質問主意書

第154回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

小田急小田原線連続立体交差事業・事業認可取消判決に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年四月二日

中村 敦夫   


       参議院議長 井上 裕 殿



   小田急小田原線連続立体交差事業・事業認可取消判決に関する質問主意書

 小田急小田原線(梅ヶ丘~喜多見駅間)の世田谷区喜多見九丁目から同区代田三丁目までの区間の連続立体交差化事業につき、建設大臣が一九九四年六月三日に告示した都市計画事業認可について、二〇〇一年十月三日、東京地方裁判所民事第三部(藤山雅行裁判長)は、以下のとおり判決を下した。
(1) 本件鉄道事業認可は、認可申請中の事業地の表示が本件事業を行う土地の範囲を正確に表示せず都市計画とも一致していないのにこれを看過したことなどの点において、都市計画法第六十一条に違反する。
(2) この事業の前提となった都市計画決定も、当時小田急線には騒音の点で違法な状態が発生しているのではないかとの疑念が生じる状態であったのにこの点を看過し、この疑念を解消し得るものか否かや、それが解消し得ない場合には新たな都市計画によってその解消を図るという視点を欠いていた点において著しい欠落があった。
(3) 高架式を採用すると相当広範囲にわたって違法な騒音被害が発生するおそれがあったのにこれを看過するなど環境影響評価を参酌するに当たって著しい過誤があった。
(4) 本件事業区間に隣接する下北沢区間が地表式のままであることを所与の前提とした点で計画条件の設定に誤りがあり、地下式を採用しても特に地形的な条件で劣るとはいえないのに逆の結論を導いた点で判断に誤りがあった。
(5) より慎重な検討をすれば事業費の点について高架式と地下式のいずれが優れているかの結論が逆転し又はその差がかなり小さいものとなる可能性が充分あったのにこの点を充分検討せずに高架式が圧倒的に有利であるとの前提で検討を行った点で著しい誤りがあった。
 このように、(1)から(5)のいずれによっても本件認可は優に違法と評価されるとして、一部工事がなされているにもかかわらず事業認可を取り消すという、行政訴訟において初めての画期的な判決を下し、世論からも強く支持されている。
 以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一、東京地方裁判所が小田急線を高架線とする本件都市計画事業とその前提となる連続立体交差化の都市計画決定を違法であると明確に断じたことについて、国としてどのように受け止めているか。

二、本判決は、本件都市計画決定がなされた一九九三年の時点で小田急線には騒音の点で既に違法な状態が発生しているのではないかとの疑念が生じる状態であったとし、本件都市計画がこの疑念を解消し得るものか否かが検討されなければならなかったとし、さらにはそのような騒音被害が解消し得ない場合には新たな都市計画によってその解消を図るべきであったと断じているが、そのような指摘を受けた点について国としてはどのような事実認識を持っているのか。

三、本判決は、明確に本件連続立体交差事業認可処分は違法であり、取り消されるべきであると断じているが、このように明確に違法と宣言された都市計画事業については、国としては控訴して争うのではなく、直ちに工事を中止させ住民と話し合う場を設定し、本件事業を全線地下式に計画変更させ、地表を緑のコリドー(回廊)にする等、住民が求め、本判決も示唆している(行政事件訴訟法第三十一条の事情判決にしなかったこと等)環境に配慮した事業に切り換えることが社会常識にかなう政策的判断であると思うが、どうか。

四、現在、東京都及び小田急電鉄株式会社は、本件判決にもかかわらず、工事を続行しているばかりか、住民との約束に反し、終夜工事に及ぶ突貫工事をしているが、都市計画事業ないし鉄道事業などの公共事業の施行者として適切な姿勢ではないと思うが、どうか。

五、第一審であるにせよ、行政専門部の判決を尊重することは、権力分立、国民の裁判を受ける権利等の憲法上の原則からも、政府に対し求められるのは当然であるが、これに反していたずらに控訴審で争うことは、控訴権の濫用ではないか。また、国として控訴を取り下げ、東京都と小田急電鉄に対し、工事を中止し、住民と対話するという方針を示すことはできないのか。

  右質問する。