質問主意書

第151回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一五一第一五号

  平成十三年五月十八日

内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員高嶋良充君提出外国人、母子家庭、障害者等の入居差別に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員高嶋良充君提出外国人、母子家庭、障害者等の入居差別に関する質問に対する答弁書

一について

 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(平成七年条約第二十六号。以下「人種差別撤廃条約」という。)は、第五条において「締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。」とし、「次の権利」の一つとして、同条(e)(iii)において「住居についての権利」を掲げている。我が国は、人種差別撤廃条約の締約国として、諸施策の適正な実施を通じて同条に定める義務を履行しているところである。

二及び三について

 外国人、母子世帯、障害者等に対する入居差別等の実態について平成八年度に建設省が委託調査した結果は、別表のとおりである。
 公共賃貸住宅については、母子世帯及び障害者に対して、公営住宅の入居者の募集又は選考の段階において、戸数枠を設けて公募する方法又は当選率を有利にする方法により優先的な取扱いを行っており、都市基盤整備公団が賃貸する住宅(以下「公団住宅」という。)の入居者の選考の段階においても、当選率を有利にする方法により優先的な取扱いを行っていると承知している。また、国土交通省においては、公営住宅、公団住宅及び住宅金融公庫の貸付けを受けて建設された賃貸住宅について、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二十二条第二項の規定により永住許可を受けた者等に対して入居申込資格を認めるほか、外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号)第四条第一項の登録を受けた者に対しても、可能な限り地域住民と同様の入居申込資格を認めるよう通達等により周知徹底に努めているところである。
 民間賃貸住宅については、国土交通省において、関連不動産業団体に対して通達等により人権に関する教育・啓発活動のより一層の推進を求めているところである。また、社団法人全国賃貸住宅経営協会においては、地方公共団体が作成したパンフレットの配布及び講習会の開催を通じて、人種、民族等を理由にした入居拒否等の差別的行為がないよう賃貸人に対する啓発を行っているほか、東京都、大阪府等の地方公共団体等においては、住宅の入居に関する相談窓口を設置していると承知している。さらに、法務省の人権擁護機関においては、各種の人権問題について相談を受け付けている。
 政府としては、外国人、母子世帯、障害者等に対する入居差別の現状を踏まえつつ、これらの者に対する入居差別が行われないよう、引き続き、所要の措置を講じてまいりたい。また、人権擁護施策推進法(平成八年法律第百二十号)に基づき法務省に設置された人権擁護推進審議会における人権救済制度の在り方についての調査審議の結果を踏まえ、人種差別を含む様々な人権侵害の被害者救済のための措置や制度について検討してまいりたい。

四について

 御指摘の事案が、我が国が人種差別撤廃条約の締約国として撤廃のための政策の実施を義務付けられている人種差別に該当するか否かについては、これらの事案の具体的な事情を勘案する必要があることから、一概に判断することは困難である。
 いずれにせよ、法務省の人権擁護機関では、御指摘のような事案について人権侵犯の疑いがあると判断した場合には、速やかに調査し、賃貸人に対する啓発活動を行う等適切な措置を講ずることとしている。

五について

 平成十二年度に文部省が行った調査によれば、平成十二年五月現在、我が国で学んでいる留学生の数は約六万四千人であり、そのうち、民間のアパート等に入居している者が約四万三千人、大学、公益法人等が設置した留学生宿舎、一般学生寮等に入居している者が約二万千人である。
 留学生の受入れを円滑に推進するためには、留学生の住居を確保することも重要な施策であると考えている。このため、文部科学省においては、国立大学における留学生宿舎の建設、運営等を行うとともに、公益法人が行う、留学生宿舎の建設等の事業、私立大学、地方公共団体等による留学生宿舎の建設等を奨励する事業、企業社員寮の空き室の貸与を留学生にあっせんする事業、民間の良質なアパート等を留学生宿舎として確保する事業、失火や家賃の未払等の場合に留学生等に補償する制度を周知する事業等に対する補助を行っているところであり、引き続き、これらの施策を推進してまいりたい。

別 表