第151回国会(常会)
答弁書第一六号
内閣参質一五一第一六号 平成十三年六月二十九日 内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議員中村敦夫君提出富山県営熊野川ダムからの取水事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員中村敦夫君提出富山県営熊野川ダムからの取水事業に関する質問に対する答弁書 一について 富山市は、昭和五十四年五月二十九日に、水道用水を確保するため一級河川常願寺川水系常願寺川(以下「常願寺川」という。)から最大で毎秒一・二三八立方メートル(日量約十・七万立方メートル)の取水を行うこと、毎日の取水量を測定し一年ごとにその結果を取りまとめて翌年の一月三十一日までに建設省北陸地方建設局富山工事事務所長(以下「富山工事事務所長」という。)を経由して同省北陸地方建設局長に報告すること等を内容とする河川法(昭和三十九年法律第百六十七号。以下「法」という。)第二十三条の許可を建設大臣から受けた。
二について 富山市による超過取水は法第二十三条の許可を受けたものではなく、同市には違法な行為である超過取水を是正する義務がある。 三について 富山工事事務所が昭和六十一年六月、富山市に対し超過取水の是正を口頭で求めた際に、同市から常願寺川からの取水量の増量を求められた。 四について 富山市が平成十年三月二十六日に富山工事事務所長に提出した「常願寺川水系常願寺川の水利使用に係る是正措置について(報告)」によれば、同市においては、常願寺川から取水している農業用水の一部の水道用水への転用、地下水の新規開発等の方策についても検討しているとのことであった。 五について 御指摘の朝日工業水道とは常願寺川左岸富山市朝日地先を取水地点とする工業用水道を指すものと考えられるが、これは富山市工業用水道事業の一部であり、富山市に確認したところ、御指摘のような水利契約は存在しないとのことである。また、同市から富山工事事務所長に提出された平成三年度から平成十二年度までの当該工業用水道事業の取水量の報告書によれば、当該工業用水道事業については、超過取水が行われている事実はない。 六について 富山市は、平成十一年八月二十日に農林水産省北陸農政局に対し常願寺川から取水している農業用水の取水量のうち最大で毎秒〇・三〇〇立方メートル(日量約二・六万立方メートル)を同市に転用させてほしいと要望したことを、同月二十七日に富山工事事務所に報告した。
七について 富山県は、富山市が富山県営かんがい排水事業により建設された常西用水施設の一部を水道施設として使用するに当たり、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号。以下「補助金等適正化法」という。)第二十二条及び「補助金で取得し、又は効用の増加した財産の処分の承認に関する事務を委任した件」(昭和四十一年農林省告示第四百四十四号)に基づき北陸農政局長の承認を受けるとともに、当該承認に係る条件に基づき昭和六十三年度に国に対し常西用水施設の建設に係る補助金の一部を返還している。したがって、同市が常西用水施設の一部を水道施設として使用していることは承知しているが、同市が常西用水土地改良区に使用料を支払っているか否か等については承知していない。 八について 御指摘の暫定水利権とは六についてで述べた富山市が提出した申請書に記載されている最大で毎秒〇・三一〇立方メートル(日量約二・七万立方メートル)の取水に係る部分(以下「本件暫定分」という。)を指すものと考えられるが、当該申請書においては、その取水する期限は平成十五年三月三十一日と記載されている。
九について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、法第二十三条の許可をするか否かに当たって、当該許可に係る河川の流水が表流水か伏流水かによってその取扱いに差異が生じることはない。 十について 工業用水を水道用水に転用するためには、工業用水及び水道用水の利水者間で転用に係る水量等の条件について合意がなされていることを前提として、その上で関係法令に基づく手続がなされることが必要である。
十一について 法第二十三条の許可に係る行政手続法(平成五年法律第八十八号)第五条第一項に規定する審査基準については、「行政手続法の施行に伴う河川法等における処分の審査基準の策定等について」(平成六年九月三十日付け建設省河政発第五十二号建設省河川局長通達)において、次のとおり定めており、これらの審査基準は常願寺川においても適用されるものである。 1 水利使用の目的及び事業内容が、国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与し、公共の福祉の増進に資するものであること。
また、常願寺川における流水の正常な機能を維持するための必要な流量は、河川維持流量、既に許可された取水量等を考慮して定めるべきであるが、「常願寺川水系工事実施基本計画」において「流水の正常な機能を維持するため必要な流量については、流水の収支機構、並びに利水実態の把握を図るとともに、水質保全対策等を、今後さらに調査検討のうえ決定するものとする。」とされており、したがって、御指摘のような地点別の河川維持流量についても定めていない。 十二について 厚生労働省において富山市に確認したところ、御指摘の熊野川ダムからの取水事業(以下「本件取水事業」という。)については、同市のみで実施することで富山県が了解しているとのことであった。 十三について 本件取水事業は、現在のところ、水道法第六条による認可を受けた富山市水道事業には位置付けられていないが、仮に、富山市が本件取水事業を実施しようとする場合には、水源の種別、取水地点等の変更を伴うため、厚生労働大臣による当該水道事業の変更認可を受ける必要がある。また、富山県の熊野川水道用水供給事業についても、これらに伴い事業内容の変更が必要となる。さらに、熊野川水道用水供給事業者である同県に対し交付した国庫補助金についても、同市に譲渡等される財産の処分を行う場合には、補助金等適正化法第二十二条の規定に基づき、厚生労働大臣の承認を得なければならない。厚生労働省において同市に確認したところ、これらの点については今後検討していくとのことであった。 十四について 御指摘の場合における負担金の取扱いについては、水道用水供給事業者である富山県とその給水対象である六市町村との間で協議して定められる問題であると承知している。 十五について 熊野川水道用水供給事業及び本件取水事業の在り方については、現在、富山県、富山市等で検討中であると承知しているが、今後とも、これらの地方公共団体に対し必要な助言を行ってまいりたい。 十六について 熊野川水道用水供給事業が中止となった場合の当該事業に係る国庫補助金の取扱いについては、厚生労働省において、富山県から補助金等適正化法第二十二条の規定に基づく承認の申請があった際に判断することとなる。 十七について 御指摘の追加負担金の取扱いについては、水道用水供給事業者である富山県とその給水対象である富山市との間で協議して定められる問題であると承知している。 |