の水利権に係わるダム事業費の負担金がどの会計から政府若しくは公団に支出されているのか、明らかにされたい。

十二、既に完成したダムのうち、未配分の開発水利権があるダムについて、名称、所在地、事業主体、総貯水容量、目的、総貯水容量の目的別内訳、ダムの方式・高さ・長さ・体積、集水面積、湛水面積、水没戸数、完成年度及び総事業費をそれぞれ明らかにされたい。

十三、前項の答弁で示されたダムについて、配分済みの開発水利権の利水者別内訳及び未配分の開発水利権の水量と今後の配分見通しをそれぞれ明らかにされたい。

十四、十二項の答弁で示されたダムの中に、政府直轄ダム及び公団ダムがある場合は、それぞれのダムについて次の事項を明らかにされたい。

1 未配分の開発水利権が工業用水である場合、その水利権に係わるダム事業費の負担金は政府若しくは公団に対し、どの会計から支出されているのか。
2 未配分の開発水利権が水道用水である場合、その水利権に係わるダム事業費の負担金は政府若しくは公団に対し、どの会計から支出されているのか。
3 未配分の開発水利権が農業用水である場合、その水利権に係わるダム事業費の負担金は政府若しくは公団に対し、どの会計から支出されているのか。

十五、今後、水源開発政策について、政策及び事業の根本的な見直しが早急に必要であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

十六、水源開発政策に関し、政府において政策及び事業の見直しを行う際は、国民の声を誠実に受け止める仕組みが必要であると考えるが、どうか。

  右質問する。