第151回国会(常会)
答弁書第三七号
内閣参質一五一第三七号 平成十三年七月二十三日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議員中村敦夫君提出タイ国ヒンクルート石炭火力発電所への経済協力問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員中村敦夫君提出タイ国ヒンクルート石炭火力発電所への経済協力問題に関する質問に対する答弁書 一について ヒンクルート石炭火力発電所事業(以下「本事業」という。)への国際協力銀行による融資については、基本的には、同行の金融判断に基づいて行われるものであるが、現段階においては、同行は、具体的な融資審査を行うには至っていないと承知している。 二について 本事業については、タイ政府において、タイの発電エネルギー源の多様化、産業の強化等に資するものとして推進されてきたものであり、平成十年十二月に本事業の実施予定地域の一部の住民による本事業への反対運動が高まったことを受けて、住民の意見を聴取するための公聴会を開くことが閣議決定され、平成十二年二月に公聴会が開催された。その結果を受けて、チュアン前首相政権時の平成十二年十月に、発電エネルギー源の多様化等のために本事業を継続して実施するとともに、本事業の実施予定地域の住民(以下「地域住民」という。)の本事業に対する理解を促進するためにタイ政府関係機関、地域住民及び関係投資企業から構成される三者協議委員会を設置する旨の閣議決定(以下「平成十二年十月閣議決定」という。)が行われており、また、本年六月には、本事業実施予定地の行政区であるトンチャイ区議会が、本事業に係る建設の許可を出したと承知している。さらに、本事業の実施主体であるユニオン電力開発社(以下「UPDC」という。)に対しては、複数の日本企業が多額の出資を行っている。
三について 地域住民の中には、賛成者も反対者もいると承知しているが、UPDC及びタイ政府は、平成十二年十月閣議決定に基づき、地域住民の本事業に対する理解の促進に努めていると承知している。
四について 本事業については、UPDCが実施するものであり、我が国政府が直接関与するものではないが、我が国政府としては、複数の日本企業がUPDCに対し多額の出資を行っていることから、タイ政府の決定及び意向を尊重するとともに、タイ政府による必要な手続が円滑かつ適切になされ、UPDCに出資している日本企業の利益が適切に保護されることを期待しているところである。
五について 平成十年十二月にタイ政府は公聴会の開催を閣議決定したが、それを受けてタイ上院が本事業の見直しを検討した事実はなく、また、本事業の継続実施決定後の本年四月に、タイ上院環境委員会が本事業の見直しを内容とする調査報告書を上院議長に提出したが、同年五月に上院本会議は当該調査報告書を検討内容が不十分であるとして同委員会に差し戻したと承知している。
六について 本年四月三十日に赤尾信敏タイ駐箚特命全権大使(以下「赤尾大使」という。)がタイ副首相を表敬訪問した事実はない。
七について 地域住民の中には、賛成者も反対者もいると承知しているが、本事業の実施についての地域住民の同意の取付けは、UPDC及びタイ政府により行われるものと考えている。また、UPDC及びタイ政府は、平成十二年十月閣議決定に基づき、地域住民の本事業に対する理解の促進に努めていると承知している。 八について 本事業に関して、タイ国家汚職防止委員会に対する申立てがなされたことは承知しているが、赤尾大使及び在タイ日本国大使館のタイ政府に対する働き掛けは、二についてで述べたとおり、タイ政府の決定及び意向を尊重しつつ、日本国民の海外における経済上の利益を保護するという在外公館の任務を果たす観点から行われたものであり、適切なものと考えている。
九について 国際協力銀行は、具体的な融資審査を行うには至っておらず、本事業を取り巻く状況、タイ政府等関係当事者の対応等を見守っていると承知している。 |